アジア文化論I／宗教学 2005/6/3 No. 5

6/3 授業の感想5号と回答

感想5号（総数 104名：県大生 77名，山大生 27名）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

インドの基本的観念となった「業 karman」「輪廻 sa.msaara」「解脱 mok.sa」について説明しました．さらに，「異文化理解をする際の基本的態度」や「宗教」についても解説しました．

今まで業と輪廻のことについて、前世で善い行いをすると後世でそのことが影響してくるという程度でなんとなくわかっていましたが、天界・人間界・阿修羅界・畜生界・餓鬼界・地獄界の六界（ただし諸説もあり）があることはよく詳しく知りませんでした。しかも、人間界でもその中でカースト制度が組み込まれているというのはとても印象に残っています。解脱ということに対しても、とてもすごいことというイメージだけで実際どういうことなのかまったく知りませんでした。質問なんですが、善い行いと悪い行いを区別する判断者が必要になってくる時、天界の神が判断するのですか？そして輪廻を遊びつくしてから解脱するといっていましたが、そんなに簡単に解脱できないのではないでしょうか？（1年女子）
（善悪を決めるは天界に住む神（輪廻する神）ではありません．Veda の文言だったり，聖仙の教えだったり，あるいは古来尊ばれてきた行為かどうか（例えば布施）などによって決定されます．　インド人は再生を望んでいるので，解脱の実現を，ほとんど不可能なほど難しいものにしました．）

低い階層の人は人の世界では低い地位だけれども、輪廻全体から見れば、高いほうなので、人として生まれてきたことに誇りを持っているのですか？（1年女子）
（差別の構造を支えるものの一つに，「下には下がある」という観念があります．差別を受けた人は，自分より下の者をより一層差別しがちです．この「差別の連鎖」によって，差別構造が内側から支えられていくのです．）

今日、先生が何度も強調して話された、「信仰を持たない人はいない」ということに非常に共感しました。また、先生が「インドで活動もしないで、ただただ外から見て、自分の正しいと思う見方で、インド人の考え方を批判し、自分の意見を押し付けるのはよくない」とおっしゃたことは、様々な文化的背景を持つこの世界と調和して生きていくなかで非常に重要なことだと思います。（1年女子）
（世の中には様々な価値基準・価値観があります．もし仲良くやっていきたいなら，「双方とも」すりあわせていく必要があります．一方のみが価値観を押しつけたり，あるいは相手の価値観を「無批判に」受け入れたりすることは，結局どちらのメリットにもならず，また，相互理解も深まりません．）

地域地域の文化の異質性を感じました。マザーテレサの行いは、確かに尊敬できるものだけれどもインドの人々にとっては、いいこととはいえなかった。先生のおっしゃた通り、我々の価値観だけで物事を判断するのは、文化侵略でしかない。しかし、我々は、日本に生きているかぎりどうしても日本人としての考え方を優先させてしまう。違う文化の人々と付き合っていく難しさがよくわかりました。（1年男子）
（日本人である以上，日本人としての考え方（日本人としての価値観）が先に立ってしまうのは当然です．大事なことは，相互理解を望むのであれば，自分の価値観と相手の価値観をできるだけすりあわせ，双方にとって納得できるかたちを折り合わせることです．）

輪廻の考え方は知っていましたが、その世界にも階級があることが印象に残ってます。人間が結構、上位階級であることが意外な事実でした。あの図には植物が入ってなかったのですが、インドでは植物には生命があると考えてはいないのでしょうか？あと、解脱は、自分から望めば実現できるものなのでしょうか？（1年女子）
（植物を生命と考えるグループもありますが，インド一般では「生き物＝動くもの」という理解の方が一般的です．解脱は，本当に願ってそのために努力すればいつかは実現できると考えられています．）

カーストの低い人たちは前世で悪業をしていたからしょうがない、現世ではそのカーストで善業を積んで次に輪廻した時に上にあがれるようにと生活をおくる、それをみんなが受け入れていることなど、生まれた時からの環境によって考え方がとても違うものになるのだなと思いました。確かに、輪廻していないなんて言い切れないし、もちろんこのような倫理や文化を否定する事は出来ないなと感じました。（3年女子）
（時代や地域（環境）が人間を育てます．その人間が文化・文明を作っていくわけですから，環境が人間に及ぼす影響は圧倒的です．）

幼いときに悪いことをしたり、嘘をついたりしたときに地獄行きと聞いたのを思い出しました。それはインドにおける輪廻の世界の考え方が日本に来たものなのかなと感じました。また、輪廻samsaraーインド人の世界観は今も昔も変わらないことに驚きました。
　インド人のものの考え方や生き方決めているエートスであるヒンドゥー教はインド人として生まれてこない限りヒンドゥー教徒になれないということに、インド人の誇りや強さを感じました。（2年女子）
（業・輪廻の観念は仏教とともに日本に伝わりました．）

善いことをすれば上に（天や神）、悪いことをしたら下（地獄）にいくとおっしゃっていましたが、その中間にある蓄生や餓鬼などの基準などというものはあったんでしょうか？（2年女子）
（これも諸説ありますが，餓鬼界は嫉妬深かったり物惜しみや貪る行為を行った者が，畜生界は無知や愚かな者が赴く世界とも言われています．）

遊びつかれたら、修行？！にはいると言われましたが、それは自分の気分で本当にいいのですか？？（1年女子）
（大事なのは，修行を開始することではなく，修行を続けていくことです．）

生死輪廻を願っている人は、日本にも多くいるような気がします。死んだ後の世界は、どうなっているのでしょうか？？（1年男子）
（どうなっているのか，ではなく，あなたがそのような世界観を持つのか，に掛かっています．）

輪廻の話がとても興味深かったです。
輪廻を信じているくせに先祖が自分を護っている。とう思想は確かに矛盾しているな、と思いました。
今まで自分は無信仰だと思っていましたが、何も信じていないという信仰を私は行ってきたのかなと思いました。（1年女子）
（「何も信じていない信仰」は，何の安らぎももたらしてくれない信仰です．どうせ信仰するなら，安らぎをくれるものを選んだ方が得だと思うのですが．．．）

解脱は善いことをたくさんしたらできるのか、今まで充分楽しんだらできるのか、あいまいなので、解脱についても説明をしていただけませんか？（1年女子）
（善業とはいっても業には違いないので，人を生死輪廻の世界に縛り付けます．解脱をするためには，初期ヒンドゥーの場合は梵我一如に関する正しい知識が，ヴィシュヌやシヴァが全面に出てきて以降のヒンドゥーの場合は神に対する信愛（バクティ）が必要です．　それから，全期間を通じて「satya を使った解脱」も可能です．）

ヒンドゥー教の人たちは、自分の今の状態が悪いのは前世の行いが悪かったせいだと考えているようですが、それは自分の今の不運を何かのせいであることにしたほうが気が楽だからというのもあるから、そう思っている部分もあるように第三者として感じたのですが、どうでしょうか？（1年女子）
（カースト云々はともかく，気が楽に生きるのと生きないのとでは，気が楽に生きていきたいと誰もが願うのではないでしょうか．）

日本人は生まれながらに持っている、自分ではかえることのできない貧富や地位の差に悔やむことが多々ありますが、インドの人々は祖先のそれらの過去を含めて自分のこととして生きていると聞いて驚きました。しかし、カースト制の厳しい中で地位の低さで祖先を恨んだりしないのでしょうか？私がこう思うのは宗教的な違いからでしょうか？また、無宗教も宗教の一つであると聞いて、確かに自分が無宗教であると思っていることはすでに『宗教』として成立しているのだなと思いました。（1年女子）
（今の地位が低くても，現世の努力によって上に行くことができます．）

神がいると信じることも､いないと思うことも､どちらも信仰だ･という話にとても納得できました｡それとある程度の処まで行くと､解脱をすると言いましたが､自分はしたくても､神によってまた戻されるということは無いのですか？（1年女子）
（初期ヒンドゥーでは，神も輪廻の一状態に過ぎません．）

マザー・テレサのしたことは、インドの人に受け入れられ、そして感謝されているのだと思いました。インドの人が抱いた気持ちは、業・輪廻・解脱にそった考えで、日本人の私から見ると少し厳しいなと感じました。一般的に善いこととされることでも、宗教や考え方の違いで批判を受けることもあるのだと初めて知りました。しかし、生死輪廻の考え方に納得する部分もありました。相田みつをさんの言葉
「うまれかわり　死にかわり　永遠の過去のいのちを受けついで　いまここに自分の番を生きている　それがあなたのいのちです　それがわたしのいのちです」を思い出し、これも輪廻の考え方にそっているのかなぁと考えました。いつも私はインドのことを学びつつ、いろんなことを考えさせられます。（1年女子）
（間違いなく輪廻の考え方です．大事なことは，相田みつをさんの場合，輪廻が「自分と離れた客観的法則」になっているのではなく，相田さん自身の「主体的生き方」になっている点です．）

先生が言われるアニメ番組が全て分かってしまう。ということに最近になって気づきました。先々週のエヴァも今週のガンダムSEEDもよく知っています。これは授業がよく分かって個人的にはとても良いことです。おかげで今日の阿修羅(asura)はなんだかピンときました。
話は変わりますが、今日の授業は、異文化理解の上でもとても重要だったと思います。確かに誰かと仲良くなりたければ、お互いを知って受け入れていくことが大切なはずです。今日はそのことを実感しました。（1年女子）
（デスティニーは見ていますか? ）

生死輪廻の話がありましたが、私は昔、生と死は対極的なものだと思っていました。けれど、生の反対が死ではなく、生という一直線上のものの上に死ものっているという当たり前のようなことに最近気づいたばかりでした。でもそれはただの一直線ではなく、輪になってつながっている、つまり輪廻ということにすごく納得しました。また、私には死後の絶対的な観念がないという事実にも改めて驚きました。（1年女子）
（生死を対極と見るか，局面の違いと見るかは様々です．自分にとってよい方を選べばよいのだと思っています．）

今回の授業で、業・輪廻・解脱について説明してくれ、今までそれらに対してぼんやりとした感覚でしか解っていなかったのが少しは理解できたような気がする。良いことをすると後世でのランクが上がり、悪いことをすると後世でランクが低くなり苦しい思いをするという考え、なんとなく僕たちの中にもあります。その考えが根底にあるから、僕たちは良いことをしようと努めるのかもしれません。（1年男子）
（日本にも仏教を通じて輪廻の観念が入ってきていますからね．）

今回の講義で習った、輪廻、解脱、業については、高校の倫理の授業で習ったことがありました。だから、先生の説明がすんなり理解でき、より知識を深められたと思うので、とてもよかったです。今回の講義で、一番驚いたのは、「無宗教」も"神を信じない、あの世などの考えもない"という宗教であるといえることでした。確かに納得がいきます。自分の考えはまだまだ甘かったんだなあ・と思いました。どんな人間も死んだ後の世界や何か絶対的な者(物？)の存在に縛られて生きているのですね。（1年女子）
（「縛られている」と考えてしまうあたり，あなたも明治政府の仕掛けた呪縛から抜けられないでいるのでは? ）

アンチヒンドゥーにあまりに偏った例を出しすぎでは？と思いました。非道徳や非倫理より他宗教をまず持ってきてほしかったです。先生の意図は違うかもしれませんが、あまりにアンチヒンドゥーの説明が邪教がかった雰囲気が出てました。（1年男子）
（アンチ・ヒンドゥー以外の「他宗教」ということですが，非道徳・非倫理も「他宗教」だと思いますが．仏教誕生までは，ヒンドゥー以外の宗教は基本的にアンチ・ヒンドゥーしか記録に残っていません．　それから，「邪教」の定義はとても曖昧です．場合によっては「自分が認めない宗教は全て邪教だ」という言い分も成立しうるからです．それに，もし唯物論が邪教であるならば，今の日本にもかなりの邪教徒がいるということになってしまうかも知れませんよ．）

輪廻をまわす原動力が自分たちの行い、すなわち業だという考えを聞いて、輪廻転生の仕組みが理解できました。輪廻の中でどのように生まれ変わるかは前世で悪業をなしたか善業をなしたかによって決まるのだから、低いカーストに生まれてきたのは仕方がないという考えは、日本人から見れば違和感を感じるかもしれませんが、逆にそういう考えがあるからこそ長い間カースト制度がうまくいったのだとも思いました。また、artmanがいつか輪廻から抜け出して brahmanに戻ることを知りましたが、それがずっと先のことだと考えられているのが興味深いです。インド人の世界観が現代になってもほとんど変わっていないことは、日本人として少しうらやましく思いました。（1年男子）
（古いものが全てよいとは限りませんが，人々の生き様の根幹に関わるような部分がぐらついているのは何ともいただけません．そういう意味で，私もインドの人たちがうらやましいです．）

輪廻については前から興味があったので今回の授業を楽しみにしていました。以前、スリランカの話を聞いたことがあるのですが、スリランカでは、バスが停車しているときに、「私が今このようにしているのは、私が前世で悪い行いをしてきたからなのでしょう。皆さんのような立派な人たちはあなた達が前世で善行をしたからでしょう。どうか、あなた達が、来世でも素晴らしく暮らせますように、私が、今、あなた達に徳を積ませましょう。さあ、どうか私にお恵みをして、来世のために善行をしましょう。」と歌いながら、まわるのだそうです。そして、実際にそこで多くの人がお金や物をあげるのだそうです。輪廻の考えが生活の中に入っていると感じました。
今回の授業で、輪廻の考えは、現状の問題を放置してしまう可能性があるという話を聞き、初めてそういう捉えかたを知りました。ただ、それは、放置するという次元の問題でないことなども知り、また、いろいろな角度から輪廻転生について考えるきっかけになりました。（2年女子）
（インド文化圏において，布施は「持つ者」の義務なのです．
　日本には「後生だから助けてくれ」という言い方がありますよね．これは，「今，私を助けてくれると，その善業のおかげであなたの後生（生まれ変わった後の世界）がよりよいものになる．だから私を助けてくれ」という意味なのです．スリランカの例と同じでしょう? ）

今回の授業は業・輪廻・解脱といった、結構日本とも関係が深い事柄についてだったので興味深かったです。私はこれまで日本人は輪廻転生を信じている民族だとずっと思ってきましたが、お盆にご先祖様が帰ってくるという考えを持っている以上輪廻転生を完全に信じているというわけではない、ということを今回先生が授業でおっしゃって始めて気づきました。でも日本人はお盆のそういった面を信じると同時に前世や来世といった発想もやはりあるわけで、そこに注目すると日本人ってなんだか面白いなと思いました。でもそれ以上に、輪廻転生を完全に信じているインドの人々のものの見え方が興味深く感じられました。今もご先祖様は(解脱していなければ)何かの生物として生き続けている、ここにいる私達も前世は何かの生き物だった、という捉え方。インドの人々のそういった視点に私も試しにたってみたい、などと思いました。自分という人間がインドの人にとってどのように感じられるのか気になり、また同時にますますインドに興味が湧きました。（1年女子）
（日本人には日本人のエートスが，インド人にはインド人のエートスがあります．すごいのは，日本人のエートス形成にインドからの影響もあったということでしょう．）

高校のときに倫理で名前だけ出てきた“業”。行為という意味を指すのは知っていましたが、それが善業と悪業があり、善業をすれば来世ではよりよいカーストに生まれ変わることができ、また反対に悪業をなしてしまうと、来世では悪いカーストになるとは知りませんでした。また輪廻にも深くかかわっていたのですね。しかし、この倫理規範がる限り現実の差別を容認しているということはすこし悲しいです。それは、私が日本人であり日本人的な考え方を持っているからしかたのないことなのでしょうがね。
今も私たちに根付いている「宗教とは非理性的な人が信じるものだ」という考えが、まさか明治政府の元で成り立った考えとは知りませんでした。何か昔の人に今でも踊らされている気分になりました。（1年女子）
（早くその呪縛から抜け出しましょう．）

神がいないということは、無信仰というわけではなく、神がいない、と信じる信仰なんだと言われたことはなるほど、そうだなと納得しました。神がいるかいないかなんて誰にも証明できないんですよね。だったら神はいないなんて言えない。また、インド人の世界観には驚きました。神に近づけるよう、いい身分で生まれるように善い業をつむ。悪い業をするとはおちてしまう。そこからの解脱もある。なんだか不思議な世界観です。マザーテレサの話に驚きました。苦しんでいる人を助けているんだから、いいことをしているんじゃないかと当たり前に思っていたのに、身分が低いのは前世の業なんだから、現世であがわなくてはならないのに、助けてはその人のためにならないと言っている人がインド人の考えではあると聞いて、普通だったら・・なんて考えましたが、そこがインドの人の一般的な考え方なんですね。（1年女子）
（インドはいろいろな意味で興味深いでしょう? ）

人間臭い神様というのは不思議だったのですが、今日の講義で輪廻を教わり、かなり理解をすることができました。善業により人間が神になることができ、悪業により神が人間に落ちてしまう。だから、神は完璧に優れた存在というわけではないのですね。人間は富や権力をもつと、悪いことをしてしまうというイメージがありますが、人間のなかでも善業をするごとによい身分へと輪廻していくという考えがあるのならば、平和な世界が作れるように感じました。ただ、このように言うと問題があるかもしれませんが、善業というのは、よりよい輪廻のためだけに行うものだと意識されているのでしょうか。見返りを求める親切が本当に善業になるのか、というきれいごとを言うわけではありません。私は誰かに新切にするときは、たとえ無意識であったとしても少なからず見返りを求めているものだと思います。ですが、「見返りを期待する親切」とはっきりと言うのはついつい悪いイメージをもってしまいます。（キリスト教の考えでしょうか？）ですから、「自分の来世のために良いことをする」とはっきりと言っている考えはとても潔く感じました。（1年女子）
（そう，潔いですよね．たしかにインドには，「見返りを求める親切は本当の親切ではない」という考えもあるのですが，それは理想型といおうか，建て前といおうか，要するに一般のインド人にとって「地に足の着いた考え方」にはなっていないのです．）

輪廻、業の話を聞いて、インドの世界観に驚きました。悲しいかな私は宗教にあまり関心がなく、考えられない世界だと思ってしまいました。死後の世界はあってほしいと思うのですが、信じられません。寝た時と同じで無になるのだと思っています。でもこれも宗教のひとつなのですね。私のような考えの日本人は沢山いると思うけど、心に頼るものがない日本人は、ある意味カースト制のあるインドより可愛そうなのかなと思ってしまいます。（1年女子）
（可愛そう・可愛そうじゃない，という問題ではないかも知れませんが，少なくとも，自らの実存を宗教によって支えている人間を，「無宗教」という，何も生み出さない宗教を信じている人間が無闇に批判することは避けるべきだと考えます．）

日本では、人が死ぬことを「他界する」と言い換えることが出来ますが、「他界」とはsamsaraの概念からくるものなのでしょうか？それとも、ただこの世(現世)からいなくなるという意味だけを指しているのでしょうか？
『阿修羅』という言葉も「asura」と酷似していますが、これもインド由来なのですか？
今日、先生がおっしゃっていた「神はいないと、神の存在否定を証明することは出来ないし、存在証明も出来ない。神はいないということを信じている、つまり無宗教という宗教を信仰している」という言葉に深く納得しました。確かにその通りであると思います。第一回目の講義で指摘なさっていた通り、本当に人間は宗教なくしては生きていけないものなのだと再確認しました。（1年女子）
（「他界する」という場合，この世界とは別の世界があることが前提とされています．その別の世界が，輪廻世界であることもあれば，祖霊の世界であることもあります．阿修羅は asura の音写語です．）

業、輪廻、離脱がすごくわかりやすかったです。特に現世で善い行いをしていれば、来世では善い階級に生まれ変われる、悪い行いをすれば、一番下の地獄になってしまう、だから「悪いことをしたら、地獄に落ちるよ」と言われるという説明にすごく納得しました。そういえば、子供の頃、よく祖父母や両親に言われて、私はそれをすごく信じていた気がします。それに、私は神の存在を信じていて「自分の行いはいつも神様に見られていて、悪いことをすれば、必ず返ってくる」と思っているので、ある意味、私は「業・輪廻」の考え方なのだなぁと思いました。しかし、この業、輪廻、離脱の考え方は確かに生まれながらに階級が決まっているということで、いわゆる「差別を認める」という問題があることも知りました。
私の家はある神道を信仰していて「現世にいる間は修行の期間である」だから、私たちは死ぬのではなく、修行を終えて神様の元へいくという考え方です。だから、死ぬときは神様が「お前は今までよく頑張ったから、そろそろこちらへおいで」という意味だと聞きました。だから、輪廻の考え方とはまた違うけれど、興味があります。私は今まで宗教にはほとんど興味がなかったけれど、今日の話を聞いたり、自分の家の話を聞いたりして興味がわいてきました。次回の仏教もすごく楽しみです。（1年女子）
（お家の宗教を大切にしてください :-) ）

無宗教や死後の世界を持たない日本は世界的に見て珍しいというのが驚きとともに納得もしました。NHKの番組で日本に来た外国人にベテランガイドが京都のお寺を案内したときにある外国人の一人が僕のところではその宗教に入らないとお祈りはしたらだめだけど日本では入らなくてもいいの？という質問に対し、日本は八百万の神がいて心が寛大だから大丈夫。だれかひとつの神様があなたの願いを聞いてくれますよと説明していました。外国から見れば確かに不思議なのかもしれません。先生のおっしゃるとおり私自身明治の政策にはまっていました。仏教神道はいい感じがするけど、他の宗教はなんだか惑わされる気がして日本で教会や宗教系の学校を見たり聞いたりすると何て言っていいのかわかりませんがあまり盛んに関わろうとは思いませんでした。（宗教系の学校を批判しているわけではないですが）だからインドは全体がそういう心の支えというか規範みたいなのを持っていてすごいと思いました。私もそういう一生のものを何か見つけたいと思いました（1年女子）
（人間には（広い意味で）何らかの“宗教”が必要です．日頃からきちんとした宗教を信じていないと，その間隙を縫ってオウムなどのカルトが忍び寄ってきます．）

先生の講義を受けることは、異文化を理解するための能力を養っていると同時に、人として相手を本当に理解するための能力を身につけているような気がします。私も、先生の今日の講義を聞くまでは、自分は無宗教だと思っていました。しかし、本当は死後の世界があることを信じたいという宗教を持っている事に気づきました。マザー・テレサの話を聞いて、人それぞれの考え方があり、自分が正しいと思っている事でも他の人から見れば、間違った行為に見えることもあるという事が、こんなにも複雑だなんて思いませんでした。人間と人間の関わり合いはそう簡単ではないものだと感じました。しかし、文化の違いを理解し受け止めることによって、そこから少しでも近づけたらいいなと思いました。（1年女子）
（人間は他者（他人・世界）と関わらずに生きてはいけないし，関わりを本来的に喜ぶようにできています．もし今，関わりを喜ぶことができないなら，何かを変える必要があるかも知れません．もし，もっと楽に生きたいと思うのであれば．）

【総評】自分では「善いことをしている」と思っても，それがこちらの価値観の押しつけに過ぎないこともあります．また，その逆もありえます．だから私たちはお互い「ことばを鍛えていく」必要があると思うのです．自分の価値観を相手に説明し，相手の価値観を説明させ，さらにお互いの価値観や発想が何に由来しているのかを考え話しあって，落ち着く先を見つけだす必要があります．それが一方的な譲歩であっては決してなりません．お互いに納得いく落ち着き先を見つけだす力，それが「鍛えられたことばの力」です．（鈴木隆泰）

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