仏教文化 2003/10/24 No. 4

10/24 授業の感想4号と回答

感想4号（総数 65）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

サンスカーラや方便（教説・処方箋）を，毒矢の例え，リンゴの例え，医師の例えなどを使って説明しました．

医者の例えはとても分かりやすかったです。方便というのは、教えにたどり着くようにという、方向を示すものなんですね。ということは、仏教には絶対的な教えというものはないんでしょうか？教えを受けるも者が得た、自分なりの答えが、仏教から受けた答えで、答え自体が仏教の教えでなく、その道しるべになったものが、仏教の教えということでしょうか？なんだか、ぐるぐるまわっている気がしますが。（2年女子）
（患者さんが違えば処方箋は異りますが，例えば「暴飲暴食をしてはならない」というようなことはどの患者さんにも当てはまりますよね．仏教においては「諸行無常」などが「どの患者さんにも当てはまる処方箋」ということになります．）

先生の絵は本当に面白くて好きです（笑）先生は本当は絵を描くのが大好きなのでは・・・？細かい配慮にいつも驚きます（笑）今日の授業もなかなか難しくていっぱいいっぱいでした。釈尊は釈迦族出身ということで、「釈迦」とも言われているという説明がありましたが、ではその時代に釈迦は釈尊だけでなくたくさん他にもいたということになるんでしょうか？釈迦族の人なら誰でも釈迦といわれていたのですか？だから「釈尊」という名前を、ある意味他の人と区別するために、つけたのだろうか・・・。と、思いました。あと、「梵天勧請」の意味を自問自答して悩みを解決すること、と解釈したのですが大丈夫でしょうか？（2年女子）
（インドにおいて，釈尊を含めて釈迦族の誰か個人を「釈迦」と呼んでいる例はないと思います．釈尊を「釈迦」と呼んでしまうのは中国に伝わって以降になります．梵天勧請の解釈はそれで構いません．ただし，「人には誰でも内面に善を抱えている」という理解を加えておくのが，私としては好きです．）

今日は何とか理解できました。釈尊はその人その人にあった教えを説いていたのですね。個別指導みたいなものでしょうか。りんごと医者の例えはわかりやすかったです。毒矢の例えは「解決のできない問題で足踏みしていたら、何も手に入らずにすべてを失ってしまう」ということですか？（2年女子）
（その理解で構いません．マールンクヤプッタ経は，死後の世界等の「ある」「なし」どちらを取っても同じ形而上学的不毛な議論に落ち込んでしまい，求めているはずの「心の安心」はいつまで経っても得られないぞ，と教えています．）

今日の授業は凄く分かりやすかったです。にしても本当に釈尊は凄い人だなぁとおもいました。個々の性質似合ったやりかたをって言うのはなかなか大変ですよね・・・・。学校では出来ないことです。。。今の家庭教師のようなものでしょうかね？やっぱりそれが一番個人を伸ばしてあげられる方法なのだろうと再認しました。（2年女子）
（できるだけ細かいフォローをしようとして，こういう「感想・回答」のページを設けたりはしているのですが．．．）

今日の講義の内容も分かりやすかったです。仏陀が自身の体験を言葉に投影しようと決めたのは当時様々な事に思い悩み、心の安定を求める人がいたからなんでしょうね。また宗教などをめぐって争いがたえない世の中に仏陀がだまっていられなくなったからなのかなと思いました。ところで方便という言葉の由来は、仏陀の例の行為からきているのですか？（2年女子）
（「例（れい）の行為」とは何のことでしょうか? 「例え話」という意味ですか? 方便（upaaya）は「接近」という意味です．）

仏陀の毒矢のたとえはとてもわかりやすかったです。毎回講義を受けた後、仏陀の教えが自分の中にすんなり入り込んでいくのには驚きです。それは、仏陀の教えが絶対的でなく、人それぞれに考える余地を与えているという印象を受けるからです。違っていたらごめんなさい。仏教って楽しいですね。（3年女子）
（楽しかろ? :-) ）

とてもわかりやすかったですが、講義を聞いていてなるほどな～とは思うものの理解するだけで自分の考えや疑問などが全然浮かびません。そんな感じでいいのでしょうか？（2年女子）
（間をおいて反芻してみてください．何か浮かんでくるかも知れませんよ．）

宗教と聞くと、形而上学的な問題に対して答えを出すことで人々を救うものだというイメージがあったけれど、釈尊の考えを学ぶと、本当の救いとは何なのかと考えさせられました。身近な仏教だけれどこの授業で釈尊のことなど初めて知ることが多くてとても勉強になります。梵天勧請のところが、なんとなくしか分からなかったので、より理解できるよう頑張りたいです。（2年女子）
（梵天勧請のところを補足しておきましょう．
　涅槃を得た釈尊ですが，彼は自らの体験をことばに投影することの不可能性，あるいは不完全性を理解していたため，自らの覚りの体験・涅槃の境地を説くことをためらいました．余計なサンスカーラを増大させるだけだと思ったのです．伝承ではここで梵天（当時ポピュラーだった神さま）が現れて，釈尊に「そんなこと言わないで説いてくださいな」と説法を勧請したことになっています．そして結局釈尊は梵天の勧請を聞き入れて説法を了承しました．これはおそらく釈尊が内的葛藤を経た後，「涅槃の境地（リンゴの味）そのものを説くことはできなくても，涅槃を得させるようにし向けることはできる」と思い直したことを，「梵天が勧請した」という伝承に仮託したものだと思います．）

NIRVANAやbrahmanと聞いてそういう名前のバンドがあるな～と思ったんですけどこれらは仏教用語ですか？（2年女子）
（前者は仏教用語，後者はインド思想における一般的用語です．）

今日も毒矢、リンゴ、医者の例えと、どれも分かりやすかったです。先生は分かりやすい例えをつくるのがうまいですね。特に、医者の例えはとても分かりやすかったです。最終的には本人の力であるというのはすごく納得できました。勉強も本当にそうですよね。それから、「うそも方便」の「方便」が間違っていることは知りませんでした。気になって辞書を引いてみると、確かに「方便」は一番最初の意味に手段のことが書いてありました。（2年女子）
（自分で調べるとは，大学生のあるべき態度だね :-) ）

小さい頃、お坊さんに「お釈迦様が･････」と言いながら仏教についてお話されてるのを聞きましたが、今回の授業を聞いて本当は「釈尊」なのにと思いました。（3年男子）
（それは違うよ．．．　「お釈迦さま」って呼んで構わないんだよ．でもそこには信仰が入っているし，また，必ずしも学問的ではないという意味で，「この講義では学問的かつ用例に支持されている釈尊と呼ぶ」と決めただけです．）

仏教は宗派によって食べたらいけない食べ物は違うのですか？素朴な疑問ですがお願いします。（2年男子）
（日本の中では基本的に違いはありません．宗派内の特定の機関や寺院などでは食物に関する禁止規定はありますが，一般の寺院レヴェルでは特に禁止されている食物はないと思います．）

今日の講義も、納得することが多いでした！例えば、どんなに自分が体験した素晴らしさを、誰かに言ってみても「へぇ～」って言われるだけだけど、その人にその世界の存は伝えることはできる！！完全ではなくても、救いを求めている人にとっては、導いてくれるものの存在って大きいと思います。しかも、その相手にあわせた救済方法を見抜くなんて!すごいですね！釈尊が最初は自分の教えを説こうとしなかったということにも納得しました。
私は、幼稚園に入るとき必ずお釈迦様の像に手を合わせるのよ！と教えられていたんですが・・・お釈迦様の「釈迦」って部族名だったんですね。てっきり釈迦という名前かと思っていました。（2年女子）
（おー，それは大変よい幼児教育を受けていたのですね．ご両親に感謝しましょう．）

「うそも方便」。すごく考えてしまいました。今までついてもいい嘘はある！と思っていましたが、やはり嘘は嘘。単純なことだけれど、奥が深いと改めて感じました。（3年女子）
（事実を語ると相手を傷つける場合もありますよね．そういう時に，あえてその事実を隠したり，また，別の内容を伝えてしまうのは，嘘ではなく思いやりといいます．）

神の存在は科学では神の存在を証明できない、しかし神の非存在を証明することもできないという考え方には納得させられました。それを聞いたときは、神の存在について考えさせられました。やはり、信じるものは救われるのでしょうか？
　僕の中学の頃の教科書には仏陀を釈迦と堂々と書いてありました。ガーンディーをガンジーともかいてありました。どうせ教えるのなら正しいものをはじめから教えてほしいものだと思いました。（2年男子）
（救われます．「信じることができれば，それ自体が救いである」ということですから．）

私は、処方箋の医書の例えにとても納得しました。八万もの法門があると聞いたときは、多くありすぎて教えに真実味がないというか、教えの重さがないのでは、と思いました。だけど、救いを求める人はひとりではなく、いろんな人がいる。なのに、教えが型にはまった一方的なものでは困ります。だから、その人に合った処方箋が求められる。人と人の関係も相手によって接しなどが違うように、処方箋の多様性が重要になってくるんですね。なるほど・・・。（2年女子）
（納得していただけましたか? ）

人によって涅槃への到達手段が違うから、仏教の宗派はたくさんあるのでしょうか？
方便が八万四千もあるなら、釈尊に教えを乞えない今でも自分にあったものが探せそうですね。（2年女子）
（その通りです．）

今日は仏教文化の核心に触れていたこともあって理解に苦しんでいます。仏教の教え(仏陀の教え）は全て方便であり、真理は全て体験の中でしかない、ということはなんとなくですが理解できました。そして、釈尊はサンスカーラの無用な発動を起こしてしまうとして説法を躊躇したとありましたが、りんごの例えの所では「釈尊」で、方便の所では「仏陀」となっています。この時点で釈尊と仏陀を使い分けたのには理由があるのでしょうか？₍₁₎
次に方便の多様性のところですが、教えは人々を平安にするための処方箋という意味から仏陀は各人に合った処方箋(方便）を与えることが出来るのですよね！？それは仏陀が涅槃の境地に立ったから出来ることなのでしょうか？₍₂₎　そして、仏陀以外に涅槃の境地に立てた人はいるのですか？₍₃₎　それにしても「涅槃」というものがまだ理解出来ていません。お答えお願いします。m(__)m（3年女子）
（順次お答えします．
　(1) 余り意識しないで書きましたが，釈尊に限らず仏陀の説法の基本は「対機説法」なので，図らずもそういう意識が働いたのかも知れません．混乱するようであれば，あなたのノートではどちらかに統一していただいて構いません．
　(2) そうだと言えると思います．彼はサンスカーラに惑わされずありのままにものを観ることができますから，生来の共感性の高さと相まって，非常に優秀な「医師」であったのだと思います．
　(3) 涅槃を得た人を仏陀と呼びますから，「釈尊以外にも仏陀はいるのですか？」という質問に読み替えてお答えします．歴史上，自他ともに「あの人は仏陀だ」と認められているのは釈尊ただ一人です．でも教説（方便）の中には様々な仏陀（阿弥陀仏など）も出てきますし，日本仏教の高僧たちの中にも「この人って仏陀だよね」と思える人たちがいます．）

「りんごの味は食べてみないとわからない。涅槃の境地も自分で達してみないとわからない。」というのは、よくわかりました。次元は低いですが、自分の読んだ本や観た映画がすごく良かったと思っても、読んでいない人や観ていないひとに伝えようとしても、なかなかうまくできない。結局その人に自分で読んでみてなどと薦めることしかできないというのと似ていると思いました。
　釈尊が涅槃の境地に達しえたのは偉大だと思うけれども、さらに涅槃に達するにはいろいろな方法があり、どれでもその人も良い方法でと説いたところが他の宗教の開祖にはない柔軟性を感じました。しかし最後には自分でりんごをみつけなくてはいけないわけだから、厳しい教えでもあるのでしょうか。釈尊は彼以外の人が涅槃に達することができたと、その生涯で感じたのでしょうか。（3年女子）
（釈尊の最初の弟子たちはあっという間に悟りました．カウンディニャという弟子が悟ったとき，釈尊は自分以外にもリンゴを食べた人が現れたことを喜んで，「カウンディニャが悟った，カウンディニャが悟った」と言ったと伝えられています．それ以来カウンディニャは「アージュニャータ・カウンディニャ（悟ったカウンディニャ）」と呼ばれるようになったということです．）

今回の感想は、認識というものは面白いな、ということです。(たったの一言ですけど、そこに色々と凝縮されていると思って下さい)ところで、蘇我氏と物部氏が日本を鎮護するにあたって、仏教でいくか神道でいくかで争い、その争いが戦をするまでに発展したことは、宗教戦争と言えるのでしょうか？このことが引っ掛かってどうにも気持ちが悪いので、先生のお考えを聞かせて下さい。お願いします。（2年女子）
（進歩派の蘇我氏と保守派の物部氏との覇権争いに仏教が巻き込まれたのであって，宗教戦争とは呼べません．ただし日本仏教の船出が血塗られていたことは紛れもない事実です．）

(1)方便が人によって様々というのは、一人でも多くの人に涅槃を得てもらいたいためなのでしょうか？ (2) 万人に同じ教義を説いている宗教の場合は、個人によって教義へのたどりつき方が違うということ事はないのでしょうか。日本よりも文化的に個人主義である国には文化にも宗教的影響がありそうなのですが。（2年女子）
（(1) そうです．処方箋が人によって違うように，病気を治すためにはその人の病状毎に異った教え（方便）が説かれるのです．
　(2) 「個人によって教義へのたどりつき方が違う」という部分がよく分からないのですが，仏教のように形而上学的議論を一歩退いて見ている宗教を他に知りません．）

前に、中学校時代の友達が『悟った』と言ったことがあります。でも今日の授業を聞いて、解決の出来ない形而上学的問題を解決するのはそう簡単なことじゃない…と感じました。無明を破れば破ったで、更なる試練が待ちうけている…
私はどういった状態が悟ったことになるのかも分からないし、体験したこともありません。私が『悟る』と言うことをあれこれ創造する事にもサンスカーラが発動しているんですよね…悟るって難しい。。。（2年女子）
（どういった感じのお友達だったのでしょう? ）

毒矢の例えも、リンゴの木の例えも、医者の例えも、私にとっては分かり易かったです。ブッダは教えを説いていないのに、人々がこんなにあがめているのはおもしろいと思いました。（2年女子）
（説いていますよ!! 「八万四千の法門」と言われるほどにたくさん説いています．）

今回の講義でもりんごの例えがわかりやすくて助かりました。ふと思ったのですが、(1)他の宗教(たとえばキリスト教、イスラム教)の教えの説き方をりんごの例えに当てはめることは可能でしょうか？わたしはどちらの宗教についても知らないことが多過ぎるので、例えの枠組み(？)そのものが違うような気もするのですが…
仏教は他の宗教と比べると布教活動が少ないように思っていましたが、今回の講義で釈尊が教えを説くことについて悩んでいたのを知り、そのことが(2)控えめな布教活動の原因の一つかも知れないと感じました。（2年女子）
（(1) 砂漠生まれの絶対的一神教は，リンゴの例えとは相容れません．
　(2) 仏教には「現身説法」ということばがあります．仏教者のあり方そのものに仏教の教えが顕れて，別段仏教教理を説かなくても，知らず知らずに人の心を惹きつけるのです．）

先生は死後の世界についてどう思われますか？人は死ぬと全てなくなるのでしょうか？今までの記憶も体も・・死んだ瞬間、全てがふっと消えてしまうのは怖いし、やはり私にとって死というものは怖いです。もしこの世界は誰かによって創造されたもので現実ではないのでは・・とも考えることがあります。（2年女子）
（こちら（「霊は存在するのか?」）をご覧下さい．）

今回の授業はとてもわかりやすかったです。釈尊が涅槃について最初は説こうとしなかったという部分には驚きました。間違ったイメージだとは思うのですが、釈尊が大きな木の下で弟子たちに教えを説いているイメージがあったからです。ひょっとするとそのイメージは梵天勧請の後なのでしょうか？また、方便についても説明がわかりやすく、理解できたと思います。仏教の経典はあくまでも絶対の真理ではなく、目的のための手段に過ぎないという説明もとてもわかりやすかったです。最後に質問があるのですが、釈尊が教えを説く対象はどういう人々だったんでしょうか？やはり、民衆すべてなのでしょうか？それともとりあえずは自分の弟子を対象にしていたのでしょうか？もう一つ質問があるのですが、当時のインドにおいて釈尊は一般にどのような評価を受けていたのでしょうか？いま、私が聞いて釈尊の教えはとても良いもののように感じるのですが、当時の人々が釈尊を評価していなければ、釈尊から教えを受けるのは極少数になってしまうのではないでしょうか？（2年男子）
（下線部は誤解を招きやすい表現なので訂正してください．たしかに方便は目的（涅槃を得ること）のための手段ですが，「～に過ぎない」ものではなく，それがなくては目的の達成ができないという，絶対に不可欠なものなのです．
　釈尊の教化対象は民衆全てです．当時より釈尊の人気は絶大でした．「歴史のない国インド」において，個人の事蹟を釈尊ほど遺している例は非常に稀です．）

「ウソも方便」･･･使ってました。もう使いません。質問ですが、釈尊のように涅槃の境地に立った状態の人、またはbuddhaになった人に再びサンスカーラが発動することはないのでしょうか？無明を破った以上、そういったことはありえないのでしょうか？それとも、例えあったとしても、それは自分で解消できるものなので、サンスカーラが発動したとは見なされないのでしょうか？仏教は他宗教と違って、8万4千の法門がある、、、とても興味深いです。（2年女子）
（後者だと思います．釈尊はサンスカーラを鎮め続けていたからこそ，仏陀であり続けたのだと思います．釈尊は晩年，「自分は常に善の探求者であった」と述懐しています．常に勤め励む姿の中に「覚り」があるのではないでしょうか．）

方便の説明になるほどと感じました。医者が異なる患者に異なるアドバイスをするという説明がとてもわかりやすかったです。釈尊の教え・方便は他の宗教の神のように、すがられるだけのものとは違い、そのアドバイスをきいて実行する本人の意思などが大切なので、二人三脚のようにどちらも頑張ることが必要なんだと思いました。それと同時に真理を説くよりも、それぞれにアドバイスをくれる釈尊を少し身近に感じました。（2年女子）
（「二人三脚」ですか．よい例えですね．それ，いただきます :-) ）

仏教の話には地獄というものがありますが、釈尊は死後の世界そのものについて、サンスカーラだから語っていません。地獄というものは後世の仏僧が作り出したものだということでしょうか。これも方便のうちに入るのでしょうか。方便だとしたら、地獄の存在理由は一体どういうところにあるんでしょう？地獄というものはサンスカーラであり、僧侶が言い始めたのなら、その人は僧侶失格ではありませんか？方便であれば何でも許されるというわけではないと思います。まさに「うそも方便」といった誤解を象徴していると思います。（2年女子）
（くーっ，ツボにはまった感想をありがとう．この問題は仏教におけるサンスカーラ理解の核心に触れるので，時間をかけて講義の中で説明する予定をもともと立てていました．回答はそれまでお待ち下さい．結論だけお教えしておきますと，「方便であれば何でも許されるわけではない」という箇所は部分的に正解，「僧侶失格云々」の箇所は不正解です．）

今日の講義は個人的には難しかった。印象的なことばかりだったが、縁起の話が特によかった。解決不可能なことを解決しようとしてサンスカーラが発動する。実際に出すべき答えと自らが出す答え(結果)は不一致でそのズレに苦しむ。釈尊はこういった解決できない問題に固執するから悩むのだといったが、それが頭では理解できていても実際にその問題を放棄できないことは本当に多い。私はサンスカーラに囚われて生きているようなものだと思う。その自覚がある。釈尊は本当に凄い。また林檎の例えで「ありのままを伝えることが出来なくてもいい」と考えて、結果ではなく手段・方法を提起することで、サンスカーラの発動を抑えようとまで考えるところにも釈尊の凄さを感じた。（2年女子）
（あなたの言う「頭では理解できていても実際にその問題を放棄できないことは本当に多い。私はサンスカーラに囚われて生きているようなものだと思う。その自覚がある。」の部分，しびれました．よくそこまで今回の講義内容を「自分の問題」として考えてくれましたね．とっても嬉しいです．
　サンスカーラの鎮静化が主題の仏教ですが，実際にはあなたの感想のように「そりゃそうだけどできないよ」という嘆きはいつの時代にもありました．かくいう私だってそうです．でも安心してください．仏教はそんな私たちのためにもちゃんと処方箋を用意してくれています．私が仏教を凄いと思うのは，そういう点にもありますね．）

【総評】多くの方がサンスカーラや方便について正しく理解し始めてくれているようで，大変頼もしく感じました．次回は釈尊の最初の説法（初転法輪）から見ていくことにしましょう．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

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