アジア文化論I／宗教学 2004/6/4 No. 7

6/4 授業の感想7号と回答

感想7号（総数 165名：県大生 69名，山大生 96名）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

予告通り，一回で仏教の説明をしました．もちろん説明の中心は「諸行無常」「サンスカーラ」です．

今回の授業もすごかったです。生、老、病、死というこの事実に対してここまで真剣に考えたからこそこの素晴らしい教えができたんだと思います。私たちは、いつもどう生きたいであるとかこうでありたいとばかりを求めているような気がするのですが実はなぜ生きているのか？という方が大切だと気づきました（1年女子）
（そして「どう生きるか」が大切なのだと思います．）

釈尊＝ガウタマ・シッダールタというってことですか？
宗教は、人々が支えにするだけあって奥深いところまで考え抜かれて形成されているのだなぁとつくづく思った。私は専ら無神教者であるが、困った時は神頼みする。（何の神だか分からないが）それもありだなと思うけれど、それって何教ですか？（1年女子）
（ガウタマ・シッダールタが覚ってブッダとなり，釈尊と呼ばれるようになったのです．
　「～～教」（～～の部分にはご自分の名前をどうぞ）でいかがですか?）

知り合いで最近キリストの洗礼受けに行った人がいて、私自身もその人も仏教徒であるのにそんなことが許されるのかと正直どこかで疑問に思っていましたが今日の授業を受けてその人にとっての最善の処方箋がキリストの信仰で、それによって心の安定が得られ健康になれるならばそれが最善の状態であるということを知ることができてよかったです。（1年女子）
（大事なことはその方が，「キリスト教だけが絶対で，他の宗教はダメだ」と思わないことです．それは「私の薬こそ最高で，他の薬を飲んではダメだ」と他の病人に自分の薬を押しつけるのと同じだからです．それは結局その方自身の安心（あんじん）を阻害することになります．）

サンスカーラで完成と虚構の二つの意味がありましたが~~あったけども~~、虚構って良い意味で使われてるんですか？（1年女子）
（ふー，言葉遣いが．．．(sigh)
　虚構は元来悪い・良くない・ネガティヴな意味で使われています．ただし，サンスカーラを完全に無くすことが困難である以上，凶悪なサンスカーラは排除しつつ，極力良質のサンスカーラとつき合っていこうという考えなのです．詳しくは「宗教文化研究（仏教文化）」でどうぞ．）

人間って答えを欲しがったり、先のことを知りたがる生き物なんだと思った。確かに自分自身も生きるうえで答えを欲しがっていると思う。仏教がとても魅力的なのは一人一人に対しての幸せをかんがえてくれているからでしょうか。サンスカーラという考え方は、今生きている私にとってもとても新鮮に感じます。ところで釈尊のことを「釈迦」というのは誤りなんですよね？教科書にも釈尊のことを釈迦と書いてあるものもありますがどうしてそんな誤解が発生したんですか？（1年女子）
（Gandhi をガンジーと表記する誤り（正しくはガーンディー）の場合とは異り，釈尊のことを「釈迦」と表記する誤りにはかなりの歴史があります．私たち研究者は良心に基づき，ねばり強く誤りを正していきたいと思っています．）

今回もいろいろ間違いに気づきました。諸行無常が最たるものです。「人によって違う処方箋を」という教えは素晴らしいものだと思いますが、それを実行できる人材を育てるのはかなり難しいのではないでしょうか?（1年女子）
（たしかにそうとも言えますが，仏教はそれを実行しながら2500年間続いてきたのです．）

今日の授業のサンスカーラの説明はわかりやすくて面白かったです。特に愛の大砲のあたりは笑えました。よく考えると、僕も結構サンスカーラしていることがありました。今日の、仏教の教えはすべて処方箋であり、病状が違うからその処方箋もさまざまであるというところから、仏教は柔軟な宗教のような感じがして、だからあんなにもいろいろな宗派に分かれていったんだなと思いました。（1年男子）
（そういうことです．）

今日の授業で諸行無常の意味が今までより深くわかりました。又、説明で先生が使われた例え話で、「病人への処方箋を病状が違う人に対して同じものは出しはしないのと同じ」ということを聞いてなるほどと大きくうなずき納得できました。そのとおりですね。何か救いを求めている人がいたとして、その人の環境も状況も境遇もそして何より、何に対して救いを求めているかも違うのですから個々によって答えは違うはずです。求めているもの自体、個々に応じて違う場合が多いと思います。（1年男子）
（そして求める対象すら，時々によって移り変わり変化していきます．諸行無常ですから．）

人はよくある人の第一印象でその人をまずつくりあげ、その後会ったときはその第一印象を思い出し、自分の思っているaさんを頭の中で考えながら話すようになります。そのため、最初の印象がよいと次の印象が変わっていると悪い印象にかわり、最初が悪い印象だとすこしでもよいことを行っているとよい印象に変わりやすいです。しかししったかぶったかのように自分が作り上げた A さんをそのままの印象や想像でつきあっていると相手に多大な迷惑をかけてしまうことがあり、そこは難しいなと思いました。誤解というものは迷惑をかけてしまうだけでなく、あとで恥ずかしい思いを受けることもしばしばです。。しったかぶったかの本は絵もかわいいしとても読みやすそうなので一度読んでみたいです。仏教の教えの中にはお互いに矛盾しているものもあるということでしたが、どうしてそのような考えになってしまったのでしょうか？釈尊が適当な人だったのですか？（1年女子）
（矛盾については授業中に説明したとおりです．病状が異る以上，処方箋も異ります．釈尊はまさに適当な（ぴったりあった，相応しい）人物です．）

私たちが普段何気なくしている行為はサンスカーラがほとんどなのかなと思いました。むしろ私は、サンスカーラでプラス思考を心がけています。（1年女子）
（良質のサンスカーラとつき合っていきましょう．）

(1)釈尊がサンスカーラを発動させずに事象を認識できるとありましたが、どうやってそこまでに到ったのでしょうか? (2)また、釈尊がサンスカーラ無しで事象を把握することができるという事自体を、サンスカーラだとして疑われたりしたことはないのでしょうか?（1年男子）
（(1) 苦行と瞑想です．
　(2) 釈尊が自らの安心（あんじん）を手に入れた上で，他の人の心を安んじていった事実が大切です．下の回答も参照してください．）

(1)釈尊は実像と虚構の一致をしたというのはどうやってわかったのですか？ (2)また、なぜ釈尊は目覚めた人になったと周囲の人は認めたのですか？（1年女子）
（(1)かりそめではない本当の安心を得たからでしょう．
　(2) 人々をありのままに観てありのままに受け入れ，そして適切な処方箋を出してくれたからです．）

私たち日本人も関わりの深い仏教がサンスカーラの考え方などにもでてるように、ここまで奥深いものだとは思ってなかったので、感動しました。
　ブッタとシッタカブッタの本、私も読んだことがあったので今日出てきてビックリしました！人間の心理をズバッと書いてあるので読んでてドキッとしますよね（＾０＾；）先生のセリフ付きの棒人間の絵がすごく可愛かったです（笑）（2年女子）
（「セリフ付き棒人間」で新たな境地を開拓したいと思っています．乞うご期待 :-) ）

いままでは仏教よりもほかの宗教のほうが興味が強かったのですが、今日の授業で仏教にとても興味を持ちました。他人を認識する際サンスカーラによって作り上げた虚構を見ているということを学びました。なるほど全くその通りだと思います。
それから、ブッタとシッタカブッタはとてもわかりやすかったです。
仏教がこんなに興味深いものだとは知りませんでした。もっと仏教について学ぼうと思います。（1年女子）
（学びましょう，学びましょう．）

仏教は素敵な宗教だと思いました。本当に人間のもつ根本的な不安に向き合って生まれた宗教だと感じました。すべてを受け入れる強さと懐の大きさに驚かされました。しかし私は自分の考えている自分と他人の考えている自分にずれがあっても、それもまた面白いと思います。これは私の処方箋です。「人の数だけ宗教がある」という先生の言葉が思い出されました。（1年女子）
（うん，うん :-) ）

人は自分という存在をサンスカーラして特別な存在に仕立て上げている。という話を聞いて、痛いところをつかれたなぁ、という思いがしました。だから、自分という存在を真正面にみることのできる仏陀はすごいと思います。
（質問）なぜ「神はいるのか？」ではなく「神はあるのか？」としたのですか？（1年男子）
（「いる」というと，神を人格神に限定してしまうような感じがしたからです．）

仏教の教えが処方箋なら、サンスカーラも処方箋になるのでしょうか。サンスカーラは、その人の想像を膨らませ、理想的な方向に持っていこうとします。が、潜在的形成力によって虚構の作用が生まれ、実際のありさまとのズレが諸行無常に繋がっていくというのには驚きました。サンスカーラはなんのため？って思いましたが、諸行無常にたどりつくまでの過程の一部なんですね。（1年女子）
（そうではありません．サンスカーラは理想的には滅するべきものです．あなたはサンスカーラという概念を「サンスカーラとはこのようなものだ」とサンスカーラしています．）

釈迦は部族名だったのですね。知りませんでした。仏教はどの宗教よりも、人を受け入れる点では優れていると思いました。(1)隣人愛を説くキリスト教にしても、それはキリスト教徒であることを前提にしています。他の宗教もそうです。誰でも受け入れろ、と説くのであれば、どの宗教でもよいのではと昔から思っていました。前回すずめの話を書きましたが、インドにはそのような話はないのですね。日本はアニミズムの傾向も割と強いような気がしますので、自然を尊ぶ日本人が独自に作り出した話なのかもしれません。でもインドもけっこうその感覚は強そうですよね？ (2)ところで、インドには象頭の神がいませんか？ガネーシャがそうだと聞いた気がするのですが。（1年女子）
（(1)「汝の敵を愛せ」とは説いても「神の敵を愛せ」とは説きませんから．．．　でも，要は教義を信じ，実行していく「人間次第」です．キリスト教を批判するつもりは全くありませんし，むしろ好きです．悪しきサンスカーラを増大させない宗教は皆好きです．
　(2) そうです．ガネーシャです．）

仏教はマウリヤ朝以降勢力を増しし、グプタ朝以後どんどん衰退していったという事ですがその原因はやっぱりバラモンの活動や、王様の奨励といったものの為だけなのでしょうか？昔のインドの人々にとって処方箋のような仏教よりもヒンドゥー教の方が肌に合っていたから仏教を離れてヒンドゥー教に移った、というのもあるんでしょうか？（1年女子）
（申し訳ありません．様々な要素の絡んだ大きな問題（例えば宗教の「上部構造・下部構造」「出世間性と世俗性」など）で，とてもここでは説明し切れません．専門ゼミで扱っているテーマの一つでもあります．
　結論だけ述べれば，「出家者を除き，仏教徒は元来，仏教徒であると同時にヒンドゥー教徒であった」ということなのです．）

今日の講義でいくつか質問をさせてください。１．どの状態をよい状態として処方箋を出しているのですか？２．１が悩みの状態がない状態とするならば悩みを悩みとして認知すれば処方箋はいらないのではないですか？３．もしこの処方箋が一個人のもとで行われたら思想統制になり、悪用されませんか？　　今日の講義は自分と考え方が似ていたので非常に興味深かったです。（1年男子）
（１．「安心して生きられる状態」です．
　２．悩みを悩みとして認知すること（これも一つの処方箋）によって悩みが解決する人には，それ以上の処方箋は不要です．しかしそれで悩みが解決しない人には，さらなる，あるいはもとから別の処方箋が必要です．
　３．サンスカーラの無常性（諸行無常）に基づく限り，思想統制はあり得ません．もし統制されたら，それはもはや処方箋とは呼べません．それは，どんな病状の人にも同じ治療をしようとすることになりますから，もはや医療ではありませんね．）

今日の講義で一番印象に残っているのが「マイナス思考×マイナス思考＝プラス思考」だという先生の言葉です。その考え方は個人的に好きです。胸に抱えた悩みが、前に進もうとする力になるイメージが頭に浮かびました。（1年男子）
（人は，「人間，マイナスに考えてはいけない．マイナス思考はいけない」などというとらわれからも解放されるべきです．）

今日の講義の中で私が納得したことは“サンスカーラ”です。初めて耳にした言葉でしたが、普段私たちが何気なくしていることだと知って、仏教は想像以上にすごい力を持っているのだと感じました。私はよく他人と接していて、その時の相手の態度で“この人はこんな人だ！”と決め付けてしまう変な癖があって、苦手になったり、好きになったりしてしまいます。今日の授業は私の痛いところを突かれた気がしました(笑)
そしてもう一つ…私はブッダのように死について向き合うことがあります。ほとんどの人が避けて通りたいこの現実を、私も向き合いたくないのに向き合ってしまいます。ということは、私はある部分ではサンスカーラを使い、ある部分ではサンスカーラを使わないということでしょうか？（1年女子）
（向き合い方にもよると思います．最終的にはサンスカーラを発動させようがさせまいが，安心して生きることが大切です．）

僕はいつも失敗した事などをいつまでも後悔してしまいます。確かに、失敗によって学ぶことはありますが、いつまでも後悔していても前に進めないという事を今回の授業で学んだ気がします。カースト制度がある時代に生きながら、サンスカーラの考え方に至った釈尊は偉いと思ったし、輪廻の観念から解脱した釈尊はすごいと思いました。ふと気になった事なんですが、仏教にはいろいろな宗派がありますが~~あるけれど~~、全ての仏教の宗派の根本にサンスカーラの概念があるのでしょうか？？？（1年男子）
（諸行無常は仏教の基本中の基本です．ただし，お坊さん全員がそれをきちんと自覚しているかどうかとは別問題です．）

ブッダのように世界をありのままに見たらどんな感じなんでしょうか。今の世界をみてどう感じるか気になりますね。喜怒哀楽、それともなにも感じないのか。気になりますね、先生は見てみたいと思いませんか。（1年女子）
（そりゃ思いますよ．というより，仏教徒の永遠の願いです．）

今日の講義でサンスカーラとは何かを学ぶことができた。サンスカーラを全く使ってはいけないのではなく､必要ならば積極的に使ってもいいんですね。（1年男子）
（そうです．でも自分でなかなか制御できないのがサンスカーラですから，きちんとした方法論に従って学んでいったほうがいいです．「生兵法は怪我の元」ですよ．）

釈尊はA’をありのままのAとして見られる~~見れる~~ということですがそれで苦しんだりしなかったのですか？知らなかった方が良かったことを知ってしまったりしてもちゃんと受け入れられたのですか？（1年女子）
（そうです．「知らぬが仏」ではなく「知っても仏」「知ったからこそ仏」なのです．）

中学のころの恩師がブッタとシッタカブッタの本を授業の合間に何度か紹介していたのですが、いまさらながらそのころ興味を持って読まなかったのを残念に思います。（1年男子）
（過ぎ去ったものは手に届かぬものと認めて（＝諦める＝明らかにする），今を生きよう．今から読んでも遅くないです．）

平家物語に出てくる『…諸行無常の響きあり』の諸行無常は仏教的意味はないということになるんですか？この言葉の意味を「すべてのことは永久に続くものではない」と習いました。私は平家物語といったら仏教と深くつながりがある考えるので、この諸行無常は仏教的意味をもつ言葉であると思っていたのですが…。
また、諸行無常の意味を聞いて少し救われた気がしました。自分が人と接するとき、本当の相手なんて見えるわけがないし、相手は本当の自分を見てくれているわけではないと思います。しかも本当の自分ってなんだろうと考えます。前者は当たり前のことだし後者は悩んだってきりがないとは思うのですが、こう考えるとどんどん気分が暗くなっていきます。しかし、今回の講義を聞いて　まぁいいか　と開き直れた部分が少しありました。それでもまだ私の中は『苦』が沢山存在しますが。（1年女子）
（『平家物語』の諸行無常は，諸行無常という概念が表しているものの一側面に過ぎません．この問題については拙論

「諸行無常」再考，『山口県立大学国際文化学部紀要』#10, 2004, pp. 21-31.
で詳しくあつかっていますので，そちらをご覧下さい．）

今まで、お釈迦様とか言っていたのが、間違っていることに初めて気がつきました。（1年女子）
（「お釈迦さま」は OK です．「お」と「さま」がつくことで，「釈迦族出身の聖者」というニュアンスが生まれますから．単独の「釈迦」がまずいのです．「釈迦＝釈迦如来の略」とも言われていますが，阿弥陀如来のことを阿弥陀と呼んだり，薬師如来のことを薬師と呼んだりしないのと同様に，釈迦如来のことを釈迦などとは呼ぶべきではありません．「釈迦」はどこまでいっても部族名です．）

四苦というのが生・老・病・死だということは分かったのですが、では八苦というのは何なのかなと思いました。（1年男子）
（生老病死の四苦に，愛別離苦（あいべつりく．愛しい人ともいつかは別れなくてはならない苦），怨憎会苦（おんぞうえく．嫌いな人とも会わなくてはならない苦），求不得苦（ぐふとっく．求めるものが得られない苦），五蘊盛苦（ごうんじょうく．輪廻の世界に生きていること自体から生じる苦）の四つを加えて，合計で八苦です．百科事典にも載っていますよ．質問自体は大歓迎ですが，まず自分で調べてから質問しくれると嬉しいです．その方が学習効果も上がりますから，疑問や興味を持ったら，まず調べてみましょう．）

いつも神や考え方が取り上げられて説明されるのですが、それは、考え方が先にできたのでしょうか？それとも、言葉ができ意味ができたのでしょうか？（1年男子）
（すみません．質問の内容がよく理解できませんでした．何となく「こういうことを聞きたいのかな？」というのは分かるのですが，はずれていてもいけないので，再度質問してもらえますか?）

今回の講義の前にいつもの DVD が流されていて屋敷の女主人らしき人が使用人は私の息子と同じです、という台詞を言っていたのが印象的でした。このような考え方は以前のインドでは珍しかったのではないでしょうか。（1年男子）
（あれにはオチがありますから．．．）

先生の講義ではいつも、インドの文化が私達の生活と関わりを持っていることに気付かされます。今回の講義では、サンスカーラという言葉が印象に残りました。人は誰でもサンスカーラを持ち、人と関わり合っているのだと思いました。私たちはどうしても第一印象や、起こった事柄であの人はこういう人と頭の中でその人のイメージを作ってしまいますが。今日の講義で、それがその人そのものではなく、サンスカーラ作られた、想像上の人物であると言うことに気付きました。実際付き合ってみるとイメージしていたのと全く違うと言うことが多々あります。今日はこのことに気付くことが出来てよかったと思います。（1年女子）
（無用なサンスカーラに振り回されずに生きていきたいものです．）

『生老病死』という四苦については言葉しか聞いたことがなく、『生』とは【生きていくこと】だと思っていたので、【生まれること】だと知って驚きましたが、納得できました。【生まれること】＝【生きていくこと】のようにも思えます。人生って苦しいことばかりなんですね。そう考えるのもかなしいです。（1年女子）
（授業でも言いましたが，仏教の「苦」と，一般で言う「苦しいこと」とは同義ではありません．仏教の「苦」は，ありのままの姿 A とサンスカーラの産物 A' との間にギャップがあって，そのギャップのせいで A' に対して実現可能と思い込んでいた（サンスカーラしていた）ことが現実の A には適用できず，自分の思い通り（サンスカーラの通り）にならなくて苦しむことを言います．「こんなはずでは．．．」と．）

サンスカーラって、日常自分が体験しているものだなと思うと、とてもわかりやすかったです。なんか日頃の心の中の矛盾をインドの思想は的確に突いてくるんでスゴイなって思います！（1年男子）
（インドは凄いですよ～）

「仏教とは何か？」今読みましたが、『時間論的に解釈すると「過去を悔いることなく、未来を憂えず、時間は歩み続ける今のみ」ということ』というのがあり、私の考えと似ていて今まで「自分教」と考えていたものは仏教に近いものなのかなあと思いました。
釈尊の開いた仏教というのは、カウンセラー的な役目をしていたのですね。日本に伝わった仏教とは違う感じがしますね（よく仏教について知らないのですが...）。大乗仏教だからなのでしょうか。(1)前に大乗仏教と小乗仏教はかなり違うということを聞いたのですが、どのように違うのでしょうか。
(2)「こうであるはずだ」と思うのではなく「こうであって欲しい。こうなりたい」と思うこともサンスカーラによるものなのですか。なんか違う気がしますが。（1年女子）
（(1) 大乗と小乗（小乗という呼び名は大乗の側からの蔑称なので，本当は用いるべきではありません）の違いをこのスペースで説明しきることは到底できません．後期開講の「宗教文化研究」や私のゼミでは扱いますが．　　あえて言うならば，後者（いわゆる小乗）は「完全さを求める余りに結局はいつまでも不完全に止まる」，前者（大乗）は「不完全を予め自覚した上で，その不完全さのなかに完全を見出そうとした」と言えるでしょう．現段階では分かりにくいかとは思いますが，かなり核心をついた答えだという自信はあります．
　(2) 全てサンスカーラです．）

方便に関してですが、（甘い考えだとは思いますが）世界中の人が同じような考えを持っていたなら、いわゆる宗教戦争などは起こらないのではないかと思いました。（1年女子）
（甘くないよ，甘くないよ．それでいいんだよ．このページの終わりにある【総評】も見てください．）

人間は、虚構によって人の人物像を勝手に作り上げるという考えにとても共感しました。また、人間は、生老病死についてのことは、遠い存在と思い考えようとはしないというところにも共感しました。いつかは人間みな死んでしまうのに、そのことは考えようとはしないなんて、今思ったら、すごくずるい感じがするけど、死について深く考えないからこそ今を生きることができているのかなとも感じました。形而上学的問題というのもおもしろかったです。神はいるのかとか、死後の世界とか深く考えると頭が痛くなりそうなものばかりだけど、実はこうしたことについて考えるということ自体すごく意味があることなんじゃないかと感じました。（1年男子）
（多くの宗教家は「死について考えないから，人はきちんと生きることができない」と考えました．意味のあることなのです．）

私も誰もがいつかは老いて死ぬと分かっているけれど、普段はそんなこと考えもしません。今日の授業ではブッダがその苦悩に向き合って分からないものを分かったものとしてサンスカーラしてしまうのはやめて、分からないものは分からないものとして認識してゆこうという考えを聞いてなんてポジティブなんだろうと感じました。（1年女子）
（ね，ネガティブのネガティブはポジティブなんですよ (^^) ）

今回のサンスカーラの理論でなるほどと思うことが多くありました。恋愛に関してのサンスカーラが原因で、先生がおっしゃっていたように修羅場なっていた友人を私も多く見てきました(笑)でも、私たちが今日このサンスカーラの理論を学んでも、ブッダのように相手の真実を見ることはほとんどできないのでしょうね。でも見えない部分に感じる恐怖を無くすために、相手の人格を自分の中で作ってしまう人間の脳もすごい仕組みになっているんだなと関心もしました。
あと、今日の授業で感じたことがもうひとつ。アメリカのイラクに対する「大量破壊兵器保持」の疑惑もサンスカーラではないでしょうか？この疑惑によって始まったイラク戦争のことを考えるとあまり私たちの脳に感心していることもできないんですが・・・結局サンスカーラはあまり良い事柄を起こすことはないのではないかと思いました。（1年女子）
（悪しきサンスカーラは妄想を生み出し，人の苦悩を増やします．サンスカーラは理想的には無くすべきなのですが，それが実際にはなかなかできない以上，せめて良質のサンスカーラとつき合っていこうというのが仏教の一般的考え方です．）

普通、誰でも見たものをそのまま認識しているのではなく、いろいろな情報をもとに自分で新たなものを作りあげ、それを認識している。それを作り出す力がサンスカーラということだった。言われてみれば確かにそうであると感じた。実際のものとサンスカーラによって作られたものにはズレが生じるのは当然であり、そのために何らかのトラブルが生じるのも当然だ。そしてその両者を同じにするというのは感覚的に考えてもきわめて困難のことだと思う。しかしその両者を極めて近づけたガウタマ・シッダールタはとてもすごいのだなとつくづく感じた。そもそもサンスカーラということにたどりついたのもすごいと思った。また仏教の教えのあり方がキリスト教やその他多くの宗教と全く異なっていることも初めて知ってとても驚いた。その中でも、その人が幸せになれるのだったら仏教以外の宗教でも認めてしまうというのがとても印象に残った。これはほかの宗教ではあり得ないことだと思う。いつの時代にも宗教戦争はおこってきたが、もしすべての宗教がこのような考えをもっていたならば、宗教戦争は起こり得ないと思う。ガウタマ・シッダールタが、当時起きていた宗教論争を外側からみるためにこのような立場にたったのは自然なことであると考えてはおかしいでしょうか？（1年男子）
（決しておかしくありません．それもきっかけの一つでしょう．　ただし，「宗教対立」と「自己の抱える絶対的矛盾」との根が同一であると見抜いたところに，釈尊がブッダたる所以があることは明記しておくべきだと思います．）

ネガティヴに考えることとポジティヴに生きることは両立できるというお話を聞き、目を開かれた思いがしました。そう言われてみれば、私たちの周りには、私たちを夜も眠れないほどの不安に陥れる要素がたくさん存在しているはずなのに、大部分の人たちはそれらの事実と向き合おうともせずに平気で暮らしています。その矛盾点について考え、解明していこうと取り組むことは、かなり勇気のいることではなかったかと思います。サンスカーラによって虚構されたものと現実とののギャップが苦に変わる度合いは人によって違うと思いますが、誰もが持っているはずです。このような私たちを救うために宗教があり、宗教とはかなり身近なものだと、再認識させられました。また、仏教の持つ、処方箋のような一面も、身近に感じられるもののひとつでした。（1年女子）
（宗教に対する認識を改めてもらえて，私としても嬉しいです (^^) ）

〈科学と宗教〉

今日の授業はとても感動してしまいました。それは、やはりサンスカーラです。先生が教えてくださった宗教戦争は無意味だということは、そのとおりだと思いました。今、中東地域を始めさまざまなところで宗教の違いをめぐり争いが起こっている中で、お互いの思想を否定しあうことからは和は生み出せないと思いました。お互いのギャップを埋める事は苦ということを習いました。また、宗教と科学についても、唯一宗教だけが必要というのでもなく科学だけが必要ということことでもないということなのですね。（3年女子）
（科学と宗教は守備範囲が違います．これらのうち，どちらか一つだけが全てだ，という人は，実はその人はどちらも分かっていないことを露呈しているに過ぎません．愚かです．）

科学が答えるのは how の部分で、why の部分は宗教が答えるということに「なるほど。」と思いました。また仏教は処方箋であり、相手によって教えが変わるということに仏教の不思議さを感じると同時に、おもしろさも感じました。（1年男子）
（面白いでしょう? ）

私が聞き逃していたのかもしれませんが、宗教ではhowを科学の分野として扱ってはいなかったのですか？そして、whyは神に委ねて　その答えは何らかの形で得られるのですか？
サンスカーラは第一印象がいい例だと思います。私は特にギャップの激しい人のようで、深くかかわることでサンスカーラが薄れ　いやな面も見えてきますがその苦と向き合いながら　良好な人間関係が形成されるのだろうと。サンスカーラによって理想的な像を作りますが　釈尊の場合　人をありのままに受け入れる訳ですから　苦痛はたいそうなものだったと思います。そこから諸行無常にいたるのは　もっともです。また、処方箋で相手に適切な助言をし、心身共に癒され（時には弟子となり）仏教が進展するのでしょう。（1年女子）
（質問の件，そうではありません．科学は世界がどのようになっているか（how）には答えてくれますが，どうして世界がそのようになっているのか（why）には答えません．それに答えるのは宗教だ，と申し上げました．）

科学は how を追求するが、why には答えられないというたとえに共感します。また、前回よく分からなかったサンスカーラが今回理解できてよかったです。他人を見たときの第一印象を自分の中で処理し、その人の人物像を作り上げる作業はどの人間にも当てはまること。私たちの身近にあるサンスカーラをブッダは克服したことに尊敬します。ところでそのサンスカーラと、方便（upaaya）とは同一の関係なのですか?（1年女子）
（良質のサンスカーラ（より厳密に言えば，その産物，それを利用したもの）が方便です．）

形而上学的問題というのは科学のみでは解決できないもので科学と宗教は相反するものではないというのはとても印象に残りました。現在私たちは科学が全ての問題を解決してくれると考えがちですが、宗教的思想も大切にせねばならないと思います。何しろ人間は理性と感情が入り交じった生物なのですから・・・。（1年男子）
（理性・感性の他に，私は「霊性」も加えたいと思っています．）

今日の授業はすごかった！！私は小学生の頃、宇宙って結局何なんだろうと考え始めました。初めはテレビって何だろうと考えたのですが、テレビも結局地球にあるだけで、地球もそれと同じように宇宙にあるだけで、もしかしたら宇宙もテレビのように何かの一部で、誰かに眺められているんじゃないかと考えていました。だから、今日の授業にとてものめりこんでしまいました。形而上学的問題であるから、いくら科学が発展していっても多分ずっと分からないことだと思います。しかしこの形而上学的問題に答えてくれるのが宗教だと知り、宗教とは素晴らしいと思いました！！また、釈尊が、サンスカーラに基づいて相手の悩みに合わせた処方箋を与えることはもっともなことだと思いました。誰でもそれに納得はできるけど、それに気づいた釈尊はすごいと思います。悩む人々に同じアドバイスをするより、それぞれの人が安心できるように処方箋を与えることが本当の宗教の在り方だと思います。（1年女子）
（より正確に言えば，「宗教の役割の一つに，形而上学的問題への解答がある」です．宗教の中には形而上学的問題には一切関わらないという態度を取るものもあるからです．しかしそれが極めてレアなケースであることは言うまでもありません．通常はあなたの理解で正解です :-) ）

科学はhowで宗教はwhyって聞いたとき、しょうじきあれっと思いました。というのが僕は、理系くずれの経済学部生なのでいままで、人間は、わからないというものが怖いので、何か理由付けのために宗教が生まれたので、今は科学でそれが解明出来ているのだ。とおそわってきました。たとえば雨が降るメカニズムについていうと昔は神が降らしているのだ、と考え、今は水が蒸発してくもになって・・・etc。でも、結局先生がおっしゃりたいのは、水の蒸発にも宗教が理由付けをしてくれるということなのでしょうか~~なんでしょうか~~?（1年男子）
（もし本当に下線部のように教わってきたのだとしたら，それは明らかにいきすぎだと思います．
　科学と宗教は扱うフィールドも次元も異ります．科学は自然界のメカニズムを明かしますが，そのメカニズムを成立させている道理（摂理）を説明してくれません．科学が宗教に取って代われるなどと教えることには大きな問題があります．
　ただし，そのような問題行為が行われるようになった原因の一端は宗教の側（特にキリスト教）にありますから，そのことはお話ししておきたいと思います．キリスト教などのセム系一神教（ユダヤ教，キリスト教，イスラーム教）では唯一絶対の神による世界創造を説きます．これはあくまで宗教の領域・次元の問題だったのですが，中世キリスト教はこの問題を「経験の問題＝科学の領域・次元」にまで適用し，正常な科学的思考の発達を阻害しました．聖書の記述にそぐわない経験的世界の知見（科学的知見）を異端と見なし，殺害も含め激しく弾圧したのです．現在のキリスト教会はこの事実を認め謝罪しています．
　おそらくそのようなことの反動から，今度は科学が宗教の領域・次元を侵しているのが現代という時代だと言えるでしょう．）

サンスカーラのところで、虚構の話は面白かったです。確かに普段意識して発動したりはしませんが、必ず皆やっていることです。僕には実体を実体として認めることができる様なbuddhaにはなれないので、取り合えず一度自分の中のサンスカーラの造物を見直してみなければなりません。また人生観が変わりそうです。
　あと形而上学的問題の話では、科学と宗教は扱う問題が別だという話がありましたね。以前大槻教授が非常に大掛かりな装置で火の玉を作って自慢していました。彼は「科学で証明できないものはない」と言いますが、「あんな大きな装置で火の玉を作ったからといって、自然界でおこる火の玉の現象を、どうして科学という枠でとらえることができるのだろうか」とずっと不満でした。余談が長くなりましたが、しかし今回の先生の「偉い科学者は宗教も理解している」というお言葉でやっと納得できました！『大槻教授は立派な科学者ではない』ということが・・・　釈尊の思想を処方箋に例えたので、かなりすんなりと納得できました。
　しかしガウタマ~~ガウダマ~~が目覚めてブッダとなる過程課程が早口でした。彼は『生老病死』を持った自分をそれ自体として認めた・・・というって事ですか・・・（1年男子）
（まずブッダの覚りについては，結局はそういうことです．釈尊はその覚りによって，持てる力を全てプラス方向に使えるようになりました．その境地がどのようなものであるかは，その境地に達していない者はサンスカーラを発動して虚構するしかありませんが．
　次に大槻教授に関して．　彼がかなり偏屈で余り魅力的な人物とは思えないという一般的評価があるようです．たしかに教授の行動や言動にはトゲが多く，やや言い過ぎ・やり過ぎの感がないとは言えないでしょう．
　しかし本当の問題は彼にではなく，「自称霊能力者」や「超常現象肯定者」の側にあります．たしかに「霊能力」や「超常現象」が世の中にはあるのかも知れません（個人的見解ですが，私はあると思っています）．でも，それは「宗教の領域・次元の問題」であって，「科学の領域・次元の問題」ではないのです．そうであるにも関わらず，「自称霊能力者」や「超常現象肯定者」がそれらを「新しい科学」であるかのように喧伝するため，科学者である大槻教授は反論せざるを得ないのだと思います．もちろん，その反論の仕方に行き過ぎや多少(?)の誤解があることは先ほど言ったとおりです．
　いずれにせよ，教授もきちんと宗教の勉強をしてみてはいかがでしょうか．そうすれば，今よりもっと効果的な反論が，より反感の少ないかたちでできるようになると思います．
　そして，もし，教授が「科学で全て解明できる」と本気で主張しているのだとしたら，私は教授を買いかぶっていたことになります．「科学万能主義」は科学・宗教両者に対する無知であり，自分が立派な科学者でないことを自ら示していることを意味します．）

科学と宗教について先生が仰られたことはとても衝撃的でした。目からウロコという感じです。毎回のごとくとてもありがたく思います。
ところでその話についてどうしても納得しがたい点があるのですが質問してよろしいですか。科学＝how、宗教＝why に答えるものである？ということですが、why の答え（＝理由）を求めてしまうのは現実の事態・事象を何かしら理由がある筈だと信じる＝それを理由がなければ有り得ないと考える＝それを理由が無ければ認められないと考える、ということになりませんか。するとその状態というのは、それが有り得るという現実や真理（理由ではない）は存在するのですが、それを自分が受け入れられずに否定しているという状態ではないのですか。宗教がある事態・事象についての why の答えを導き出すとしても宗教の中にもまたたくさんの why が存在していると思います。だとすればやはり宗教というものは why の答えを出すものと言うよりも、現実や事象をあるがままに受け入れられない自己というものを救済をするものと言えるのではないですか。そうなると科学と双極に対するものとは言い難くなると思うのですが・・・。（1年女子）
（毎回ながらあなたの感想の質には驚かされます．ご指摘の点，その通りです．
　科学と宗教は扱う問題のフィールドが違います．両者は次元の違うものなのです．科学=how，宗教=why という話は，「科学万能・宗教は無知な人が入るもの」という先入観を持っている人たちの誤解を解くための手段（処方箋!!）です．ですから，あなたのように考えることのできる人には，この処方箋がしっくりこなかったのだと思います．いやー，何とも頼もしい．あっぱれです．
　もちろん，「科学=how，宗教=why」の話に納得してくれた方々がダメだと言っているのではありません．　諸行無常ですから，意見・感想・受け止め方が各自違って当たり前です．みんなちがってみんないい．）

【総評】ジョン・レノンは「イマジン」の中で，「（人々の争いの種になっている）宗教，それのない世界を想像してみようよ」と呼びかけました．一方，釈尊のメッセージは「宗教の信じ方は，それが争いの種となるようなあり方ではいけない．サンスカーラの無常性（諸行無常）を理解すれば，人は争わずに（自分とも争わずに!!）安心して生きていくことができる」だったのです．（鈴木隆泰）

アジア文化論 I／宗教学

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