仏教文化 2003/12/19 No. 12

12/19 授業の感想12号と回答

感想12号（総数 63）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

最澄と空海の確執を通して，平安仏教の特色を見ていきました．

平安時代といえば仏教というより、陰陽道の方のイメージの方が強いのですが、対立はなかったのですか？（2年女子）
（『岩波仏教辞典　第二版』によれば，陰陽道は真言密教の加持祈祷の術・星辰信仰と折衷習合していったそうです．）

私はある人の影響でよく『犬夜叉』を見るのですが、あのアニメにも即身仏がでてきたな、と思いました。そういえば、昨年のアジア文化論I の最初の授業でも、インドからの外来語で犬夜叉のことについて触れられていたなと思い出しました。（2年女子）
（『犬夜叉』もいいけれども，私の独断と偏見に依れば，高橋留美子といえばやっぱり，
　　アニメなら『うる星やつら』
　　コミックなら『めぞん一刻』
でしょう．特にアニメ版「さよならの季節」はメガネの暴走が圧巻で，私の最もお気に入りの回です．）

最澄と空海がお互い手を組んでいたら、日本においての仏教がもっと大きくなったかもしれないですね。空海は綜合仏教を目指さなかったのですか？（2年女子）
（空海にとっては密教こそが全てだったのです．）

最澄は近江で生まれたんですよね。自分も実は滋賀県で生まれまして…根本中堂には二回ぐらい行きました。今日見せていただいた写真はすごく懐かしかったです。確かにあの山は寒かったです。そして、あんなしんどい山には二度と登りたくないです(-.-;)
　最澄が空海に弟子入りしたと聞いてとても謙虚で人間ができているなと思いました。彼が亡くなった後に弟子が頑張ったのはやはり、最澄が努力家でいい人だったからだろうと思いました。
　遣唐使の留学生のなかには、日本に帰ってこない人がいると聞きましたが、どうして帰ってこないのですか？また、その場所で彼らはやはり仏教について勉強をするのでしょうか？（2年男子）
（下線部：病や事故などで亡くなってしまう人がいたことが一番の理由でしょう．）

歴史などの授業を受けていて、いつも「もしも、あの時その出来事が起こっていなかったなら（少しでもずれていたならば）どうなっていたのだろう…」と思いますが、今日も同じような事を感じました。たった一人の人でも後世の運命を変えてしまうのですから。しかし、偶然などが重なり合って、今の日本があるわけですから、本当は「あの時これが起こってなかったら…」とか考えるべきではないのかもしれませんね。本当に、歴史は奥深く面白いものだと思います。（2年男子）
（「歴史に “if” は禁物」と言われることもありますが，たまには思いを馳せてみたくなります．）

最澄は国にとって有益だと見なされていたために、1年間しか唐に滞在できず、一方そうではなかった空海は2年間みっちり密教について学べて、のちには国にとって有益な人物となった。ということを知って、何が原因で人の立場が入れ替わるかは予想できないものだと思いました。（2年女子）
（予想できないからこそ人生は辛くもあり，楽しくもあるのではないでしょうか．ね，人生って面白いでしょう? ）

冒頭におっしゃった「トリック」は、私も見てました。この作品は、言葉の奇跡、あるいは呪い、文字の力についてとても敏感な作品だと思いました。最近は、映像の世界ではＣＧが礼賛されて、言葉の価値が軽んじられる傾向があります。もちろん、言葉を大切にしたものもありますが。そんな意味で、言葉を大切にしようというメッセージをこの作品から、私自身は感じました。一番最初のシリーズから引きずっていた門の中に火があるという字の読み方があんな感じになるとは思ってもみませんでしたが。（4年男子）
（『トリック』，よい終わり方でした．でもあの終わり方では Part4 はもうないのでしょうね．そのことはとても残念です．）

今でも弘法大師は２度の食事を運ばれているようですが、様々なサンスカーラが浮かんでしまいます。そもそもそこに即身仏があるのかな、とか、埃を被っているのだろうな（ずいぶんと罰当たりですが）とか。こっそりと見てみたい、と好奇心を抱かせます。
歴史はロマンです！完全にサンスカーラに囚われています。すみません。（2年女子）
（サンスカーラを上手に使うことによって人生を豊かにできることがあります．“神の観念”なんかもそうですしね．）

日本史には欠かせない空海と最澄ですが、実は、名前と宗派名だけで、２人の関係性や宗教を起こすにいたった背景・地位までは全く知らなかったので、今回知ることが出来てすごく良かったです。今まで、高校の日本史だけで２人を理解した気でいたけど、やはり歴史は奥が深く、知ることに制限はないなと思いました。もっといろいろなことを知っていきたいと思いました。（2年女子）
（知識に終わりはありません．興味を持ってどこまでも学んでいって下さい．）

空海は、京都や四国では「弘法さん弘法さん」と親しまれているので、私の中では最澄より空海の方が大きな存在でしたが、真言宗より天台宗の方がその後の発展が大きいと聞いて、元のイメージが覆されました。ところで、四国八十八箇所を巡る遍路は、誰でもできるのですか？それとも特定の宗派の人しかできないのですか？（2年女子）
（誰でもお遍路さんになれます．機会があれば試してみるのもよい経験でしょう．）

今日の講義ですっかり忘れていた恵果という名前を思い出した。私の高校で扱った日本史の教科書には、その名前は載っていなかったのだが、空海の師匠の名は「恵果」だということを当時の先生に言われ、教科書の隅の方に書き加えたということがあった。そんな風に日本史では教科書に乗っていないことも付け加えて説明してくれる先生だったのだが、「入試には出ないから憶えなくていい。興味があれば大学で勉強しろ」と言われたのですっかり記憶から抜けていた。改めて詳しい話を今日聞いたことで、あの頃習った歴史を私の中で更に鮮明にすることが出来た。忘れたことも沢山あるが、日本史は高校の授業ではダントツに面白かった。
　綜合仏教を目指した天台宗はあらゆる処方箋を出すために多くの思想があったということだったが、それは本来の仏教の在り方に近いものだったと考えてよいでしょうか。（2年女子）
（天台の綜合仏教は，今風に言うならば「綜合仏教大学」を目指したものであって，基本的には選ばれた出家者向けのものでした．）

今日の講義で高校時の日本史の授業を懐かしく思い出しました。弘法大師…覚えてたハズだったのに出てこなくて残念でした。あの頃はよく暗記してたのに。。。
最澄と空海の間にいろんなエピソードがあったなんて知りませんでした。個人的には最澄を応援したくなりましたが、二人とも歴史に名を刻むほどの業績と伝説を残してくれた人なので、現在でもそしてこれからもみんなに語り継がれていくんだなと思いました。空海のようにラッキーに事が進めばいいけど、人生そう簡単ではないので、どんな状況下でも最澄のように謙虚に地道に生きていく術を私も身につけたいと思いました。（2年女子）
（何がラッキーで，何がアンラッキーかは，なかなか一様には決めがたい面があります．最澄自身が，自らの生涯をアンラッキーだと思っていたとは私には考えにくいです．）

最澄と空海、天台宗と真言宗の対比がとても分かりやすかったです。今まではこれらのことは並列関係程度にしか考えてなかったので、その違いを知ることができてよかったです。最澄が空海に弟子入りしたという話はとても衝撃的で、最澄の真剣な思いがそのエピソードから伝わってきました。また、空海のように、死後崇められるのはもちろんすごいことです。しかし最澄のように、自分の意思が生き続けて弟子がそれを発展させてくれるなんて、すごく幸せなことだと思いました。（2年女子）
（私もそう思います :-) ）

釈尊にしても最澄にしても人々を救う良い教え（考え）はしっかりと弟子達に受け継がれ、入滅しても絶えることはないのだなと感じました。(1)疑問に思ったのですが、最澄も空海も中国へ行って天台の教えを授かってきていますが、それは国が既に中国天台の教えを日本に持ち込むことを決めていたからなのでしょうか？
(2)あと、理趣経の説明と (3)本覚思想と如来蔵・仏性思想の違いをもう一度教えてください。（3年女子）
（(1) 少し誤解あります．天台の教えを授かったのは最澄だけです．彼は日本にいる段階から，中国の天台山に行って直接教えを授かろうと思っていたのです．
　(2) 『理趣経』は性行為を積極的に肯定し，その際の快感（性的エクスタシー）を覚りの境地と見なす経典です．密教特有のシンボル操作によるものと見るべきでしょう．
　(3) 天台本覚思想は「人は本から覚っているのだから，あえて修行をする必要はない」というのに対し，如来蔵・仏性思想は「人の中にあるブッダはまだ目覚めていないから，そのブッダを目覚めさせるために修行しなくてはならない」という違いがあります．）

中学、高校の歴史の授業でも最澄、空海についてやりましたが、名前とその性質を簡単に教わっただけだったので今日の講義のような授業が展開されるともっと日本に伝わった仏教について理解を深めることができるのではないかと思います。生きて帰れるか分からないというのに、命を懸けてでも仏教を学びたいという僧がいたというのは、当時の人々にとって仏教がそれだけ拠り所となるものだったのだと思いました。（2年女子）
（「当時の人々」は決して一般大衆ではなく，最澄や空海など一部の僧侶のことを指しているのなら正解です．）

お遍路さん、と聞いて昔近所でやっていた「お大師参り」という行事を思い出しました。お地蔵様のおいてあるところを回ってお米とお賽銭を供えて、赤飯とかお菓子をもらうというものなのですが。
母に聞いてみるとやはりあれは四国の四国八十八箇所を見立てたものだったようで、お遍路さんの格好をした人もいたそうです。身近にそんな話があって、ちょっと意外でした。（2年女子）
（豊かな文化が残っていてよかったですね．）

奈良仏教から平安仏教へと移行する時代には、行基も有名どころですが鑑真というもっと有名な方も登場したと思いますが、時間の関係上でしょうが何もコメントされませんでしたので、質問をしたいと思います。鑑真は国家に尽くすためにやって来た、ということになるのでしょうか？（2年女子）
（結果としてはそうなります．日本に戒壇（国立の僧侶認定所）を作るために彼は呼ばれたのですから．）

最澄と空海については高校の日本史で少し勉強していましたが、何故だか私のイメージの中では最澄と空海は似ている感じがしていたんですが、全く違った考えを持っていたことを知り反省しました。立場も違えば、考え方も違う二人によって日本の今の仏教が出来たというのはとても興味深いです。また、たまたま最澄と空海の乗っていた船だけ助かったというのも日本の仏教にとってはとても重要なことだったのだと思いました。（2年男子）
（事実は小説より奇なり，ですな．）

最澄と空海。両者は日本の仏教を語るには欠かす事のできない存在だということは、中高の歴史の授業で教わりました。しかし二人が対立し喧嘩していたというのを聞いて、すこし笑ってしまいました。完璧な二人！というイメージが強かったのに、意地悪したりして意外と子どもっぽいなぁと思いました。二人が仲が良く、新しい仏教を作っていたら、今伝わっている仏教とは異なった仏教が出来たのかと思いました。（2年女子）
（両雄並び立たず，かも知れません．）

最澄と空海の関係について目から鱗の授業でした。弘法大師大使というほどに、完璧だったために発展しなかったという説明に納得させられました。また空海は意地悪なのだという率直な印象を持ちました。祖母が四国八十八ヶ所順礼にお遍路さんとして行ったらしく、かばん？を見せてもらうと大きく「同行二人」と書かれていて、その由来をちゃんと説明してあげました。（2年女子）
（よかったですね :-) ）

空海は恵果の元で伝法勧請を受けたとのことですが、伝法勧請を受けるというのはたった一人に限定されるのでしょうか？なんとなく伝法勧請とは武道の世界で言う免許皆伝みたいなものかと思っているのですが、それなら一人に限定はされないし･･･。（4年男子）
（伝法勧請は師匠である阿闍梨が弟子に対して，「自分の跡継ぎはお前だ」という意味で行うものなので，武道の免許皆伝というより，一子相伝の北斗神拳の方がイメージが近いと思います．）

今回、最澄と空海の不思議なつながり・運命を知ることができて、とてもおもしろかったです。最澄が密教の教えを学びたいために空海を頼るという謙虚さに人間ができているな、と感じました。人は、自分より身分が下など(言葉が間違っているかもしれませんが)劣っていると感じる人にはなかなか素直に自分の劣っているところを出すことができないと思います。だけど、最澄は純粋に学びたいという気持ちでい続けることができました。感心しました。だから、円仁のようないい後継者ができたんだな、と思いました。いい人にはいい人が・・・。（2年女子）
（真っ直ぐに生きていれば，いつかは報われるものです．）

今まで最澄と空海は＝ではないものの、それに近いようなイメージを持っていました。。。今回の授業でそれは大きな間違いだったことが分かりました。また改めて、彼らが日本の仏教文化には欠かせない存在だったのだなと感じました。あと、最澄の弟子であった泰範が空海側に寝返ったということでしたが、そういうことは当時よく起こっていたのでしょうか？というより、師匠を変えるということは教え自体が変わってしまうような気がしたので“それでいいのだろうか？”と思ってしまったのですが。仏教は八万四千の法門があるので、別にいいのですか？（2年女子）
（自分に合った処方箋へと選び変えることは，仏教にとっては別段不思議なことではありません．）

最澄、空海は高校の授業では名前を覚えるだけだったので、今回の授業で詳しく知ることができてよかったです。いろいろな思想が授業で出てきましたが、こうゆうものって誰が唱え始めたというよりも、当時の人々が生活に救いを求める中で生まれてきたものではないでしょうか？だとしたら、後世の人々がそれに縛られていくのって、かんがえてみるとなんだか変な話ですね。（2年女子）
（教義を金科玉条のものとしてそれに固執するだけで，主体的に処方箋を選んでいかないのであれば，その営みはもはや仏教とは呼べません．）

末法思想は平安時代に広まり、ちょうど平安時代が末法にあたると考えられていたと学びましたが、その時代が完全に過ぎ去った現代においては、この思想は完全に過去のものになってしまったのでしょうか？それとも、やはり現代の日本の仏教に何らかの影響を与えているのでしょうか？（2年女子）
（末法思想に則するならば，今も末法の時代は続いています．）

｢昔の真言宗のお坊さんには皆『海』の字がはいっている｣という話を思い出しました。現在でもそのような傾向はあるのでしょうか？（2年女子）
（私の知っている真言宗の僧侶の方の中に限れば，「海」の字が入っている方はいなかったように思います．）

よく「クレオパトラの鼻がもう少し長かったら、歴史が変わっていた」ということを聞きますが、今回の最澄と空海の話も、「乗っていた遣唐使船が違っていたら、歴史は変わっていた」と思いました。だから歴史って面白いんですよね！！<br>，私はなぜか、この２人のことを初めて知ったときから、空海がちょっといじわるな人で、最澄はついてない人だというイメージを持っていました。（ホント、なぜかは分からなかったんですけど・・・。）でも、今回その理由がはっきりしたように思います。
最澄が目指した綜合仏教は、本覚思想・浄土思想・末法思想など、要するになんでもOKということなんでしょうか？講義を聞いている感じでは、なんでもOKというニュアンスではなかったように思ったのですが・・・。（2年女子）
（最澄の目指した綜合仏教は，あくまで『法華経』を中心に据えた上でのものです．『法華経』中心の仏教は，中国天台から受け継いだものです．しかし最澄以降は，密教部門の充実もあり（もちろん密教部門の充実は最澄自身の悲願であったわけですが），『法華経』中心のあり方から変わっていきました．特に中古天台の本覚思想は，「リンゴを食べに行く過程」である修行を無用とするもので，頽廃をもたらす危険をはらんでいました．そして，その危険は現実のものとなったのです．）

(1)最澄は法華経、密教、禅、戒などを統合して総合仏教を確立しようとしたということでしたが、最澄や空海が学んだ唐では、それらがそれぞれ別々に説かれていて、それを学んで統合しようとしたのは、日本での独自の動きだったのでしょうか。
(2)最澄と空海のそれぞれのジレンマがわかるような気がしました。空海は「弘法も筆の誤り」などのことわざになったり、お大師様と慕われているということは、生前から民衆にむかっても”処方箋”を出していたということなのでしょうか。
(3)また、源氏物語などで、病気回復のためにお坊様に護摩をたいて病気の原因の悪霊をはらってもらうという場面がよくありますが、あれも平安仏教の一つのかたちなのでしょうか。
(4)舞台が日本に移って、日本の仏教は知っているようで全く知らなかったのだなと感じました。（3年女子）
（(1) 中国の段階ですでに，天台には法華以外の要素がありましたが，それをどんどん進めていったのは最澄だったと考えていいと思います．
　(2) 伝説レヴェルですが，空海には多くの逸話が遺されています．
　(3) そうです．貴族社会の平穏を守ることも平安仏教の役目の一つでした．
　(4) だから学ぶ意義があるというものです :-) ）

【総評】最澄や空海らの天才によって，日本の仏教もようやく仏教としての姿を取り戻してきました．次回からいよいよ鎌倉新仏教に入ります．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

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