6月22日
エリック・カールの世界
A:“はらぺこあおむし”知ってる人〜?
(4〜5人挙手)
この作品は、カラフルで、穴があいていたりと仕掛けがあるんだよね。
次に、“ごちゃまぜカメレオン”知ってる人〜?
(2〜3人挙手)
B:絵がかわいい〜!クレヨンで描かれてるね。
A:これは、カメレオンが動物園に行って、出会った動物に真似ていくんだよ。最初はしろクマ、次はフラミンゴ、キツネ、サカナ、シカ、キリン、カメ、ゾウ、アザラシ、そして最後に人間。得体のしれない不思議な体になってしまったカメレオンは、お腹ペコペコなのに舌を出すことも出来ず、結局、元の姿に戻ったのでした…というお話。
E:何かすごいね。人間にまで換わるなんて…。
G:この変身していくページ見て!めくるとその動物の絵があるし、最後になると全部が見えるようになってる。
D:本当だぁ〜!すご〜い!
A:仕掛けがおもしろいでしょ?本当に凝ってるんだよねぇ。それじゃぁ、ここでエリック・カールについて話したいと思います。
彼は、グラヒィック・デザイナーでした。ドイツで教育を受け、23歳のときにアメリカに帰ってきて、多くのアーティストに影響を与えました。初めは有名なコマーシャルアーティストとして、それからイモムシ(はらぺこあおむし)同様に変身して、輝くような優しさと、詩的な洞察力と、卓越した絵画力を持つ絵本の作者として芽を出しました。
第一作目:Brown Bear, Brown Bear, What DoYou See?
(くまさん くまさん なにみているの?)
第二作目:1.2.3 To The Zoo (1.2.3 どうぶつえんへ)
第三作目:The Very Hungry Caterpillar (はらぺこあおむし)
→当時は、絵本=書物の概念があったためなかなか受け入れられなかったが、後にこの第三作目がスペインで話題になり、有名になった。
一世代前に、マーガレット・ブラウンさんという人がいました。謎解きゲームのような内容や、触ったりなでたりして楽しむ構成など、判じ絵を用いた絵本を作っていました。この人は、初め、評論家ではなく実際読んだ人に好評で、その後に公において高く評価されるようになりました。
それでは、ここで“ごきげんななめのてんとうむし”をみなさんの前で読みたいと思います。
「よる ほたるが おつきさまの あかりで おどっていました。あさ 5じ おひさまが のぼってきました。 左のほうから、てんとうむしが 1ぴき とんできました。これは きげんのよい てんとうむし。ありまきを みつけて あさごはんです。右のほうから てんとうむしが もう1ぴき。こちらは ごきげんななめの てんとうむし。ありまきを みつけて、あさごはんにしようと おもいました。…………ゆうがた 6じ ごきげんななめの てんとうむしが ついたところは、もとのはっぱでした。きげんのよい てんとうむしが いいました。“きみ、ばんごはん まだだろ?ありまきが すこし のこっているよ。”“あ、ありがとう。”ふらふらで はらぺこの てんとうむしが いいました。 はっぱに ありまきが いっぴきも いなくなりました。“どうも ありがとう。”はっぱが てんとうむしに いいました。“どういたしまして。”2ひきの てんとうむしは、そのはっぱの かげで ねむりました。ひるま ねていた ほたるが、おつきさまの あかりで、また おどりはじめました。」それでは、みなさんに感想を聞きたいと思います。
B:ハイエナの顔が印象的だった〜。あと、クジラの平手打ちがすごい!
J:時間のながれがとってもわかりやすいね。
C:エリック・カールだなって感じ。めくるうちに最終的に…みたいなところが。
A:動物に比例して字も大きくなってるんだよ。だから、読んでる側も自然と声の大きさがかわるの。
J:へぇ〜すごい!
D:太陽が時間のながれに沿って上って沈むのや、言葉の使い方が楽しい。あと、さいごのはっぱのありがとうっていうセリフがいい!
A:これは、なぜはっぱがてんとうむしに「ありがとう」っていうのかの理由が書いてあるの。予め、そういった説明もかかせないんだよね。
D:へぇ〜!!!
E:何か、内容が見え見えの分、後の楽しみが膨らむ。あと、どの絵も塗り絵じゃなく、こっている。
A:これは、特殊な技法(コラージュ)を使っているんだよ。ティッシュペーパーに絵の具をつけて乾かして色を重ねたり、じゅうたんで模様をつけたりして出来上がったものを切り取る貼り絵のような感じ。
E:奥が深いね〜。
F:この話、かわいいね。
A:エリック・カールの訳は、もり・ひさしさんがほとんどだけど、訳す人によって全然違うんだよ。
G:生き物がたくさん色々な種類が出てきてすごい!子供が飽きなそう。この人の本は、動物が多いよね。
H:めくっていくごとに期待が膨らむ。それに、水面に物体のいろを少し入れたりして、こっているな〜と思った。
A:あ〜本当だぁ!気づかなかった!
D:本の大きさはかわらないのに、クジラになったら本当に大きい!!っていうくらい迫力がある。
E:見ていて、想像したくなる。
A:“ことりをすきになった山”〜朗読
この作品は私のお勧め!絵本で泣いたのは初めてっていうくらい感動するよ。
H:“パパ、お月さまとって!”これはおもしろいよね。
A:〜朗読
“巨人にきをつけろ!”“パンケーキをやこう!”“パン屋のウォルターさん”“ぼくのねこ みなかった?”“たんじょうびのふしぎなてがみ”←親からの手紙(暗号)で探検してプレゼントを探す。“ちいさいたね”“Dou you want to be my friend?”←一匹のネズミが友達を探し歩く。“だんまり こおろぎ”←音のでない一匹のコオロギは、あいさつをしたいのに出来ず、最後にコオロギに出会って音がでるようになる。このとき、仕掛けとして、実際にめくったと同時に音がなるようになっている。
現在、エリック・カールは73歳。最近の作品としては、“うたがみえる きこえるよ”
《編集後記》
エリック・カールの絵本には、何か必ず仕掛けがあり、子供に興味を湧かせ、楽しませる。あっと驚くような素晴らしい色使い、模様のセンスは、私たち読む側を飽きさせない。そして、何といってもこのストーリー性。見え見えのようでいて、後の期待を膨らまし、想像を活気立てられる。読む側それぞれの解釈の仕方が生まれる。このような素晴らしい絵本に囲まれて育った人は、本当に羨ましい。私たちは、自分の子供、孫…にも伝えていきたいものだ。いや、伝えていこう!!
『はらぺこあおむし』は子供たちにも読み聞かせてきましたが,作者のエリック・カール氏についてはこれまで特に関心を払ったことがありませんでした.議題として取り上げてもらったおかげで新たな知見や発見を得ることができ,感謝しています.
絵本の子供たちに与える影響は本当に大きいと思います.皆さんも将来,親になる機会があれば,是非読み聞かせてあげて下さい.書記さんも書いているように,親に読んでもらった本を,今度は自分が自分の子供に読んであげる,それって凄く貴重なことではないでしょうか.
(鈴木隆泰)