アジア文化論 II 2003/11/25 No. 2

11/25 授業の感想2号（最終号）の評価

感想2号（総数 47）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

今回は二回目にして，私の担当分最終回です．四層モデルを完結させた後，ASEAN や東南アジアを巡る宗教事情について説明しました．

今日の講義のなかで原理主義の話が一番興味深かったです。前にも先生に個人的に宗教の話をしに研究室に伺ったのですが、覚えてらっしゃいますか？私の友達は大変なエホバの信者です。私のアパートにはエホバのことを広めようとするおばちゃんも頻繁に訪れてきます・・。原理主義が悪いというわけではないということは理解できますが、エホバの信者ではないものは破滅する、という考えはいくら私の友達とはいえ、私はその考えを受け入れきれません。エホバに入らないと死ぬぞと脅されているようにさえ聞こえます。先生はこれを脅迫みたいだと思いませんか？（1年女子）
（原理主義者たちの多くは，自分たちだけに通用するルール・規範を，他者に対しても無批判に適用しようとする誤りを犯しています．「原理主義／宗教と教義」をご覧下さい．くれぐれも，同じ土俵で相手をしてはいけませんよ．）

イスラームがセム系一神教の一つであることを知りましたが、この『セム』とは、どのような意味ですか？（旧約聖書に出てくるノアの息子のセム、ハム、ヤペテから取られた語なんでしょうか？）（2年女子）
（その通りです．ヘブライ語やアラビア語など，セム語族に属する言語で聖典が記述されている一神教を，セム系一神教と呼ぶのです．）

今日の講義の中でまず改めて感じたことは、東南アジア諸国は本当にたくさんの国に支配されてきたのだということです。しかもそのすべてがヨーロッパで、知っていたとはいえとても衝撃的でした。また、最後の原理主義≠テロリスト（テロリズム）である、という話ですが、テロリストのほうが悪いということは私にも理解できますが、どうしても原理主義という言葉を聞くと悪いイメージしか浮かんできません。そのようにしか思えないのは私だけでしょうか？（2年女子）
（原理主義者が往々にして持つ不遜・傲慢な態度には，私も辟易しています．ただし，「原理主義者＝テロリスト」が間違った認識であることもきちんとお伝えしなければならないと思いました．）

文化がどのように伝わってきたか興味があったので、この講義で大まかな事に関してはその謎が解けたという感じです。北朝鮮と韓国の問題などの、国家間の解決していない問題が世界にはたくさんありますが、大国が様々な問題を引き起こし取り返しのつかないものへと拡大させている気がしてなりません。日本もアメリカの背を追うのではなく、アジアの一国として独自の意見を持つべきだと思います。東海道五十三次の由来が気になっていたので今日ちょうどその話題が出て納得しました。宗教的なつながりがあったとは、やはり文化的、宗教的な関わりをもったものがこの世には多く存在しているのだと感じました。ASEANという団体、非常に重要だと思います。過去のようにアジアが大国に侵略されることのないように。（2年女子）
（日米安保体制の維持と，アメリカ追従政策とは，必ずしも両立させる必要はないのでしょうね．）

前回と今回の授業を通して、分かったことは東南アジアの文化は一言では語ることの出来ないものだということでした。私は、インドネシアだったらインドネシアの独自の文化、マレーシアだったらマレーシアの独自の文化だけで今の国が形成されているものだと考えていました。しかし、東南アジアのほとんどの国々は、基層文化があり、その上に外来アジア文化があり、その更に上に植民地宗主国文化があり、今の国民文化に至っているのだと授業を通して知ることが出来ました。（1年女子）
（よしよし．）

ASEAN に大国の干渉を防ぐという大きな意味があることを初めて知りました。ただ近隣の諸国で仲良くして互いに協力しようという目的があるのだと思っていました。しかし、よく考えてみれば東南アジア諸国は長く占領の歴史をたどってきたわけであるし、今まで痛い目にあってきた歴史を繰り返さないためにこのような組織が大きな意味をもつというのは当然のように思えます。そして、大切なのはこのような組織がどれだけ大国に対して力を持つかだと思います。今の国連があまり力を持てず、アメリカの発言力が強いというようなはっきりしない組織であってはならないと思いました。（2年女子）
（そのためにも ASEAN の継続的成功が重要でしょう．）

ASEANは穏やかな地域協力機構ということですが、穏やかというのは具体的にどのようなことなのでしょうか。（1年女子）
（授業中にも申し上げたように，軍事共同体を作ったり通貨を統一したりすることなく，相互に緩やかに結びつきながら発展していこうとしていることを言います．）

今回まず驚いたことは、東南アジアだけで全イスラム教人口の20パーセントを占めているということでした。中東の宗教のように思われがちなとこで、実に5人に１人が東南アジアの人というのは盲点でした。ASEANの定義みたいなものもあらためて聞くと新鮮でした。でも、この間のASEANの会議を見ているとやはりアメリカの影が大きいような気がします。私だけでしょうか？後、マーライオンの絵よかったですよ。（2年男子）
（ところ構わず首を突っ込みたがる人はどこにでもいるんですよね．．．）

前回からの続きで、東南アジアの４重の文化構造について学び、時代と共に変化する文化の在り方にとても興味を持ちました。最も強力な外来アジア文化より前に存在しながら、決して消滅しなかった基層文化の土台としての強さや、新たな国民文化の流れを肌で感じる事が出来てよかったです。またこの授業は、他文化を学ぶ際、どうしても語学を優先にてしまいがちな私に、宗教を学ぶ事こそ必要不可欠なのだと再確認させてくれました。（1年女子）
（語学や宗教も含めた「文化理解」こそが大事なのです．）

東南アジア＝仏教、ヒンドゥーだと思っていたので、実はインドネシアに最も多くムスリムがいると知って驚きでした。しかし支配者層が自分たちに都合の良いヒンドゥーより、イスラームを選んだのは何故なのでしょうか？
同じ島内なのに、占領した国が違ったために独立してしまうほどになった東ティモールや、一気にカソリックに染まったフィリピンの話で、植民地化されたことの影響は大きいのだと改めて思いました。歴史の授業では何年に植民地になったとか独立したとか、事実のみを習って、それがその地域にどんな影響を与えたのかを知らなかったけど、文化を学ぶにはそここそ大切なんだとよく分かりました。（2年女子）
（旧体制への反発，庶民の参加，などが理由に挙げられます．）

他の授業で東ティモールであった紛争から独立までの経緯や問題を勉強したことがあったのですが、宗主国であったポルトガルが宗主国の権利を放棄したりといったことがあったために紛争が激化して難民が発生したりしたということを考えると、植民地の宗主国としてその地の行く末？をきちんと責任をもってやらなければいけないと強く感じました。ずっと植民地にしとけばよいとかそういう考えでは決してないのですけど…。
ASEAN発足の理由が大国の干渉を受けないようにということを今回の講義で初めて知りました。確かに、ベトナム戦争の経緯をふりかえると大国、特にアメリカの介入による戦争の泥沼化は悲惨でした。しかし、ASEAN内でも国家間の経済格差などが問題になっていて今後の課題も多いと聞きます。でもこの問題を解決していく中で東南アジアがもっと発展し、4重の文化構造の4番目の国民文化が形成されていくといいと思いました。
鈴木先生が最も優れた仏跡だと言われていたボロブドゥールを最近ビデオで見ました。アンコールワットもビデオで見ました。ぜひぜひ見に行きたいと思いました！（2年女子）
（ストゥーパが好きだぁっ!! ）

今回の鈴木先生の講義で、自国の利益のためだけに他国を支配・干渉してしまうことの恐ろしさを改めて実感しました。一時的な干渉でもその国特有の文化をねじ曲げてしまったり、遺恨を深く残して（東南アジアではないけれど）中東問題のような紛争に発展してしまう危険性があるからです。私たちは過去の失敗から学んで二度と同じ間違いを繰り返さないようにしなければいけないと強く思いました。
　今回の講義で、東南アジアの文化や歴史に興味を持つようになりました。私は小さい頃父の仕事の都合でタイ・マレーシアに5年間住んでいたので、遺跡や寺院などたくさん見たはずなのにうっすらとしか覚えていないのがとても残念です。またいつか見にいきたいと思います。もちろんボロブドゥールもです！！（1年女子）
（それはよい経験をしましたね．機会を見つけて，是非自らの経験を辿り直してください．）

東南アジアのみならず、その国の文化というものは宗教と密接につながっているものだと思いました。東南アジアにおける外来文化の影響とはイコール宗教の流入といえると思いました。そして宗教の流入によって文化が生まれ、結果、国家形成が進むのではないかと、今回の授業で考えました。文化の底辺を担う基層文化にもアニミズム思想というものがあり、同じことが言えると思います。この宗教と国家形成の関係に大変興味を持ちました。（1年女子）
（宗教も文化の一大要素の一つです．宗教を何か特別視して，文化の枠外に置こうとしたり，文化を超えた何かと規定しようとする向きもありますが，善し悪しはともかく，少なくともそれらは学問的態度とは言えないと思います．）

アジア文化の四層モデルの④が、①～③を「包括しているのか」「その上に成り立っているのか」の判断は難しく、後の世で無ければできないものだと思いました。④はもう、一つのモデルで表わすことが不可能なくらい、ぐんぐん進化し続けているように思います。（2年女子）
（四層モデルも一つの切り口に過ぎません．多角的に見る態度を養っていきましょう．）

最近（といっても私が高校の頃聞いたのですが）、植民地になったミャンマーなどの多くの国が植民地時代以前にあった文化を復活させようとしていると聞きました。先生の授業で言葉（文化）が奪われると滅びることが多いというのを聞いた時、よくこの人たちは失われた文化を復活できたな、と思いました。でも、これってきっと本来あった文化じゃありませんよね。少なからず植民地時代の文化が入っている融合文化だと私は思ったのですがどうでしょう？（1年女子）
（歴史の不可逆性から言って，途中で摂取したものを完全に捨て去ることは無理というものです．あなたの考えでよいと思いますよ．）

“文化侵略は、言葉や国名を奪うことがオーソドックスな侵略の仕方”と改めて聞いて、頭で理解することは簡単ですが、実際問題としてこれがどれほど残酷なことを意味しているのかを考えると鳥肌が立ちました。やはり、多くの人が言葉や国に自分のアイデンティティーを見出していることを考えると、それらを奪いアイデンティティーを喪失させることは肉体的に痛めることはもちろん、精神的に痛めつけることであり、本当に残酷だなと思いました。（2年女子）
（二度と同じ過ちを繰り返すことのないよう，私たちも自戒していきましょう．）

今回の講義と前回の２回にわたって東南アジアについて学んできましたが、私の中ではフィリピンが印象に残っています。この国だけは他の東南アジア諸国と違い、スペインの文化をスポンジで水を吸うように吸収していると感じました。この講義を受ける前は、フィリピンも東南アジアの中の一国としか捉えておらず、特に違う点もないと思っていました。今回改めて、他の東南アジア諸国とつながりを持とうとしなかったフィリピンの歴史を理解すると共に、フィリピンを東南アジアという総括した単位でしか見ていなかったことの怖さを感じました。また、全体的に見て、イスラム教徒が多いことにも改めて驚きました。世界中のイスラム教徒の約20％が東南アジアにいるということは、そこの人々が信仰や宗教に対して関心が高いということなのでしょうか。それとも、その地に古代から伝わる信仰心と重なっているから宗教人口が高いのだろうかとも感じました。（2年女子）
（以前とは少しでも違ったものの見方が提供できたのだとすれば，私の講義にも多少の意味があったというものでしょう．）

ASEANがつくられた目的に、大国からの干渉の排除などがあることを初めて知りました。植民地宗主国文化が4重文化構造にあるように、今まで東南アジアは様々な大国の文化が入っていることもあり、それぞれが異なった言語や文化を持っていますが、ASEANは加盟国(加盟と言って良いのかわかりませんが)を1つの姿に固めようとするのではなく、それぞれの自国のやり方のままでいる。そのことが、ASEANがうまくいっている要因なんだろうと思いました。今回東南アジアを勉強して、新たに学んだことがたくさんありました。まだまだ私が知らない姿が東南アジアにはあるので、これからも学んでいこうと思います。（1年女子）
（引き続き興味・関心を持ち続けてください．）

今までASEANと原理主義に対し誤った解釈をしていたことに気付いた。ASEANは東南アジア諸国連合という意味だが、これらの国々は支配されていた国が違えば、国土も人口も民族も宗教も大きく異なっている。性格を異にする国々が集まり、互いに協力しながら発展していくことを目指すほかに、大国の干渉を排除するといった意味合いも含んでいる点に、ASEANが緩やかな地域協力機構と言われる理由があるような気がした。調べてみると世界にはEU（欧州連合）やNAFTA（北米自由貿易協定）などの様々な地域統合体があるが、その中でもASEANは最大規模の人口をもつ統合体であるということを知り、改めて東南アジアの大きさに気付かされた。
また、原理主義についても原理主義がイコール過激派やテロリストではないということは、今日の世界情勢の一連の流れを見ていく上で、念頭に置いておかなければならない知識であったという事を知ることが出来た。彼らは「自分達の宗教の基本に戻ろう、理想の社会を作ろう」としている人たちのことであり、また全てがテロリストではないのですね。
わずか2回の講義だったけれど、知らなかった事実、誤解していた知識…を正しく知り、多くの事を学ぶことが出来ました。（3年女子）
（よい感想ですが，原理主義者については少し誤解があるかも知れません．彼らの信条は，外から見た場合，あなたの言うような清々しいものではありません．他を辟易させずにはおかない傲慢さが鼻をつきます．）

今回の講義で、東南アジアという大きな枠組みを捉えることが出来たと思います。特に、ASEAN（東南アジア諸国連合）が出来た背景について知ることが出来ました。現在の国際情勢を考える時、アジアからの視点というものを忘れてはならないと改めて感じます。今も解決どころか、悪化する一方のテロ問題にしても、経済の問題にしても、やはりアジア抜きで語ることは出来ません。勿論、アジアだけを考えるのもいけません。幅広い視点が必要です。
今回の講義の中で、原理主義の問題も取り上げられました。よくTVや新聞では、「一連のテロ活動はイスラム原理主義組織によるものと思われる」といった一つのパターンで語られることが多く、私もあまり深く考えずに原理主義者は危険だというレッテル貼りに終始していた感があります。常に疑いの気持ち（マスコミの報道を鵜呑みにせず、自分でも考えてみるという意味で）を持っていないと、感情論に流されて冷静な判断が出来なくなってしまう危険性があります。勿論、原理主義の危険性も認識しておく必要はありますが、それらを踏まえた上で冷静に勉強していくことが大切だと思います。テロ活動は決して容認出来るものではありませんが、テロ組織を武力を使って壊滅させるやり方は間違っていると思います。今のような暴力の連鎖を断ち切るためには、やはり冷静に事実を見つめなおすことが重要ではないでしょうか。（1年男子）
（論理的・理性的な感想に感心させられます．）

【総評】講義回数の制限上，極めて単純化したモデルを用いて「いわゆる東南アジア」の文化を概説しました．これを機会に，今まで興味を持っていなかった国や地域，そして文化に対して関心を抱いて欲しいと思っています．（鈴木隆泰）

アジア文化論 II

アジア文化論研究室

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