アジア文化論 II 2004/11/16 No. 2

11/16 授業の感想2号の評価

感想2号（総数 47）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

東南アジアでは，三大世界宗教のキリスト教・イスラーム教・仏教が，いずれも大きな勢力を持って存在しています．今回は宗教の持つマイナス面の一例として「原理主義」を取り上げました．

今回の授業を受け、自分の原理主義というものきちんと理解できていなっかったということに気付きました。今まではただ攻撃的な宗教の集団という程度の認識しかありませんでした。現在も状況が悪化しているイラク戦争での報道でも、イスラーム原理主義の関連の話でも、原理主義の説明はなく、戦闘の場面を流すため、武装集団、過激派の印象が強いのだと思います。きちんとした宗教や原理主義の知識や理解がなければ、いつまでも戦争は終わらないと思います。今回の戦争も、結局は、アメリカ(ブッシュ大統領)の価値観を武力で押しつけようとしているだけで、つつけばつつくほど悪化していくばかりだと思います。授業で、先生がおっしゃていた宗教的な作戦を実際に行えば効果があるのではとおもいました。（4年男子）
（戦争遂行者にとって，武力以外の方策に効果があってはマズイのです．武器商人（＝死の商人）が儲けられなくなってしまうからです．）

「原理主義」という言葉は、昔から宗教を勉強するうえでは、よく聞いた言葉だったけど、その具体的な意味はきちんとは知らなかったので今回、すごく勉強になりました。宗教を信仰することによって救われる人もたくさんいるとは思うけど、一例だとはいえ、最近起きたような宗教対立のもつれからくるテロで罪のない人々がたくさん殺されているのを見ると、個人的に私は宗教に良いイメージはもてません。でも現代社会を知るうえで、東南アジアの宗教に限らず、宗教について知ることはとても大事なことだとは思うのでこれからも耳を傾けていきたいと思います。（3年女子）
（下線部：残念です (-_-) ）

「アメリカがモスクを壊すから原理主義でないムスリムも過激になっていく。」その通りだと思いました。誰でも自分の家、土地を壊されたり家族を殺されたら相手に対して憎悪感を抱くに決まっている。それと同じで自分達の神聖な信仰所を壊されて黙っている人はいない。アメリカもキリスト像や教会を壊されたらと自分の身になって考えたら分かる事で、今回のイラク戦争はそんな目的ではなかったはずだ。原理主義者が外国人を拘束したりテロをしたり過激な行動をするのは決して良い事だとは言えないが、彼らがどうしてそこまでしたのか、背景をもっと考えるべきだと思いました。（2年女子）
（原理主義者たちに口実を与えてはいけないのです．）

自分とは違う考えの人を認めないということはとても恐ろしいことです。認めないだけで攻撃しないのならましです。しかし、否定が憎しみに変わったときが恐ろしいのです。私たちは自分が幸せな時、憎しみや怒りをわすれます。何か自分や親しい人の身に不幸がおこったり、納得のいかない事があったとき、そのような感情が発生します。アメリカの攻撃は「悪」に対する怒り（正義感）などではありません。経済的に豊かな国で自分たちの好き事を好きなだけしているような国に本物の怒りや憎しみは生じ得ないのです。反対にテロは怒りそのものです。怒りにはその元となった原因があります。簡単に正当化出来るものではありませんが、許すべきは、金欲から行う大量虐殺よりも、家族を殺された悲しみや苦しみから生じた怒りや憎しみのために行われているテロではないでしょうか。欲と怒りは人を狂わせます。米軍が高揚してイラク人を殺したことを自慢げに語っているのをテレビで見るとぞっとします。イラク人が何の見境もなく人間の首を切ったりするのを見ても恐ろしいです。何のために人を殺しているのか分かっているのか分かっていないのか。私はテロに屈しないことよりもアメリカの経済力に伴う権力に屈しない努力が大切だと思う。（2年女子）
（「テロとの闘い」「アメリカ帝国主義との闘い」とは言っても，所詮どちらも「人殺し」です．人殺しをしたい人は，人殺しをしたい人たちだけでどこかの無人島に行って，そこで思う存分殺し合ってください．止めませんから．）

原理主義という言葉は、今までにニュースや講義で何回も聞いていたけれど、しっかりと意味を理解していなかったので、今回の講義で初めて知るようなことがたくさんありました。ある宗教の中で通用する dogma を、その宗教の教えの中で信じることは良いことだと思ったけれど、それを他の人に押し付けたり、排除しようとするのは良くないと思いました。人がそれぞれ信仰する宗教が違うのは構わないと思うけれど、それによって他者との間に問題が起きるのは好ましいことではないと思いました。（2年女子）
（上の人殺しの場合と同様に，原理主義者も彼らだけのコミュニティーに留まってくれるなら問題はありません．）

日本人は宗教に対してオンチ、あるいはナイーヴということですが、これも良いことと私は思います。あんまりにも宗教対するし執着心が強すぎると良いことになると限らないと思います。（2年女子）
（私はそうとは思いません．日本人のオンチ度は，限度を超えています．そもそも，なぜオンチを否定することが「執着心が強い」ことになるのですか? 中間に「正しい知識・認識を持つ」ことがあるのではないですか? ）

私たち日本人は「原理主義」と聞くと悪いものであると感じてしまいますが、それは、私たちが宗教の違いによる世界観、価値観のちがいを理解していない結果で、日本人の視野の狭さの表れではないかと思いました。日本人は無宗教だといわれますが、無宗教なだけではなく、宗教に対する理解に欠けてもいると思います。もっと、宗教に対する視野を広げていけば、アメリカの言うがままになるのではなく、原理主義やイスラームに対して、日本独自の見方が出来るのではないかと、講義を聴いて感じました。（2年女子）
（正しい見方を養うのも，大学での勉強の目標の一つです．励んで下さい．）

以前テレビでキリスト教原理主義についてやっているのを見ました。その教会は、外からは何の建物か全然分からなくて、自分達と違う世界観、価値観を持っている人々以外は寄せ付けないというようなものを表しているように見えました。その中では、本当に小さな子供たちが大人にならって、「キリスト、あなたが一番です」と叫んでいて、すごい統制力だと思いました。あんな小さい頃から価値観や世界観を植えつけていいものかと思います。違う価値観や世界観でも共有していけたらいいのにと思いました。（2年女子）
（原理主義 fundamentalism はもともとキリスト教の一勢力に対する呼称でした．
　下線部：私も同意見です．でも，原理主義者たちが，彼ら独自の世界観・価値観を持つこと自体も批判してはいけないのだと思います．ただし彼らは，自分たちだけに通じる価値観・世界観を，その価値観・世界観が通じないところにまで持ち込み，押しつけようとします．そこが問題なのです．）

他者と関わっていくとき、周りの友人関係を見ていて思うのが、自分の世界観や価値観を他人におしつけ、強要するだけでは相手は反発し、何も分かり合えない、ということだ。まだ「付き合わない」という選択肢をとる方がましだと思った。（2年女子）
（殺し合ったり憎み合ったりするよりは，たしかにつき合わない方が賢明です．）

キリスト教原理主義の考え方は意味不明でした。人工中絶する人に対しては「人殺しだ」というのに、戦争などで人を殺すことは構わないということを聞いて、何もかもが宗教中心で動いているひとには、これが普通の生活なのだなあと思った。（2年女子）
（原理主義者たちは，彼らの世界だけに閉じこもっていて欲しいと思います．出てこないで下さい．）

キリスト教、イスラーム教、仏教と世界三大宗教が東南アジアの宗教の主流であることは先生が仰った様に、まさに世界の宗教構造の縮図ですね！数が億単位であることに驚きを感じました！原理主義について原理主義者の人たちは聖典の言葉をそのままを実行し言葉には人間が介在することを分かっていないと仰っておられたのですが、それはある概念や一種の教義の様なものを書にする際に、それを書く人間が比喩して書いたりした事をそのまま実行するのですか。司祭の言う事そのままという事はある意味恐ろしい事だと思います。信者にとって宗教とは絶対的なものでありそれを利用されたら世界が動く事にもなりかねないと思います。（1年女子）
（神や仏と異なり，人はどこまでの不完全な存在です．その人を完全だと思うとき，判断の狂いが生じます．オウムの松本智津夫被告の例を思い起して下さい．）

世界３大宗教がアジアにあったとは知りませんでした。しかもインドネシアは世界最大のムスリム国ということにも驚きました。講義の中で言われた「まったく違うものとは気が合うけれど少し似通ったものとは合わない」という先生の説明にとても納得しました。特に原理主義者にとってはそれが重要な問題になっていて死につながるとは私には信じられません。でも私たちが当たり前と思っていることも国が違えば考え方も違って、自分の持っているものさしでは計りきれないものがあるのだとと思いました。（1年女子）
（「自分のものさしだけで測らない」態度はとても大切です．）

原理主義というものは扱うのにとても難しい存在なのだと思います。教義というものが第一になってしまうことは恐ろしい危険を孕んでいるのだと感じました。その考え方が自分達で完結してしまえば確かに問題が無いことですが、そこに独善的な考え方と他者にも適応させようとする姿勢があることは恐ろしいです。そもそも聖書などというものの解釈でどんな風にでも解釈できるようにできているというところで原理主義の考え方は綻びが露呈するような気がするのですが、そこを上手く歪曲してしまえる感覚は容易に想像できるので、どう理論的に諭したとしても教義に生きる原理主義の人々には何の影響も与えることができないのだろうなと思います。（1年女子）
（残念ながらその通りです．向こうの世界に行ってしまった人に，こちらの世界のことばは通じません．せめて，向こうの世界からこちらの世界に手を出してこないように防ぐのが精一杯です．）

dogma という言葉の意味を知りました。宗教に dogma は必要かという問題は、追究してみたい問題です。また、思ったのは、dogma の通りに宗教に順ずることは、全てが他宗教絶対排除になるのでしょうか。原理主義の定義が、dogma、聖書や経典や司祭のいうことに絶対であり、他宗教に適応してはならないものであるときに、イスラムなどの寛容な宗教が、なぜ他宗教を認める「原理」を無視するのでしょう。なぜそれを原理主義というのでしょうか。実際同じ宗教に属する原理主義者とそうでない人々の間には、溝が生じているのではないかと思いますが、どうなのでしょうか。（1年女子）
（ご指摘の通り，溝が生じています．例えば香田さん殺害事件に関しても，「あれはイスラームの教えとは無関係だ!!」というメッセージがイスラーム聖職者から出されました．ただし不幸なことに，外敵からの攻撃は，得てして彼ら原理主義者の同調者・賛同者を増加させることにつながるのです．）

宗教は、個人や社会の世界観・価値観であり、統制をしていくとても大きなものだと改めて感じました。それを理解せず、もしくは理解しているからこそ利用しているアメリカの姿を知りました。今までは宗教というものは文化であり、精神を創るもの、尊重すべきものだと思っていました。でも、原理主義を学び、「宗教は尊重すべきもの」だけではやっていけない気がしました。宗教の良さと恐さを知り、どういう風に付き合っていけばよいのか、わからなくなってしまいました。今日の授業を通じて、もっと学んで自分なりの考えを見つけたいと思いました。（1年女子）
（宗教に対して「ナイーブ」であってはなりません．）

私は今までニュースや新聞で耳にしていた「原理主義」という言葉を、単にテロのような危険なことをして人を殺すような人たちとしか認識していませんでしたが、今回の授業でそんな彼らの考え方や、テロなどの攻撃的な行動に至るようになるまでの流れ(？)を学んで、より深く時事問題を考えられるようになったと思います。あと、先生が宗教統制について話しておられた時にチョロッと言われた日本の宗教観にドキリとしました。宗教音痴という言葉が妙に自分に当てはまったからです。私の家は禅宗ですが、私の周りにいる浄土真宗の人や日蓮宗の人たちとなにが違うのかまったくわかりません。それ以前に自分の生活に宗教がまったく関わっていないのです。そういったことに改めて気付かされた授業でした。（1年女子）
（2年生になったら，是非「宗教文化研究（仏教文化）」を受講して下さい :-) ）

キリスト教とイスラーム教が敵対するのは、似ていることが原因というのはなんとなくわかるなと思いました。似ている部分があるからこそ張り合ってしまうというのは私の中でもあります。それだけでなく原理主義の考え方によるものもあると思います。厳しい環境の中での生活において信じるべきものは自分で決める一神教の考え方を、自然によって豊かな生活を送っている多神教の私には正直理解できない部分もあります。異なる宗教を敵対したり、自分の宗教を押し付けたりというのは争いの原因になると思います。さらにこじれればこじれるほど終わりなく続いてしまうと思います。ただ、そこまで信念を貫き信じられるものがあるというのは今の日本人にかけているものでもあると思います。神の存在は肯定も否定もできませんが、私にとっては原点だと思います。なにかに迷ったり悩んだりしたときかえるところのようなものです。都合のよい存在です。それは様々なものに依存した日本という環境で育ったからだと思います。もし、原理主義者たちが日本に多くいたら私も敵対視される立場になるというのは怖いことだなと思います。他者を認めない人たちがいるということを知って考え方の違いの大きさに驚きました。（1年女子）
（本当に怖いことです．）

原理主義の考え方がいちがいに悪いとはいえないな、と思いました。自分の信じるものを一途にもち続けるということは、悪いことではないと思うからです。しかし、その考え方を他者に押し付けたり、否定するものを消去しようとしたりすることは、やはり問題だな、と私も思いました。日本は確かに宗教といったものの類には疎いな、と思います。葬式は仏教なのに、結婚式は神教や、キリスト教だったりします。しかし、こうした日本の何でもあり、な考え方は嫌いではありません。原理主義者が悪い、などと言うことは出来ませんが、私は原理主義的考え方をもつ国や民族に生まれてこなくて良かったな、と思います。日本は宗教問題に関して鈍感なため、宗教色の強い国や民族を相手にするときなどは、きちんとした知識と受け入れ態勢をとるべきだとは思います。しかし、そうした日本の宗教に対するこだわりの無さは、なかなか好きだったりします。少なくとも、大規模な宗教戦争が起こることは、今のところ無さそうです。私は、まだまだ原理主義についての知識が乏しいため、理解しきれないところがたくさんあります。しかし、原理主義を否定する立場で学ぶようなことはしたくないと思います。少なくとも、こういうものか、と思えるような立場で学んでいきたいと思いました。（1年女子）
（いやー，いい感想です :-) ）

今まで、原理主義という言葉は聞けども、意味が分かっていませんでした。さらに言うと原理主義はイスラームだけなのだとも思っていました。勘違いはなはだしいですね。私は文化人類学の授業で、（アジア文化論ではなくて申し訳ないのですが）いつも疑問に思うことがあります。私は人類学とはフィールドワークでその地域ごとに様々な文化があるということを、調査していくことに意義があるのだろうと思っていました。しかし、前回の授業で先生が「人類学は地域を深く知って、その地域の未来について何か発言しなくてはならないという風に変わってきている」とおっしゃいました。その後に見たビデオでは西洋人の学者が「20世紀の豊かさを彼らも味わなければ」といっていました。私の勝手な見解かもしれませんが、それは一神教のヒエラルキーと同じで、未開の地の住民に対しての押し付けのようだと感じました。これは20世紀は豊かであるというひとつの価値観を、先祖のいる地で自分たちの文化の中で生きる人々の価値観に押し付けようとする、原理主義なのでしょうか。人類学の授業では、何故そんな考えに変わりつつあるのか分からなかったのですが、今日の授業で少し見えてきたような気がします。（1年女子）
（難しい問題ですね．なぜならば，私たち先進国の人間が，自分たちは豊かな生活をしていながら，発展途上の地域に対しては「古来の文化，古来の生活を守って欲しい」と言うことのほうが身勝手なのではないか，という見方もできるからです．
　多分，どちらが正しい・間違っている，ということではないのだと思います．いろいろな価値観・世界観があることを認めた上で，どうしたらより分かり合えるかを模索することが大切なのでしょう．今回の授業や，先の文化人類学での授業をきっかけとして，そのような問題に関心を持ってもらえれば嬉しいです (^^) ）

きのう、この授業を受けていた後輩と「原理主義を肯定的に捉えることが出来ないのか？」ということを話しました。先生が答えて下さったことを私の解釈で後輩に話しました。「原理主義の考え自体は悪くないけど、それに反対したり納得しない人を攻撃して傷つけたり殺したりするという行動はどうしても否定せざるを得ないところがある。そういう部分がいけないのだと思う。」と話しました。すると「そういうことがいけない、ということも押しつけになるのでは…。」と言われました。そうなのかなぁ、としばらく考えましたが、やっぱり人を殺してはいけないというのは「殺してはいけないから殺してはいけない」んですよね。自分の考えを押しつけてはいけない、人の世界を壊してはいけない、ましてその人を殺すなんて、やっぱりダメだ、と思いました。だから、「やっぱりそれは押しつけじゃなくていけないんだと思う。」と答えました。私の考えはこうなったのですが、どうですか？（3年女子）
（まず申し上げておけば，あなたの意見は正しいです．ただし，「あなたの意見を正しいとは思わない世界の住人」には，あなたの意見は通じません．
　それから，「押しつけるな，を押しつけてはいけない」というのもその通りです．ただ，これも「「押しつけるな，を押しつけてはいけない」を押しつけてはいけない」と無限に続きます．これが「ことばの限界」なのです．
　では，原理主義者たちに対して具体的にはどうしたらよいかと言えば，「関わらない」「降りかかる火の粉は払う」という以外に，有効な方法はありません．彼らは別の世界に住んでいますから，こちらの世界に関わるチャンスをできるだけ少なくすることが大事でしょう．
　授業中にも言いましたが，繰り返したいと思います．人はどんな思想を持とうと，言い換えれば，どんな世界観を持ちその世界に住もうと自由です．原理主義者も例外ではありません．彼らが独自の世界観に基づきながらその世界の内側に留まっている限り，何の問題もありません．問題は，彼らが彼らの世界を広げ，こちらの世界に侵入し，こちらの世界を侵略しようとするときに生じるのです．）

世の中は歪んでいるところがある、と先生はおっしゃいました。でもそれを嘆かなくても良い、完璧な世の中なんてない、と。サンスカーラで構築した世界は一人一人異なっています。Ａさんの理想通りの完璧な世界はＢさんにとっては物足りなかったり、まったく異なっていたりするわけですから、やはり「完璧な世界」など有り得ませんね。しかしＡさんの世界が自分の(Ｂさんの)世界とは異なっているからといって自分の考えをＡさんに押し付けてはいけませんね。自分が他人と世界を共有したいのならば、こちらから歩み寄るだけでは足りないと思います。相手も自分へ歩み寄ってきてくれなければ･･･。「健常者の方たちは今、私たち障害者の世界に歩み寄ろうとしている。私たちはそれを待つだけではいけない。私たち自身も歩み寄らなければ･･･」と、ある障害者の方がおっしゃっていました。歪んだ中に見い出せるもの、歪んだ中に居るからこそ見い出せるものがあるとおもいます。物事は考えようで大きく変わるものですね･･･。今日も良い一日でした。（3年女子）
（日々是好日，です :-) ）

【総評】原理主義者は「自分たちは聖典のことばにそのまま従っている．だから正しい」と主張します．ですが，聖典に記されているのはどこまでも「ことば」であり，その意味を理解する際には，かならず「解釈」が介在します．そして解釈をするのは人間に他なりません．したがって，「ことばそのままに従」っているようでいて，実は特定の人間（その人個人の場合もあり）の解釈に従っているのです．まず，そのことに気づいて下さい．
　その上で言います．人は世界をどのように理解・解釈し，その上でどのような世界観・価値観を構築しようと自由です．ですが，その世界観・価値観は特定の「解釈＝人に起因」に基づいて行われるものである以上，人が異なれば世界観・価値観が異なることは自明の理です．そうであるにも関わらず，自分の世界観・価値観だけが絶対で，他者の世界観・価値観を否定することは，そもそも「世界観・価値観は人によって異なる．なぜなら解釈だから」という原則を知らない，非常に愚かな行為です．
　たとえ，「私の国は世界の警察だ．私の言うことを聞かない奴はテロリストだ．テロリストには死を」という世界観を持とうが，あるいは「私の国を侵す帝国主義者の手先は首を切る」という世界観を持とうが自由です．ですが，それが適用できる相手は，「私はあなたの国を世界の警察だと思っています．あなたの言うことを聞かない奴はテロリストです．テロリストは殺されてもやむを得ません」，あるいは「あなたの国を侵す人は帝国主義者の手先であり，そのような人は首を切られてもやむを得ません」という世界観を共有している人だけなのです．その世界観を共有していない国や人に対し，自分たちだけに通用する世界観を押しつけるのはいい加減に止めて下さい．
　近頃増殖中の原理主義者のみなさん，そのことをくれぐれも肝に銘じて下さい．（鈴木隆泰）

アジア文化論 II

アジア文化論研究室

suzuki AT ypu.jp