仏教文化 2003/12/5 No. 10

12/5 授業の感想10号と回答

感想10号（総数 70）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

菩薩の抱いた法師 dharmabhaa.naka の自覚，そして菩薩の徳目である六波羅蜜 .sa.t-paaramitaa について説明した後，仏教タントリズムである密教を見ていきました．

今日の授業で一番へぇ～と思ったのは、電車の席を譲る人の方がお礼を言うという話です。今の日本ではあり得ないことではないでしょうか。電車の中にも障害者や老齢者のための席がありますが、平気な顔をして座っている人が多いです。もっとこの話がみんなに行き通ればいいなと思いました。（2年女子）
（席を譲ろうとしなかった女子生徒が殴られるという事件がありました．殴る方も殴る方なら，譲るという発想を持ち合わせていない方も困ったものです．）

人のためにやったことが結果的に自分のためになっているというのはあります。でも布施というのは、自分を修行させるためにあえてやるので意識としては違うところもあります~~全く違います~~ね。六波羅蜜多の1から6まで、どれも常に自分で自分を戒め続けていく、それがブッダ~~ブッタ~~のしてきた修行なんですね。お守りもタントリズムの一種だと思います。タントリズムは否定的な意味でも使われるのでしょうか。たとえば小さい頃ご飯を残したらばちがあたるとよく言われていて本当にそうなると信じていたのですが…。またタントリズムもある意味サンスカーラだといえるのでは？（2年女子）
（タントリズムも「シンボル操作の有効性」というサンスカーラを発動させているものです．
　「世界が全体幸福にならないうちは、個人の幸福はありえない」（『農民芸術概論綱要』）　法華経信仰に生きた宮沢賢治のことばです．自利（自らの利益）を後回しにしても利他（他人を利益すること）を実践することが菩薩の徳目であり，また，ブッダへの道だと考えられたのです．それが，結果としては自分のためになるわけですから，「全く違う」ということはありません．）

仏陀を真似することで仏陀は続いていくということが、今日の講義で実感できました。（2年女子）
（それは何より :-) ）

布施の話を聞いて、こんな考え方もあるのかと思いました。席を譲り、礼を言うのが譲られた人ではなく譲った人だということ、そして譲った側は「修行をさせてもらっている」という考えを持つこと。多くの若者がこのような考えが持てるようになったらこの世の中にシルバーシートなど必要なくなると思います（2年男子）
（横浜市営地下鉄は「全席優先席」に切り替えました．）

鳩摩羅什が仏教に影響していたなんて知りませんでした。世界史の時にうろ覚えしただけなもんで…その時は鳩摩羅什と仏図澄という人物も一緒に覚えましたが、この人は鳩摩羅什とは関係は無いのですか？
　漢訳の仏典が中華思想により違ったものになっていった、と聞きましたが、具体的にはどんな風に乱れたのですか？
　布施の電車の例は解りやすかったです。でも、自分は疲れていたら席を譲れないと思います。布施を実行できるような人間になれたらなぁと思いました。（2年男子）
（鳩摩羅什 Kumaarajiiva（344-413）と並んで，仏図澄（?-348）も西域のクチャ出身の仏教僧の一人です．
　仏教伝来以前から高度の精神文化を形成していた中国では，仏教受容の初期段階では，仏教を仏教そのものとして見るのではなく，自国の思想を通して解釈していきました．例えば仏教の「空」の思想を老荘の「無」の思想によって解釈していく，などです．）

はじめ、タントリズムの事を聞いて、密教者はなんて楽をしようとしている(怠けようとしている)んだ、と思いましたが、実際は自分達も楽をしているというか、知らず知らずのうちにシンボル操作を行っているんですね。言われてみて初めてそういえばそうだと気付きました…（2年男子）
（シンボル操作を伴わない宗教はないのかも知れません．）

タントリズムは私達の身の回りにたくさんあふれているものなんですね。私も毎日占いをチェックしてから学校にくるので知らないうちにタントリズムを信じていたことになります。ただ極端になるとこれはとても怖いものだと思いました。六波羅の電車の例えでは席を譲るのではなくて譲らせてもらっていると思うことだと理解しましたが、少しボランティアの考えに似ていると思いました。してあげるのではなくて自分が学ばせてもらったことが多いとボランティアをする人は言いますが、その考え方に似ていると思ったのですがどうでしょうか…。（2年女子）
（似ているところはありますね．「善いことは誰のためにするのか」　その答えの一つを，かつて観た映画「クレヨンしんちゃん　電撃！ブタのヒヅメ大作戦」に見出した覚えがあります．興味のある方は是非ご覧下さい．）

釈尊は六波羅蜜の六つの修行をしたため、仏になったと言われましたが、４, ５, ６（精進など）具体的にどのようなことをしたのでしょうか。修行と聞くと、滝にうたれていたり、断食をしているイメージがあるのですが、それとは違うのでしょうか。どちらも“精神的な修行”ということは分かるのですが…。（3年女子）
（精進は仏道修行に精を出すことで，波羅蜜の 1, 2, 3, 5 に打ち込むことと理解できます．6 の智慧だけでなく，波羅蜜は相互補完的関係にあるのです．）

密教におけるタントリズムの考え方の極端さに驚きました。5つの呪文を唱えるだけで仏陀になれるということは、その呪文の読み方さえわかれば私でも仏陀になれるのか・・と考えてしまいました。長く、つらい修行などに耐えれない人にはおすすめですね。鳩摩羅什の訳によって法華経が広まったということでしたが、古・旧・新訳すべてを通してみてもやはり鳩摩羅什の訳が一番優れているのでしょうか？（2年女子）
（文学的価値から観た場合，鳩摩羅什の訳が最も優れていると思います．）

今日の講義で、密教について理解することができました。釈尊の説く仏教はことばとりんごに向かう過程を重視するのに対して、密教は体験を重視するんですね！仏教の中に見る相違点を知るたびに奥が深いなと感じます。しかし、極端なシンボル操作には、ちょっと驚きました。私自身もしていることだし、それを非難する気は全くないのですが、目の前にいる先生が、いきなり仏陀になるとは・・。（2年女子）
（「即身成仏」と言うらしいです．残念ながら，私には成仏した実感はありませんでした．．．）

(1) 前回の質問の答えにまた質問なのですが、多世界観とは、『三千世界』という理解でいいのでしょうか？高杉晋作の「三千世界の鴉を殺しぬしと朝寝がしてみたい」という色っぽい詩から知った言葉です。
(2) お堂の周囲に、円柱形の、からからとまわす物があるお寺があります。それを回したり、回しながらお堂の周囲を一周回ると、お経を一度読んだことになると聞き、実際経験したこともあります。これもシンボル操作と考えていいのでしょうか。こういったものがあるお寺は、ほぼ密教系と考えていいのでしょうか。（2年女子）
（(1) いつもながらの博学ぶりに感心しています．さて，三千世界（正式には三千大千世界）は，整理された多世界観のスタンダードだと言えます．もともとは「この世界の外にも世界はある」という素朴な発想があって，それが順に整理されて，ついには三千大千世界（＝全宇宙）と考えられるようになったのです．
　(2) シンボル操作です．ただし密教はそこへの傾斜が極端に大きいというだけであって，シンボル操作を行うことは宗教文化全般に見られます．ですから，ご質問の内容だけでは，そのお寺が密教系なのかどうか判断できないのです．）

今日の授業の中で一つ疑問に思ったのはタントリズムについて。シンボルを操作をすることで実際の行為と代替可能というのはわかるのですが、その例として参拝がありましたよね。ということは日本に伝わっているのは密教ということになるのですか?今多くの日本人が信仰している（まぁ無宗教だという人が多いでしょうが、神社にお参りに行くこと位はしてるでしょうから）ものは仏教ではないのでしょうか。（2年男子）
（同様の質問が多く，私の説明が不十分であったことを思い知らされます．ここで改めて説明させてください．
　象徴行為・シンボル操作とは，実際に無関係（であると通常は見なされるよう）なもの同士を結びつけ，片方に働きかけることによって，それに結びつけられているもう一方に影響を及ぼそうとする行為・操作のことです．このような行為・操作は多かれ少なかれどの宗教にも見られる現象ですが，タントリズムの特徴は「象徴行為・シンボル操作万能主義」であると指摘できます．多くの宗教はシンボル操作と実際の行為（シンボルには代替不可能な現実のアクション）とを併存させますが，タントリズムはシンボル操作への傾斜が極端に大きいのです．）

最初はタントリズムの意味がよく分からなかったですが、占いや初詣をイメージすると形みたいなものが分かった気がしました。自分たちの生活の中で気づかないうちにいろいろなものが関わっているのだなぁと実感しました。来週からは日本ですね。自分は高校の時日本史を取っていたのですが、国際文化だとどうも世界史の方の知識の方が役立つことが多く肩身が狭かったですが、ちょっとくらいは日本史も久しぶりに役立つかなって感じでたのしみです。（2年男子）
（下線部：そうなんですか? 自国の文化理解なしに国際文化もなにもないと私は思いますが．）

菩薩の修めるべき徳目として六波羅蜜は説明されましたが、６つ全てを実践出来れば仏陀になれるということですか?初歩的な質問かもしれませんが、そもそも六波羅蜜の定義はどのような流れから発生してきたものなのでしょうか？（3年女子）
（最終的には 6番目の智慧波羅蜜（般若波羅蜜）が完成すればブッダです．そのためには 1～5 の修習が肝要で，それによって 6 が深化し，同時に 1～5 もさらに進むという正のフィードバックを発こします．　六波羅蜜は，ブッダの過去世物語であるジャータカ（本生譚）を通して次第に整理されていったものです．）

タントリズムの話を聞いていて、京極夏彦の京極堂シリーズの『狂骨の夢』を思い出しました。ミステリなので、あまり詳しく書くのはやめておきますが。『狂骨の夢』では、ある神様を復活させようとして骨をあつめたり、性行為、殺人などによって神様の復活を試みるというものがでてきます。
京極堂シリーズは、昭和二十年代後半が舞台なんですが、普通の感覚では神様であれ人であれ復活するはずはないのですが。極端なタントリズムというのは、変な方向に行ってしまうと怖いですね。（4年男子）
（「性行為」「殺人」が極端な象徴行為の実例となりやすいのは，そこに非常な生々しさ，異常なほどのライブ感が感得できるからではないでしょうか．通常の象徴行為の場合，実際のアクションと比べるとどうしても生々しさやライブ感に欠けます．それに飽き足らなくなったり，あるいは実現されるべきものが余りにど外れたものであるような場合には，象徴行為も通常の枠を超えてしまうのでしょう．）

シンボル操作は誰でも行なっていることだ、という例で初詣があり、アレもそうなのか！と驚きました。そして、偶像崇拝にはことば・音楽・礼拝行為なども含まれるということにも驚きました。
北伝仏教が中国において儒教や道教とイデオロギー的対立をした、というのは中国に高い精神文化があったからこそということでしたが、精神文化に高低はあっても良し悪しはないと思ってていいんですよね？（2年女子）
（下線部：その通りです．）

六波羅蜜の中で、「布施」はしてあげるのではなく自分の修行のためにさせていただくというのが、大事なのだなと考えさせらせました。また「持戒」でサティアを決めて実行するとそれが自分を守ってくれるというのは、日常生活のなかで思いあたることが結構あるので、身近に感じました。<br>，　密教はあやしい感じを持っていましたが、極端に走るとやはり怪しいものだったのですね。日本に密教が体系的に伝えられてどうなったのかが知りたくなりました。また、チベットでお経を読むかわりにお経の書いてある柱みたいなのを回すのはタントリズムの一つなのですね。（3年女子）
（マニ車といいます．私も持っています (^^; ）

シンボルを操作するとありましたが代替行為は何でも良いのでしょうか。代替行為と実際の行為の結びつきは「そういうものだ」と片付けられるものでいいのでしょうか。（2年女子）
（象徴行為と，代替される実際の行為との間の結びつきはサンスカーラによって構想・設定されます．）

タントラって、インドっぽい踊りのことだと思ってました。（何でだろう…？）（2年女子）
（シヴァの踊りが「ターンダヴァ・ダンス」です．関係あるでしょうか．）

仏教を知る上において、パーリ語が必要不可欠だというのがよく分かりました。一度習ってみたいものです。（2年女子）
（なかなか学ぶ機会のない言語なので，チャンスを生かすことをお勧めします．もちろん，判断するのはあなたです．）

私は友達があきれるくらいの占い好きです。占いが私の1日の気分をきめてしまうほど・・・今回の授業で、最初タントリズムと聞いた時には何だろうと思っていましたが、私にとっては最も身近にあるもののように思いました。初詣にもほとんど毎年行っていますし。授業を重ねていく度に、いかに仏教が普段の何気ない生活に関係しているのかを感じます。来週からはいよいよ日本の仏教ですね。私は日本史がとても好きなので楽しみにしています。（2年女子）
（仏教はとっても身近です．）

占いは大昔から行われていることで、政治にも使われていたりして、人間の歴史で以外と重要な役割をしているんだなとおもいました。シンボル操作で思ったのですが、タレントやとかコマーシャルみたいなものもシンボル操作になるのでしょうか。（3年男子）
（彼らは象徴・シンボルではあっても，あなたが操作することはできないと思うのですが．）

密教の説明で、５つの言葉を知るだけで仏陀になれると聞いて、驚きました。極端だけど、私たちも日常生活で同じようなことをしています。しかし、本当に仏陀になれたのか疑問には思わなかったのでしょうか？（2年女子）
（彼らには成仏の実感はありませんでした．ですから，密教はさらにシンボル操作を発展させていったのです．）

私の不勉強のせいで、はじめ聞いたときにはタントリズムとはなんぞや？？？と思いました。しかし、聞いているうちに私たちの身近にある占いや初詣の話を聞いてどういうものかわかりました。私たち日本人（特に私）は宗教というものを意識することなく生きていますが、目を凝らしてみてみると様々なところに宗教が息づいているのですね。来週から日本の話題になるので楽しみです。国際文化学部なので世界について知るのもいいですが、やはり日本についても様々な知識を得る必要がありますね。自分の国なのに知らないことばかりでは情けないです。来週の授業を楽しみにしています。（2年男子）
（よしよし :-) ）

六波羅蜜の布施について、列車の席を譲るという例は分かりやすかったのですが、初めて聞いたときは何で譲った方がお礼を言わなければならないのだ！？と少しびっくりしてしまいました。席を譲るという機会を与えてくれてありがとうだなんてこれまで思った事がありません…。布施と聞くと、他人に施しを与えることとか、金品を僧侶などに与える(？)ことだというふうに解釈していたので、修行させていただけたことに感謝するという意味があるということは本当に目から鱗な気分です。（2年女子）
（こういう，かつては当たり前だったことが当たり前にならなくなっているところに，今の日本に欠けている何かがあるような気がしています．）

布施は、日本の場合「檀家制度」によって、お金のイメージが付いたんですよね？？（2年女子）
（そうではありません．インドの段階から，布施は「財施」「法施」「無畏施」から成っていました．）

今回ダライ・ラマについて聞いてダライ・ラマがインドに亡命していることやチベットの人権問題などについて思い出し考えました。（2年女子）
（中共政府による文化侵略は許し難いのですが，何もできない自分がここにいます．）

仏教が密教に取り込まれたのか、密教が仏教に取り込まれたのかよく分かりませんでした･･･。（2年女子）
（インドでは，最終的には仏教はタントリズムに呑み込まれました．日本やチベットでは，仏教を土台にして密教を取り入れました．）

日本の宗教観には、色々なもの（使い終わった家電製品、文房具や裁縫道具など）を成仏させるという意味で供養祭などが行なわれたりするところもあるようですが、インドの仏教ではそういうことは行なわれていないのでしょうか?（2年女子）
（無生物にまで広く「いのち」を認めていく思想は，東アジア，特に日本に強く見られるもので，インドにおいてそのような供養が行われたという例を私は知りません．ただし，広いインドですから，私の知らないところで行われている可能性までは否定できません．でも，たとえあったとしても，それはインドの主流ではありません．）

密教のタントリズムの話が興味深かったです。最初聞いたときは、怪しい考え方だなと自分との距離を遠ざけましたが、シンボル操作は、占いや初詣といったことにも含まれていると知り、自分のなかにもあることだから一概に怪しいとは言えないのだと思いました。そこから、シンボル操作をどう使うかのバランスのとり方、バランス感覚が大切なのではないかと考えました。極端になってしまえば、オウム真理教のように危険なものになる。かといって全部を否定することは、自己矛盾を起こしてしまう。どういう比率でそれを自分の中に存在させるのかが大切なのではないでしょうか。チベット仏教が密教をそのまま取り込むのではなく、体系化して取り込んだというところに仏教のあり方を感じました。（4年女子）
（古来「自灯明，法灯明」と申します．自らで正しい判断を下せるように，自らが正しい判断基準となるように勤めるのが大切です．それができない場合，常日頃より頼りになる安全な判断基準を設けておく必要があります．）

密教のシンボル操作の話が興味深かったです。密教のシンボル主義が極端なだけで、ある行為をシンボル操作によって置き換える行為は誰もが無意識のうちに行っており、占いやおまじないの類もそれに含まれるということでしたが、自分の生活を振り返ってみてもなかなかよい例が思い付きませんでした。しばらくシンボル操作を意識しつつ生活してみようかと思います。
来週ついに日本仏教に入るとのことで、今まで講義の内容を日本の仏教と比較して疑問を持ったりしていたことが明らかになると思うと、楽しみです。何となく日蓮について深く知りたいです。（2年女子）
（「星に願いを」（※歌ではありません）もシンボル操作です．）

六波羅蜜の６番目の「智慧」は先入観を入れない直感的なものとおっしゃいましたが、それはサンスカーラを排除した形と言っていると解釈していいですか？
仏教と密教の違いがよくわかりました。私たちは体験のみを重視する密教より、言葉でなんとか表そうとする過程を重視する仏教にやはり近いですが、タントリズムも意外とやっているんだなと思いました。初めタントリズムを聞いたとき、ナンセンスなことだなと思ってしまったんですが、いざ自分たちもやっていると言われ探してみると結構あって驚きました。その行為自体はやっぱりナンセンスなことなのかもしれないけど、その行為に対する心に意義を見出して人はシンボル操作を行っているんですよね☆（2年女子）
（下線部の件，その通りです．サンスカーラを排除してありのままの世界を見通せる智慧が「完成された智慧」「般若波羅蜜」なのです．）

六波羅蜜はどれも自分が生活する上で必要とされるもので、意識の奥の方にはあれど、疎かにしてしまいがちなので、改めて自分の心に刻み込まなければならないと感じた。特に欠けていると自覚しているのは忍辱波羅蜜だろう。サンスカーラの発動も大きく影響しているような気がする。
また仏教がことば(教え)を頼りに成り立っているという点には非常に興味を惹かれた。それは以前の講義での方便の話を聞いたせいもあり、また私自身も割とことばというものに執着があるためだが、感情や体験の全てをことばで表現することは不可能であることを十分承知の上で、他者や自分自身に何とか伝達しようという姿勢はやはり重要であるように思った。（2年女子）
（ことばの不十分さをきちんと認識しつつ，ことばを捨て去らないことが重要です．）

(1) 密教の象徴主義・体験との代替を考えるにあたって、五相成身観の例はあまりにもブッダへの道のりが簡単で、怪しすぎだと思いました。象徴主義は確かに身近でありますが、象徴にばかり頼るのではなく、象徴をきっかけに(例えば学業成就のお参りなら、勉強を実際にするとか)、ブッダへの道を、何らかの形で歩もうとするならいいような気がします。リンゴとの距離は、ただ今のままの自分の位置にいるだけでは、近づき得ないと思いました。
(2) 五相成身観の日本語訳があれば内容を知りたいです。（2年女子）
（(1) おお，なんてグレイトな感想なんだ．しびれました．
　(2) 順に説明していきます．

o.m cittapativedha.m karomi （オーム　チッタプラティヴェーダム　カローミ；　オーム　私は自分の心をよく理解しよう．）
o.m bodhicittam utpaadayaami （オーム　ボーディチッタム　ウトパーダヤーミ；　オーム　私は覚りを求める心を発こそう．）
o.m ti.s.tha vajra （オーム　ティシュタ　ヴァジュラ；　オーム　起て，金剛よ．）
o.m vajraatmako 'ham （オーム　ヴァジュラートマコーハム；　オーム　私は金剛を本性するものである．）
o.m yathaa sarvatathaagataas tathaaham （オーム　ヤターサルヴァタターガタース　タターハム；　オーム　一切の如来のありようと私のありようとは同じなのだ．）
　いかがですか? ブッダになれましたか? :-) ）

【総評】次回よりいよいよ日本仏教に入りますが，これまで学んできたサンスカーラを機軸とした仏教理解は変わりません．仏教の基本は「諸行無常」です．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

suzuki AT ypu.jp