アジア文化論 II 2004/11/11 No. 1

11/9 授業の感想1号の評価

感想1号（総数 44）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

アジア文化論II は5人の教員によるリレー形式で開講しています．ネパール，中国に続き，私鈴木が「いわゆる東南アジア」を二回に渡って担当します．

私は情けないですが、地理がまったく分からないので、「東南アジア」と言われてもどこの国々を指すのか分からず、今までその呼び方に疑問を持ったことすらありませんでした。しかし、「戦時中に作られた意識」ということには大変驚きました。ASEANはそういった歴史を持つ地域で作られた組織だからこそ、「大国の論理で動かない」というルールが成り立つような気がします。文化については、インドと中国、特にインドの影響力の大きさに驚きました。日本にいて日本の歴史を学ぶだけだと、アジアで最も他国に影響を与えたのは中国、というイメージを持ってしまうと思います。あと、これはアジアに限らず、どの国も歴史的に宗教の与える文化の影響は大きいんだな、と改めて実感しました。また、植民地にした国の文化が文化構造に組み込まれていることに、侵略の重さをかんじました。（2年女子）
（地理に関しては，やはり基本的な事柄を押さえておいた方が，あなたの世界が広がりますよ．）

授業の中で、アフリカ大陸に引かれた真っ直ぐな国境線について少し触れていらっしゃいましたが、このことが強く頭に焼き付いています。世界地図を見て、幼い頃から疑問でした。この授業とは別に、国境線について先生がお話になったことがあります。それがいつのことだったのか、はっきり憶えていませんが、誰かによって不自然に区切られたのだということを理解したとき、何ともいえない感情が湧いたのです。世の中に解らないことはたくさんありますが、知っておくべき事柄を私は知らな過ぎたと反省しています。私が今認識している世界を、様々な人々の手を借りつつ、広げていけたらと思っています。（3年女子）
（そうそう．世界を広げていきましょう :-) ）

同じアジアに住んでいながら、東南アジアについては国の数すら知らない状態だったので今回東南アジアについての基礎知識が学べてすごくためになりました。今話題の東チモールの場所も今回の授業で初めて知りました。あの巨大地図はすごくわかりやすいです。どこまでが東南アジアに含まれるとか、タイだけはどうして植民地にならなかったのかとか、昔からの小さな疑問も解決出来ました。来週は先生の専門の宗教についてですね。講義楽しみにしています。（3年女子）
（来週は原理主義 fundamentalism を扱います．お楽しみに :-) ）

確かに東南アジアとまとめて言うけれどそれぞれ宗教も違うし言葉も、過去の宗主国も違う。しかし顔つきを見れば共通点があると思うのですが、日本、中国、朝鮮半島とタイやインドネシアでは前者は色が白めで目が細い、後者は色は黒めでほりが深い。ベトナム、タイ、インドネシアに旅行にいったことがあるのですが少しは違いはあるけれど共通点の方が多かった気がします。
フィリピンでは中国、インドの影響を受けなかった、それはそれを受けとめる基盤の文化がなかったからだと先生はおっしゃったけれど、農耕文化や自然崇拝などの文化もなかったのですか？基層文化はあったが中国やインドの文化に比べれば劣っていたためそれを受けとめる力がなかったということですか？（2年女子）
（東南アジアには諸民族がありますので，顔つきの共通点がある，というのは思い込みです．顔つきの似ている人たちもいる，と言うべきだと思います．
　フィリピンは，国家形成以前に植民地化されたため，外来アジア文化の影響が第二層として存在しないのです．外来アジア文化は他の諸国では国家形成に寄与していました．フィリピンにももちろん外来のアジア文化は到達していたはずですが，それが文化の層をなすことはなかったのです．）

アセアン加盟国を東南アジアと考えてもよいのですか？（2年女子）
（ASEAN の概要をご覧下さい．十一ヶ国ありますか?）

今まで漠然と「東南アジア」という呼び名を使っていたので、今回の授業を受けて考えさせられたし、そもそも「アジア」とは何かとも考えさせられました。また、東南アジアに属する国もラオスが思い浮かばなくて、１０カ国だと思っていました。また、「４層の文化構造」の話を聞いて、今までの歴史の中で中国やインド、西欧の国々などいろんな国の影響を受けて、現在の東南アジアの国々の文化が存在することに納得しました。やはり、中国とインドは国土的にも人口的にも大国なので、近隣諸国に与える影響も大きいのだなと思いました。東南アジアという概念はあやういけれど、その国々が今、自ら共同体としてまとまろうとしていることはとてもいいことだと思いました。（2年女子）
（中国とインドは，国土や人口のみならず，軍事面でも大国です．ASEAN を応援したいと思います．）

アジアは中国とインドの文化がきっぱり分かれているのは、凄いと思った。どちらかに偏ったりするものかと思いきや、半島部が５、島嶼部が６といい感じに分かれていて、それぞれが文化を引き継ぐような形になっていて、共通性が感じられた。あと、よく聞いてなかったので教えてほしいのですが、なぜフィリピンは除くと言う言葉がよくでるのですか？（2年女子）
（よく聞いていましょう．タイ（植民地化されなかった）とフィリピン（国家形成以前に植民地化されたので，第二層としての外来アジア文化を持たない）は「四層の文化構造モデル」に当てはまらないからです．）

「アジアという言葉はヨーロッパに対しての言葉」といわれていましたが、批判という意味ではなくて、イコールの意味であっていますか？（2年女子）
（質問の意味がよく分からないのですが，当然ながら「アジア＝ヨーロッパ」ではありませんね．）

ASEAN とは具体的にどのような活動を行っている共同体なのですか。今まで政治経済などでよく耳にした言葉なのですがいまいち理解できていません。また基層文化の中の自然崇拝は日本のアニミズム~~アミニズム~~的なものと考えて良いのでしょうか。（1年女子）
（ASEAN については「首相官邸キッズルーム☆ウェッブ・マガジン「ASEANと日本」」，「日本アセアンセンターホームページ」，「外務省 - ASEAN」などをご覧下さい．
　「日本のアニミズム的なもの」という言い方は正確ではありません．万物に精霊の存在を認める「アニミズム」という信仰があって，日本の「八百万の神」信仰もアニミズムの一つだからです．東南アジアの基層文化である自然崇拝もアニミズムの一つです．）

アジアという呼び方はヨーロッパからみた異質なものだという意味が込められているというのに驚きました。でも、ヨーロッパ中心の世界が作られていたことを考えると、その呼び名も納得できるような気がします。東南アジアの基層文化は農耕文化だそうですが、高校時代世界史で、他の島との交易で港が栄えて作られていった国があるというのを聞きました。私が聞いたのはシュリーヴィジャヤといった結構昔の国名でだったのですが、昔の王朝とかが基礎となっていると思うので、一概に農耕文化とだけはいえないのではないかと思いました。（1年女子）
（それは基層文化ではなく，外来アジア文化の第二層に属します．）

私はどちらかというと海外というと欧米、特にアメリカを思い浮かべてしまうのですが、先生の講義を受けると必ずアジアもいいなと思います。これからも私の知らないアジアの世界をたくさん教えてください。楽しみにしています！ところで私はいつかタイに行ってみたいと思うのですが、先生はアジアはもう全て回ったのですか？（1年女子）
（残念ながらまだです．．． (-_-) ）

授業を聞いて、実際のところ自分が全く東南アジアについて知らなかったことに気づきました。何となく知っているくらいでタイがなぜ一国だけ植民地支配を受けずに済んだのかなど今まで全く興味を持たなかった自分が恥ずかしくなりました。植民地には例外なくその支配国の影響を受けていて、そしてそのために英語などが通じるから行き易いというのは喜んで良いことなのだろうかと複雑な気分です。（1年女子）
（「英語は世界語だ」という考え方の裏に，歴史的には何があったのかに思いを巡らすようにいたしましょう．）

基本的なことから教えてもらったので、すごく理解しやすかったです。最近ちょうど地域による意識（ヨーロッパ、アジア、、）について感心を持っていたので、今回の授業は本当におもしろかったです。アジアの一部という意識の弱い日本について考えたり、でも、そういうなかで、ASEAN というものがどういうふうにあるのかを知りました。政治などには関与せず、お互いに協力していこうとする組織だということをしり、そういうものが同じアジアの中にあるということがうれしかったです。日本も、そういう組織とつながり、アジアの一部というものを意識できればと思いました。（1年女子）
（経済関係を中心にした緩やかな地域共同体，東アジアでも是非実現したいものです．）

東南アジアについて知らない事が沢山あり、特に文化についてよく分かりました。日本との比較をしながら、講義に耳を傾けました。中国とインドからの文化が伝わった点も、日本と同じでした。同じアジアなので共通点も沢山あるな、と実感しました。でも東南アジアは多くの国が隣接していて、そこに多くの文化、主に四つが重なり合い独自の文化を形成したのだと、それを歴史的に考察できました。一番大きな違いは、植民地になりそこで全く新しい文化が入った事だと思います。西洋、ヨーロッパの全く違う文化と元からあった文化が融合して、今東南アジアにある文化はすごく魅力的だと思いました。全く違うともいえる文化がどう融合したのか気になりました。（1年女子）
（日本のインド文化導入は，あくまで中国経由です．一方，フィリピンとベトナムを除く東南アジアの場合，インドからの文化導入はストレートに入ってきたものです．）

講義を聞いて、今まで何の疑問も持たずに使っていた東南アジアという言葉のあやふやさに気付かされました。日本もアジアの国のひとつなのに、知らず知らずヨーロッパの視点で他の国のことを見ているのかなと思いました。また、タイが植民地にならなかったという話には驚きました。一見するとタイはラッキーだと思いましたが、衝突を避けるために都合のいい扱いを受けていただけなんですね。（1年女子）
（都合のいい扱いを受けているのは，過去のタイには限らないかも知れません．大国の論理に翻弄される世界情勢に目を向けてみるのもよい勉強になります．）

東南アジアが今、急激に発展しているのはどうしてですか？（1年女子）
（ASEAN を結成した成果が出ていると考えてよいでしょう．）

島が多いので国の区切りがすごく複雑ですね。でもシンガポールがあんなに小さい国とは思ってなかったです。大きさは沖縄本島ぐらいでしょうか~~ですかね~~？…（2年女子）
（言葉遣いに注意しよう．
　「海と島の大百科サイト」によると，沖縄本島の面積は 1,201(k㎡) だそうです．一方，「Wikipedia」によると，シンガポールの面積は 693(k㎡) ということですから，だいたい沖縄本島の半分ちょっとですね．）

インド文化の影響を受けている国、中国文化の影響を受けている国とありましたが、たとえばインド文化の影響を受けている国々がすべて同じ文化か、といえばそうではないですよね。同じ文化から影響を受けているとしてもそこからまたさまざまな文化ができて存在するわけで、またその国の中でも地域によって文化が分けられますよね。つまり人の数だけ文化は存在する、ということにつながっているんですね。こういうことを考えていると、自分の文化は自分が発信源であり、その文化もまた自分が中心となってどんどん広がってるんだなぁ…ということを考えます。自分がいる限り、文化…大きく言えば世界が存在しているということですよね。その自分の世界に存在する人々が今日も自然災害やイラク情勢など、さまざまな状況の中で苦しんでいることを、ニュースを見て知りました。その状況の一部しかわかりませんが、そこから腹立たしさ、悲しみなどいろんな感情がわいてくるし、どうしてこうなった、どうしたらいいのかなど考えます。「世の中にはいろんな人がいる」ということを耳にすることがよくありますが、私はこのことばでいろんなことをひとくくりにしているような気がして悲しくなります。でも「ひとくくりにしてはいけない」と、まだここまでで私の考えは止まっています。もう少し考えていこうと思います。（3年女子）
（「自分のできることをする．自分のできないことはできないのだから．」という考え方もありますよ．）

以前から東南アジア（特にラオス）の文化に興味を持っていました。しかし、東南アジアという地域にいくつの国があるのかすらよく知りませんでした。第二次世界大戦時にヨーロッパなどからの影響をうけ、現在ようやく国民文化を形成しつつあるというのを聞いて、今までなんとなくしか知らなかったASEANの存在意義を強く感じました。“昔の日本”に生きていたわけではないのになぜかなつかしいと感じる東南アジアの風景。しかしその背景には他の国からの侵略をうけ、それを乗り越えて作られてきた、そしてこれからも作られていく文化の一部を学び、さらに東南アジア地域への関心が増しました。（1年女子）
（農耕民族としての原風景を，私たちは共有しているのかも知れません．
土に根を下ろし、風と共に生きよう。
種と共に冬を越し、鳥と共に春を歌おう。

どんなに恐ろしい武器を使っても、沢山の可哀相なロボットを操っても、
人は土から離れて生きてはいけないのよ!!
「天空の城ラピュタ」より）

「東南アジアの文化」はタイ・フィリピンを除いて4層の文化構造で成っている、と今日の講義で勉強した。私はこの夏、タイ・カンボジアに行き、カンボジアではプノンペンに滞在後アンコールワットのあるシェムにいったということもあり、4層の文化構造で先生が仰っていたことがよく分かった。プノンペン郊外では伝統的な農耕（水田）地帯が広がり、街中では古い建物にはフランス語でストリートナンバーなどがかきこまれていたり、フランスパンがあちこちで売られていたりしており、フランス植民地時代の影響が色濃く残っているという風に感じた。そしてカンボジアがインドからサンスクリット文化に多大な影響を受けているとアンコールワットにいき生でそれを感じた。（アジ文Ⅰを昨年とったこともあり、アンコールワットで鈴木先生の顔が思い浮かんできました）そしていま、カンボジア人の手で独自の文化がそういった文化のうえに創られていっている、という風に、今回の講義で習ったことを、私自身がカンボジアで見てきたものと照らし合わせて理解していくことができたので大変興味深かった。（2年女子）
（歴史ある遺跡において，私の顔が思い浮かんでしまいましたか!! ご愁傷様です? (^o^; ）

【総評】「アジア」「東南アジア」という概念のあやふやさ，そのことばで一括りにしてしまう危うさを承知した上で，あくまで「ラフスケッチ」との前提で四層モデルの文化理解を試みてみました．（鈴木隆泰）

アジア文化論 II

アジア文化論研究室

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