宗教文化研究（仏教文化） 2004/12/10 No. 11

12/10 授業の感想11号と回答

感想11号（総数 66）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

今回より舞台を日本に移し，日本における仏教の展開を見ていきます．

日本人のエートスである、きちんと祀れば善神になるというのは今まで仏教の考え方だと思っていました。でも輪廻や解脱のことを踏まえてよく考えれば、それは、仏教の教えではなく日本人のエートスだったのだと納得がいきました。また、崇仏派の蘇我氏と排仏派の物部氏との争いや、その後の蘇我氏によるクーデター、それにつづいて天皇家のクーデターと、いつの時代でも宗教が絡んだ争いは絶えないのだなと思いました。（4年女子）
（下線部：誤解のないようにお願いしたいのですが，彼らの争いはあくまで権力争いであって，宗教は「添え物」程度に過ぎません．）

日本では、仏教は政治とセットになって広められたのだなと知りました。純粋に、宗教として仏教が広まったのではなく、例えば大仏建立にしても意図があったということにおどろきました。仏教に限らず、宗教は人の心を左右する力を持つので、使い方しだいで社会も動かしてしまうのだなと、思いました。
　それから、靖国問題を日本の宗教観で考えることにはとても納得しました。その説明なら、反発する外国の人々にも少しは事情を理解してもらえるような気がします。（3年女子）
（問題なのは，靖国を公式参拝している人たちは「選挙のために」行っていることです．彼らは票取りのために靖国神社を利用しているのです．それこそ祀られている御霊に対する冒涜なのではないでしょうか．）

聖徳太子はアショーカ王みたいだと思いました。和というのは私も大好きな言葉です。日本人は「和」という言葉があるから誰とでも仲良くしようとするのではないかと思います。悪く言えば八方美人で自分のあまり意見を主張しない。しかし、ある程度の譲歩は必要だと思います。争うか妥協するか、その目的にもよります。人々が自分の思うこと意外を認めなくなったら、派閥やグループができて闘争がたえなくなると思います。（2年女子）
（えーとですね，あなたはきちんと講義を聴いていましたか? 聖徳太子の「和」は，「話し合いによって決めたことは正しい」という日本人のエートスに基づく考え方ですよ．）

仏教は仏教でも今までならったインドにおけるものと日本での仏教では違うんだなあと思いました。仏教は日本に計り知れないくらい大きな影響を与えたんだと思いました。もし仏教が日本に伝わっていなければ死者をまつって守り神とする文化も生まれなかっただろうし、現在日本にある多くの神社や寺は存在しなかったでしょう。そう考えると仏教は日本の文化を形成してきた過程で土台といえるのではないかと思いました。毎回の授業を重ねるごとに今までの仏教に抱いていたイメージが変わって仏教は偉大な宗教なんだなあと思うようになりました。（2年女子）
（確かに，仏教は日本文化の形成に大きな働きをしましたが，下線部は誤りです．「死者をきちんと祀れば守り神に，祀らなければ祟り神に」というのは，日本人のエートスに基づきます．）

日本の天皇は仏教を通して自分を崇拝というか、権力のあるものとして認めさせようとしたのですか？（2年女子）
（質問の意図が分かりにくいのですが，天皇家はシャーマンの家系で，かつ，氏族社会のトップに立っていたわけですから，元来崇拝される存在であり，権力者でもありました．仏教はそれを後から助力したのか，という意味での質問なら，答えはイエスです．）

会議が多いと感じていたのでとても納得しました。昔からある日本のエートスが影響受けていることはすごく驚いています。（2年女子）
（払拭したいエートスです (-_-) ）

現代の日本人は、宗教の元となった昔からの素朴な自然崇拝を忘れているのではないかなあと思いました。私も含めてですが、生活が豊かになるにつれて宗教の意味の取り方とかもどんどん変わってきて今多くの人が抱いているような「怖い」とか「怪しい」などというイメージがう植え付けられていったように思います。宗教というものが人々の都合のいいように使われていくのはとても残念です。（2年女子）
（だからこそ，私たちは宗教についてきちんと学んでおく必要があります．日本人は宗教に対してナイーブ（←本来の意味で）過ぎます．）

死後の世界はすごく興味がある。小さい頃から死んだらどうなるんだろうとよく考えていた。けど、こればかりは死なないと分からないので、どんなに頭のいい人が考えても答えは出ない。本当に天国や地獄ってあるのだろうか？まだまだ長生きしたいが、それを知るために１度死んでみたい気もする。（2年男子）
（どうせいつかは死ぬのですから，その時まで楽しみに取っておきましょうよ．）

人々の暮らす土地や環境が人を育てている、影響を与えているというのを聞き和辻哲郎氏の『風土』が頭に浮かびました。また、靖国神社参拝の問題のことについても先生は言っていらっしゃいましたが、そこには日本人の根底にある宗教観念が根付いているのだなと感じるとともに、某前首相の「神の国」がパッと頭に浮かびました。（2年女子）
（体験（個人的なもの）とことば（社会的なもの）の違いが分からないような人を，この講義の引き合いに出さないで欲しかったす．あの方のこれまでの言動を見る限り，彼はものごとを相対化する能力に長けているとは到底思えず，自分の体験・思想が万人に通じると思い込んでいる節があります．サンスカーラの無常性を教えるのが，この講義のテーマです．）

今回は日本の歴史をかねた仏教に関する事柄を聞かせていただき大変興味深かったです。日本人であるなら知っておくべきことばかりだったような気がします。また日本誕生の由縁は天皇が天降りたところから始まると聞かせていただきましたが他の国とは異なるこの事柄が外国の人々を日本を神秘的というイメージにさせる一つの原因なのでしょうか。（3年女子）
（どの国も，その国固有の歴史・文化を持っています．日本が神秘的なのは，欧米人にとってこの日本が極東という「僻地」にあるからです．また，「外国の人々」を無条件に欧米人と結びつけるのも慎むべきだと思います．）

自然崇拝の精神は、自然が恵みをもたらしてくれる日本においてだからこそ生まれる思想なのだと改めて思いました。私たち日本人は確かに「自然」という言葉を聞くと、豊かで優しい風景を想像しがちです。しかし、一神教の故郷で「自然」と聞いて、萌える緑の大地や静かに流れる川のせせらぎなどは想像できないでしょう。根無し草で蓮華になれなかった仏教ですが、だからこそ様々な土地で処方箋となることができたのだとわかりました。（2年女子）
（下線部：「日本においてだからこそ」の部分は，誤解を招きやすい表現です．自然が恵みをもたらしてくれることによって自然崇拝の精神が育まれたところは，日本に限りません．）

日本人の宗教観からすると仏教はうってつけのものだったと知って、仏教がなぜ多くの日本人に受けいれられることになったのかがよくわかった。地域と結びついた宗教が入ってきたことによって、国家は民衆を統制しやすくなったのだろうなと思った。（2年女子）
（授業のポイントとずれています．仏教は特定の地域とは結びついていません．だかこそ「世界宗教」となったのです．）

私の通っていた保育園の園長先生はお坊さんでした。みんな４歳になると敷地内のお寺に呼ばれてお経をきいて自分のお数珠をもらいました。いまはお坊さんになるのにはどんな資格みたいなものがあるのですか？（2年女子）
（今も昔も，お坊さんになるには受戒しなければなりません．これを「得度」と呼びます．得度をした人がお坊さんです．）

土地が人を育てるため、土地によって自然への考え方などが違っていても問題はないと聞いてなるほどと思いました。それよりも個人の信仰の仕方や宗教のあり方などに固執するほうが問題と聞いて納得しました。（2年女子）
（個人にとって宗教が「絶対」のものであったとしても，「他人の宗教」の存在を前提にするときには，どうしても「相対化」しなければなりません．それができなければ，コミュニケーション（他者との交流）などできるはずがありません．）

仏教は確か不殺生~~無殺生~~といわれているのに、日本の仏教は殺し合いで始まっていたということに驚きました。蘇我氏は崇仏派であるから、無殺生でなければならなかったのではないのだろうかと思いました。（2年女子）
（「不殺生」は仏教の教義の一つであって，蓮華に例えれば「花」の部分なのです．仏教が日本できちんと蓮華になっていないときには，当然花も正しく咲きません．）

仏教は自分たちの氏神を強くするための魔法だとされていたとは初めて知った。敵さえも奉って見方につけるという話を聞いて、自分がもしその時代に生きていて敵を殺したらと考えてみた。私だったら敵であってもその命を奪ったと言う罪悪感と敵の魂への恐れ、たたりへの恐れを感じると思った。敵だからこそしっかり奉らなくてはならないと感じるだろう。日本人は人だけでなく、いろんなものに魂が宿ると考えてきた。私たちの中には魂の力に対する恐れがあるように思う。自然の恵みへの感謝があるからそれを失うことへの恐れも強く、様々なものへの供養の方法を求めていた気持ちが現代の自分にもよくわかる気がする。やはり私も日本人だなと感じる。私は人生で大事な時、勝負の時には死んだ祖母のことを思い出す。そして祖母が守ってくれるという気持ちが自然に湧いてくる。祖母は私の中で守り神になっていると私も信じているということを今回の講義で確認できた。（2年女子）
（足元をしっかりと見つめ，固めた上で，広い世界へはばたいていきましょう．）

今回の授業は日本のことが中心となっていて、わかりやすかったです。それまでの日本の他界観があった上で、仏教が「死者を祀る良い方法」として日本に受け入れられた、ということがなるほど、と思いました。また、宗教が政治に利用されるという構図が良く分かりました。当時、日本が他国（特に中国）との交流を持ち、高度な文化を自国に移入するときの付属物だったり、もっと積極的な意味では文化移入の触媒としての役割も果たしていたのだなあ、と感心しました。当時の日本が文化水準を高め、国際的に認められるために仏教は重要な役割を果たしていたことが分かりました。（2年女子）
（日本の歴史・文化を理解するためにも，仏教に関する正しい知識は欠かせません．）

今回の講義で、日本における仏教伝来と普及の経緯を理解することができました。今までは、十七条憲法における「和」という言葉は仏教的思想からきていると考えていましたが、今回の講義でそうではないということを知り、驚きました。また、「話し合ったという事実が大事である」という思想は、現代の日本人にも受け継がれていると思いました。（4年男子）
（日本人のエートスですからね．）

毎回の講義で仏教の魅力が自分なりにわかってきています。今日ふと疑問に思ったんですけど、女性の修行僧っているんですか？瀬戸内寂聴さんしか思いつきません。（4年女子）
（インドの仏教僧には，男性（比丘）と女性（比丘尼）がありました．息子を亡くしたゴータミーも比丘尼になっています．日本でも尼僧は少なくないですよ．親鸞の奥さんも尼僧でしたし，私の母もそうです．）

日本人の考えの基礎となる部分に仏教が深くかかわっているということは、今まであまり意識していなかったので再認識する部分が多かったです。最近は「だからそうだったのか…。」と、授業中に納得することが多々あります。日本と仏教の昔からのかかわりを知ることによって「日本人」そのものについて考えることができるので仏教について知ることはとても楽しいし、必要なことだと思います。（2年女子）
（ (^^) ）

私は今回の講義でどうして日本に仏教が根付いたのかが改めてよくわかったような気がします。日本人の宗教観は確かに素朴な自然崇拝だと思いました。例えば、木を切りすぎたら木の神様が怒るだとか、八百万の神様だとか、日本人は本当に自然を大切にする心を昔からもっていたように思います。そして、日本人は死後の魂を大切にする意識は強いと思います。お葬式が終わっても何回忌も法事をします。そしてきちんと祀れば善神に、ほっぽっとくと、悪神になるというのは、日本人のエートスです。そのような日本人の願いをかなえてくれる、日本人のエートスにぴったりなのは、仏教なんだと思いました。（2年女子）
（インド・中国といった文化先進国で生まれ育まれた仏教は，御霊を祀る最強のマジックだったのです．）

日本人の他界観ですが、私は必ず法事には出席するし、お盆には墓参りに行くので、先祖の魂はちゃんとよい神となり私を守ってくれるかなと思いました。（2年女子）
（それはもうバッチリですよ :-) ）

今まで日本史の中でしか仏教について学ぶ機会がなかったため、今までの自分の認識との違いに毎回驚かされます。そして、それがおもしろくもあります。残りの授業回数も後わずかとなり、レポートのことが少し心配ですが、授業を一生懸命聞いて頑張りたいです。（2年女子）
（心配なら，何でも質問にいらっしゃい．）

仏教の理想のあり方が北伝の終着点の日本で実現していたのは驚きでした。最初伝わったときは権力争いの道具にされてしなったけれど、その後理想の形で根付くことができたのは日本独特の宗教観があったからだということもはじめて知りました。単純にいつ伝わったが重要なのではなく、どのように日本の社会の中に取りいれられてかが重要なんだなと思いました。（2年女子）
（その通り :-) ）

日本人が話し合い好きというのが、こんなにも昔からのことであったということに驚きました。こんなに長い年月がたったのにこの要素がかわっていないんて筋金入りだと思いました。出雲大社の元の形を見てみたかったと思いました。天武天皇の時に仏教の独り占めをしたということで、これも仏教が仏教の力を全然発揮できていない状態だと思いました。（2年女子）
（NHK が CG で再現していました．）

いままで、靖国神社問題について深く考えたこともなかったし、葬式や、祀るってことに対しても深く考えたこともありませんでした。でも、祀ることによって悪い人でも善神になって私たちを守ってくれているということをしりました。韓国の人や、中国の人からにしたら、ほかの国の宗教に対して興味がないかもしれないけど、宗教も文化なので、いまの国際化のなかで、日本の宗教観念についてもっと知ってほしいです。文化や宗教で済まされないことかもしれないけど、少しは考えていってほしいですね！（2年女子）
（そろそろ本当の意味で「国際交流」したいものです．）

今回の講義でやった日本人の宗教観がとても面白かったです！昔からの日常的な行動に日本人の宗教観が現れていると感じ、気づかないだけで、独特の信仰が日本には存在しているんだと思いました。（2年女子）
（「日本人は無宗教だ」なんて嘘です．）

今回の講義は日本人にとっての仏教というものを学んだように思えます。日本とインドの気候はともに温暖で農耕文化が発達していた国です。それによる自然崇拝がベースとなったのは知っていました。しかし今回の講義でそんな日本とインドでもエートスに違いがあることがわかりました。大乗仏教が根付くにはそれほど民衆と仏教が近くないと成り立ちません。　仏教が入ってきても、日本人の祖先を重んじる氏族社会を基本に、手段としての仏教であったというのが非常に面白かったです。それほど日本人の根幹には氏神の存在があり、それこそが日本人を日本人たらしめているもののように思えます。祭りひとつとってみても、民俗宗教が一番に日本人の宗教観を物語っているように思えました。それはインドでも同じだと思いました。（2年女子）
（仏教の教えは常に「リンゴに向かうための手段」「健康になるための処方箋」です :-) ）

人間という生き物は、生活している土地の自然や環境によって大きく変化するものであり、国や地域それぞれでその思想は全く異なる。日本人の根底には、「自然＝恵み」という流れが根付いていることから、土地が人間を育み、その人間が宗教を生むのであるというプロセスを改めて実感することが出来た。仏教は、日本のような宗教観・世界観の上にでも根付き、否定することなくそのエートスに乗っかることが出来た。そのように日本の世界観と融合できたのは、「処方箋がそれぞれで違っていても構わない」という仏教本来の教えがあったからこそであると理解できた。（2年男子）
（日本に入っていた全ての宗教が「日本的に変質していく」中，仏教は「変質」の影響を受けません．「人それぞれに違う処方箋」こそ，仏教の本質だからです．）

今回の講義を受講して、「もののけ姫」を思い出しました。　　せっかく、日本にはしかっりとした良い泥（根底部）があって、本来の仏教花を咲かせることが出来るのに、権力者達が仏教を利用・独り占めするのはもったいないなあと感じました。しかし、その仏教花が開花するのは、鎌倉以降ということを前回おっしゃっていたので、どのように日本で仏教が生きていったのかを見るのが楽しみです。そして、なぜ、その開花した仏教が、現在の姿（存在？）になっていったのかを知りたいと思います。（2年女子）
（楽しみに待っていてください．）

小学生の下校時に友達とネコの死体があったので、「ちゃんとお墓作らないと、呪われる」と言ってお墓を作っていました。今日の講義を聴いて、あの頃は死体を見て恐かったという思いでお墓を作っていましたが、日本人の宗教観に基づいたものだったんだと思いました。宗教なんて信じていないと思っていましたが、今まで私が考えていた宗教とはキリスト教などのような教義がきちんとあって、神様もいて、というものだったと思います。でも、日常生活で宗教だと意識せずに行っていることや話していることの中には日本人の宗教観に基づいたものが多いのかな、と思いました。鎮護国家など、日本史で学びましたが、鑑真などが日本政府に保護されていたことも仏教の独り占めの奨励の部分を聴いて納得することが出来ました。
　質問なのですが、その当時、お坊さんになっていた人達というのは、天皇家に関わりがあったり、中央政府と密接な関係があったエリートのような人達なのですか？また、自分たちの意思でお坊さんになったのか、政府の要請のようなものがあってお坊さんになっていたのでしょうか？（2年女子）
（何らかのかたちで権力と結びついていた人たちが多かったです．彼らは「高級官僚たる国家公務員」である僧侶を目指して，自ら望んで出家していきました．）

日本に伝わった仏教のはじめの姿を今回は見ることができました。仏教の持つ雰囲気が、インドのそれとは違っているように感じます。それは、その地に住む人々、そこの文化のありようが異なるからであり、仏教もまたその地に合うようにかたどられるからなのだろうと思います。仏教の教えが南に、チベットに、北に伝わり、各地の文化の中で受け入れられ、それぞれの発展を遂げた。それが「根付く」ということなのだと思っています。日本の歴史的な信仰として、仏教とアニミズム信仰を私は真っ先に思い浮かべます。この二つは、明確に区別し辛い印象があります。以前に、かつての政府（平安か鎌倉の頃だったと思います）が仏教発展を目指し、日本古来のカミガミに仏を照らし合わせたと聞いたことがあります。こうした歴史は非常に興味深いです。両者がそれぞれを批判する性質のものではなく、うまく共生した中に、日本人の宗教観はあるのではないでしょうか。日本人の持つ意識･思想のどの部分に仏教が生き、土着の信仰が生きているのか。考えるととても面白い問題だろうと思いました。今回の講義では、仏教がどのように日本の土地・思想に受け入れられたかは知ることができましたが、先生が「花開く」と仰った~~いった~~、民衆への教えの深化は、さあこれからだという段階でしょう。いわば政策として受け入れられた（といえるでしょうか？）仏教がどのように民衆への歩みをたどるのか、今後見て行きたいと思います。（2年男子）
（下線部：これを「仏教フロシキ論」と呼びます．フロシキは中に入れるものによって自在にかたちが変わるからです．）

日頃は私の中に眠る日本人としての宗教観や他界観を意識することはないけれど、今日のお話を聞いて客観的に見つめ直せたのでよかったと思います。宗教は人間の作ったものだという感覚をすごくつかめました。宗教ってやはり人間臭いですね。宗教観はその国の自然環境などの諸事情により、違っていて当然です。その当たり前のことが当たり前になっていないため、多くの誤解が生じ、争いが絶えないのだと思いました。すべての宗教観を受け入れる・・・それは大乗仏教の考え方であり、やはり平和の原型だと思います。
　インドや中国からやって来た時は根無し蓮華だったけど、時間がかかる分、根付きだしたらすごく丈夫な花になる思います。しかし、宗教は人々が信仰し伝えていくものであるため、その時代や土地によってどんどん変化していくものです。根は同じだが花が違う。しかし、どの花も丈夫である・・・それが日本仏教の素晴らしい所だと思いました。（2年女子）
（おお，グレイトな感想です (^^)
　下線部：より厳密に言うならば，全ての宗教観を否定しないのが仏教本来の考え方であり，大乗はそれをきちんと踏襲しているのです．）

今回の講義では、日本における仏教について学びました。日本人の宗教観は素朴な自然崇拝である。この「素朴」ということばは「低級」とは違います。教義的でない、ということです。確かに、日本には四季に代表される豊かな自然があります。リービ英雄さんのお書きになった文章の中に、「カリフォルニアの大学で『枕草子』を教えていた時、学生は冒頭からぴんときていなかった。カリフォルニアは一年を通してほとんど雨も降らず、四季もない。そんな中で春は曙と言われても学生は困るだけだったであろう」という趣旨のものがあり、大変印象に残っていました。気候や風土が人間を育てます。違っていても不思議ではないし、それが当然です。大切なのは、その違いを認め、肯定することです。日本やインドのような豊かな自然を持つ地域で生まれた宗教と、砂漠で生まれた宗教とでは違って当然です。そう言えば、「これからは人間が宇宙へ飛び出す時代だ。その時、宇宙空間ではどんな宗教が生まれるのだろう。恐らく、過酷な状況下に置かれるのは間違いないから、一神教へと進むに違いない」と書いていた本も読んだ記憶があります。
　日本人のエートスについても学びました。死者の魂はきちんと祀らなければならない。きちんと祀れば守り神になる。逆に放っておくとたたり神になってしまう。このような日本人の他界観から、少し違うかもしれませんが私は将棋とチェスの違いを連想しました。将棋とチェスの一番大きな違いは、やはり取った駒をもう一度使うか、使わないかということだと思います。チェスは使わないので、終盤は駒数が当然少なくなります。将棋はどんどん「再利用」することが可能なので、駒数は減りません。最初は敵だったのに味方として使う、というのは日本人的でおもしろいように思います。もちろん王様は使えませんし、宗教とは直接関係ないようにも感じます。そのような日本人のエートスの上に乗っかる形で仏教は入ってきます。死者を祀るための新しいマジック、強力な魔法です。日本の仏教は元々あった日本人の宗教観を否定して入ったのではなく、その上にきちんと乗って見事な蓮華となりました。蘇我氏と物部氏の争い、聖徳太子の取り組みなどについても学びました。平安仏教、鎌倉仏教についても興味があります。日本の歴史を高校までの政治の視点からだけではなく、宗教文化の視点から新しく学び直したいです。（2年男子）
（仏教は日本の歴史・文化を貫く「背骨」の一つです．是非学んでいってください．）

今回の授業では政治に宗教が利用される背景が垣間見えたように思えました。記憶が確かなら、昔読んだ小学生向けあたりの歴史漫画に載っている仏教と政治の描かれ方は、民衆のために仏教の力にすがり、政治をよりよくしていこうとした、というものでした。
　しかしながら、実際には統制が厳しく、政治に仏教が掌握されていたと伺い、欧州に顕著に見られる傾向と同じように、日本でも宗教は為政者のために取り入れられたという感が否めませんでした。いかに素晴らしい教えであろうと、違う国に持ち込んだとき為政者にとって不都合なものなら弾圧され、都合のよいものは利用されるという構図は結局どこでも同じだと感じました。
　氏神の話も非常にわかりやすく、祀れば善神、ほっとけば祟りという二項対立構図となります。そしてそのわかりやすさゆえに祖先に対する手篤い供養、祟りの忌避が現代も日本各地に残っているのではないかと思います。
　最後に聖徳太子の「世間虚仮唯仏是真」という言葉についてですが、前半の世間虚仮は人々（聖徳太子を含む）がサンスカーラを通して世界を見ているということ（換言すればサンスカーラを排せないこと）、後半の唯仏是真とは、ただ一つブッダの見た世界こそがサンスカーラを排した本当の世界の姿であるということを指していると解釈してよいのでしょうか？とりあえず聖徳太子がサンスカーラを排して世界を見ていなかったということは唯仏是真の意訳を取ることで明白です。私は聖徳太子のこの言葉は「唯仏是真」の部分で暗にブッダの遺言である「諸行無常である。サンスカーラの無軌道な発動を抑えブッダを目指せ」という言葉を意識したものだと考えました。「世間虚仮唯仏是真」というこの言葉に聖徳太子の仏教に対する理解が表れているように思いました。（2年男子）
（あなたの意見に私も賛成です．「サンスカーラの無常性（＝諸行無常）」に則れば，聖徳太子の言葉はあなたの捉えた意味で理解するのが，最も相応しいと思います．）

【総評】日本仏教を仏教の教理面（＝蓮華の花の部分）から見る研究が多いですが，それが花を結ぶに至った日本固有のエートス（＝根や茎の部分）を無視することはできません．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

suzuki AT ypu.jp