仏教文化 2003/11/14 No. 7

11/14 授業の感想7号と回答

感想7号（総数 73）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

今回はサンスカーラの時間論的説明を行い，釈尊の遺言を認識論・時間論の両面から解釈しました．そして釈尊滅後の仏教への導入を行いました．

今日改めて、諸行無常という考えを復習してもらえたので、正しく理解することができました。大変分かりやすかったです。釈尊の十大弟子がした聖典編纂はキリストの弟子達が聖書を書いたことに似ていると思いましたが、それによって仏教の本質を壊してしまうことになるとは、弟子達は気付かなかったのでしょうか？その後、仏教がどのように変化していったのか、来週の講義がとても楽しみです。（2年女子）
（難しい問題ですね．たしかに彼らの行為は「方便の終焉」を意味しますが，彼らが編纂してくれなければ，仏教は雲散霧消していたおそれもあります．このことについては次回説明しましょう．）

釈尊は死んだのではなく入滅したという概念がよく分かっていなかったのですが、今日の説明でよく分かりました。入滅後は涅槃界に存在し、禅定しているため、人々も禅定すれば瞑想の中で仏陀に会えるというのが、仏教らしい考えのように感じました。個人的なことなんですが、私の父方の祖父母の葬式は真言宗の室生寺派でしたが、室生寺派は真言宗の総本山がお金に関して少し貪欲な部分があったため、分かれてできた宗派だと聞いたのですが、どうなんでしょうか。全然真言宗のことをぜんぜん知らないのでよく分かりませんが、様々な宗教の中で宗派がたくさん分かれていることについて知りたいと思いました。（2年女子）
（お金云々のことはよく分かりませんが (^^; 宗派の別についてはいずれ説明する予定です．）

大好きな私のじい様が脳梗塞で倒れました。人の命というものに直面した時間でした。どうしてじい様が苦しまなければならないのか、なぜそうなったのかをしきりに考えました。これはこうなる運命だったのか・・・？でも運命といえるのは物事が終わってからだと思います。ここからどうすべきなのかということがもっとも重要なことでした。8月5日、じい様の呼吸が停止し、瞳孔も開いた状態で、死を覚悟した日から今日まで、私は奇跡を見てきました。じい様は今自分でご飯を食べ、歩けるようになっています。記憶の障害は残っているものの、私にとってはこれ以上ない喜ばしい奇跡です。過去は変えることはできないけれど、今とこれからが大切なのだという話を聞いていて、じい様と家族のことを思い出しました。人の力は偉大です。この講義で私の頭はパンクしそうなほど回転しているようです(笑)スリップしないように気をつけます(^ー^;)（2年女子）
（ついてこいよ!! ）

仏教の考え方に考えさせられるものが毎回増えてきています。人々は生きていく上で希望をもっていたいものだと思います。少なくとも私はそうなのですが。おこたることなく勤めよ、これは未来にある出来事を自分自身でよりよいものにするため。これは、今から自分の起こることに責任を持つということなのですが、運命というものも関係があると思いました。結果をみて、運命だと判断することがよいときとそうでないときはあります。しかし、日ごろの自身の行動や考え方、そういうものが多少作用しているのではないでしょうか。運命と思うにはあまりにも悲しすぎるときがありますが、切り離せないものもあると感じました。（2年女子）
（運命論（宿命論）に甘んずる態度を「アキラメ」と言います．「諦め」の原義は「明らかに見ること」で，私は両者を区別して使っています．あなたは「アキラメ」ているのですか? 「諦め」ているのですか?）

今日の講義は釈尊の入滅のあたりから、だんだん分からなくなってしまいました…。入滅したということが良く分かりません。頭がパニックです(@_@)。家で改めてノートを見直してみます。（2年女子）
（インドでは覚りを得た聖者は不死の境地に達したと言われます．インドにおける覚りは「解脱」と呼ばれ，一般レヴェルでは「輪廻からの離脱」と捉えられてきました．死んだ人は生まれ変わってしまいますから，覚りを得た聖者は死ぬことはなく，彼らの「肉体的死」を「入滅」と表現したのです．）

釈尊は入滅後、涅槃界で禅定している、とありましたが、存在しているのかどうかわからない「涅槃界」は、形而上学的な概念にはならないのでしょうか。（2年女子）
（その通りです．仏教は形而上学的議論への埋没を拒否しますが，その観念を使わないわけではありません．大事なことは「リンゴを食べに向っているかどうか」です．）

釈尊の教えが、なんとなく分かってきた気がします。ただ、よく分からなかったのが、時間の部分です。釈尊は今の行動は、未来にはつながっているといっていましたが、それならば、過去も今の自分に関係してくるような・・・。（2年女子）
（当たり前です．釈尊も過去を否定してなんかいません．ただ，「前世」「過去世」のような，自分の責任の取れないことで悩む必要はないと説いたのです．自分の行った行為に対しては，たとえそれが過去（not 過去世）のことであれ責任を取らなくてはならないのは当然ですし，その行為の積み重ねによって現在の自分があるのです．）

過去と過去世の違いはなんとなく理解できましたが、未来と未来世の違いがよくわかりませんでした。未来世はやはり自分が死んだ後、輪廻によって生まれた自分なのですか？そうだとすると、未来世の責任を取るというのはどういうことになるのですか？？（2年男子）
（釈尊は未来に関してはサンスカーラをあえて使っているのです．それが「善い生き方」につながる限り，釈尊は様々な処方箋を出すのです．）

（１）時間を創り出す行為のところで、以前の授業でも説明された太陽の話で、太陽が昇ることが“生”を意味し、太陽が沈むことは“死”を意味するということが話されましたが、太陽の存在ってすごく宗教に影響を与えているんだなあ、と改めて思いました。確かに、太陽がなければ人々は生きていけません。農作物も、全て太陽に依存しています。だから古代エジプトの時代から、太陽崇拝が盛んに行われていたのもうなずけます。
（１）－１では、釈尊が過去や未来と切り離して、自分の責任のとれないことはとらないでもよい、といった考えからは、救われた人も多いだろうと思います。その考えが言われるまでは、自分のした覚えのない、でもしたかもしれない、といった曖昧な行動について責任をとらなくてはならなかったんですね。
“入滅する”ということに関してですが、仏陀は禅定にいて、他の人々は死ぬことによって仏陀と会えると考えられていたようですが、今でも誰か親しい人が死ねば、あの世で会える、といいますが、それと同じようなことですか？（3年女子）
（下線部は誤解です．釈尊は涅槃界という瞑想状態に入っているので，他の人々も瞑想によって釈尊に見えることができるという考えです．死ぬことによってではありません．）

ブッダは死んだのではなく入滅して涅槃界にいるというところが興味深かったです。インドの考えでは終わりのない時間のサイクルであるこの世を、ブッダは絶ち切って違う世界へ行ってしまったわけですが、その違う世界はどんな所なんだろうと思います。完全に心の安定が保たれている世界では何も起こらないのだったら、きっと退屈だろうなあと私は考えてしまいました。（2年女子）
（サンスカーラ発動しまくりですね．リンゴの味はリンゴを食べた人にしか分からないのでしょう．）

今まで、前世で悪いことをしたから今、よくないことが起きたんだといいますが、それはずっと、仏教の考えだと思っていました。今日、そうではないことを理解できてよかったです。たしかに自分ではどうしょうもない、前世のことで悩むのは辛いですよね。今日の講義で、イコンの辺りからよく分からなくなりました。すいませんが、もう一度説明してもらえるとうれしいです。（2年女子）
（イコン云々は再説しますから待っていてください．前世の業と仏教との関係について，今ちょうど論文を書いているところです．できあがったら是非読んでみて下さい．）

古典の作品で「前世の行いが悪かったからこのような不幸が自分に降りかかるのだ」といっているものが多かったことから、昔の人は釈尊の教えをきちんと理解していなかったのだな、と思いました。（2年女子）
（その通りです．でも，古典の作者だけのせいとは言えません．彼らに仏教を伝えた伝え方に一番の問題があったのです．）

カーシャパが聖典編纂会議をしたことが何故教えに逆らうことになるのか初めはわかりませんでした。しかし、処方箋の話を思い出して納得しました。やっぱり重要なことは何かに書き記して次に時代に残したいと考えるのは、自然な人間の行動だと思います。しかし、それが教えを理解していない行動だと知って、仏教の教えを実践するのは本当に難しいと感じました。（2年女子）
（誤解があるようですね．釈尊の当時，聖典が編纂されたと言っても，それは書物のかたちでまとまったのではありません．当時は全てが口伝（くでん）であって，記憶して伝承したのです．）

自分ではどうにもできない過去のことを悩んでも仕方ない、未来の自分で責任を取れることにはしっかり責任を取れという釈尊の考え方が前向きなのにちょっと親しみが持てました。（2年女子）
（あなたのいう過去が「過去世」「前世」という意味なら，その通りです．そうではなくて，「自分がこれまで辿ってきた道」という意味なら，その責任はどこまでも本人にかかってきます．）

存在と時間の話は難しいです。過去世（自分が生まれる前の、どうしようもない時期）については責任なんて考えず、悩まないようにしましょう、とあり、ただし、未来世は今の自分が影響してくるから、未来については責任を取りましょう、というより、今をしっかり生きましょう、ということでいいのでしょうか？？？ということは、自分が死んでしまった未来世については、悩まなくていいということですか？？？（悩むとしてもどこで悩むのでしょうね・・・）
あと、教えを確定することは、方便を終わらせてしまう、という考えには納得しました。確定してしまっては、それに合わない人は救われません。釈尊の教えは誰にでも適合するための方便なのですから。（2年女子）
（太線部：ご名答です．
　未来（未来世を含む）については責任を取るのです．「過去世→現世」は問わず，「現世→未来世」は重要視するのが，仏教の業論の基本形です．）

釈尊が入滅して、生と死のサイクルから抜け出したと考えるその根底にあるのは、バラモンの言う輪廻（という考え方）とは違うものだと考えていい、のですよね？つまり、インドにはもともと生と死のサイクルという考え方があって、それにバラモンが味付けを加えたものが、バラモンの言う輪廻だと。そういうことでいいのでしょうか。（2年女子）
（そうではありません．生死輪廻の観念は，ヒンドゥー・バラモン教の産物です．仏教はインド固有の思想を部分的に受け継いだり受け継がなかったりしています．このあたりのことはちょっと複雑なのです．）

(1) サンスカーラの時間の解釈の１では過去世は自分の責任はないので思い煩うことはないと説いていていますが、３の「過去を憂えず、未来を不安がらず、今をきちんと生きよ。」という、この場合の過去と未来はその人の人生の中の過去と未来ということなのでしょうか。それともこの場合も過去世、未来世をさしているのでしょうか。
(2) また、結集のところでも出ましたが、残した教え（方便）がブッタであるということは、ブッダ以外は新たな方便を説いてはいけないということになってしまうのでしょうか。
（3年女子）
（(1) どちらでもよいと思います．原意からすれば前者の可能性が高いですが，結局「今をきちんと生きる」ことができれば，解釈はどちらでも構いません．
　(2) 原則的にはそうである場合がほとんどです．ですが，ブッダは釈尊一人とは限りません．）

「諸行無常なのだから今を生きる」ということがすごく心に響きました。"今"という時間は本当に今しかありません。しかし、それを分からずにダラダラと過ごしまう自分がとても恥ずかしくなってしまいました。(1)これからは釈尊の教えに従おうと思います。
それと「釈尊の死＝入滅」という考え方にも感心しました。だからこんなにも長く仏教が信じられてきたんですね。すごい!!!一応、私の宗教は仏教なのですが仏教に関してよくわからない部分がまだたくさんあります。だから、もっと仏教について知りたいとも思いました。(2)うまくレポートが書けるか今から不安です。（2年女子）
（(1) 凄いっ!!
　(2) うまくなくても結構．あなたの理解のほどを，誤魔化さずに示してください．分からないことがあれば遠慮せずに研究室に来てください．）

サンスカーラの時間の創造について。過去世を否定して、未来世を肯定している。しかし、これはあらたなサンスカーラを生むのではないか。現在は常に過去になり、未来は着実に現在となるのだから。これは、西洋的学問体系での考え方であるかもしれない。
過去にとらわれず、未来を恐れず生きるのは難しい、その意味では、未来世を否定しなかったのは釈尊の残した救いなのかもしれない。（4年男子）
（未来世はご指摘の通りサンスカーラの産物です．その点に限れば過去世と変わりはありません．両者の違いは，過去世は変えることができないのに対して，未来世は今生での努力によって変えることができることです．「リンゴに向う」のであれば，サンスカーラも積極的に活用するのが仏教なのです．）

自分の存在は「ずっとあるもの」でも「ない」ものでもない、そうではなく「存在が単にいまここにある」、諸行無常であるからこそ「今行動せよ」ということを聞いて、このサンスカーラがたくさん存在するこの現実で生きる事を少し肯定できるような気がしました。今生きる事を大切にするというのは、あちこちで聞く言葉ですが、本当にそう思い、自分の生き方で実行している人がどれだけいるのでしょう。今までの授業を受けてきたわたしには仏陀の言葉は、深くしみました。（4年女子）
（生きることは無条件で肯定されますよ．人間は幸せになるために生きているのです．）

釈尊はいつも中立の立場に立っているように思えますが、今回はそれを特に感じました。バラモンや反バラモンのように存在がある、ないをいうのではなく、「今ここにある」ということが重要なのですね。この概念は素晴らしいと思いました。（2年女子）
（私が掴み取ることのできる時間は「今」しかないのですから．）

今回は、「今を大事にする」という言葉がとても心に残った授業でした。
過去に囚われて前に動き出すことができないのはもったいないことだし、ましては、過去世なんて今の自分とは別のものだと私は思います。だから、過去(世)を理由に動きだせないのは、私は「ダサい」と感じます。だけど、自分も過去にこだわってしまうので・・・変えたいところ(性格)です。
結局、「今をを大事にする」とういうことは、「自分を大事にする」ということだと思います。過去の今、いない自分に影響されるよりも、今、生きている自分を信じて生きることの方が大事です。（2年女子）
（おー，パチパチパチ :-) ）

今回の授業はとてもわかりやすく感じました。その中では釈尊の教えの、今が大事という部分に感銘をおぼえました。過去を反省すると後悔に、未来を洞察すると不安に囚われるというのはよくあることだと思います。だからこそ、それらの状態に囚われないように、怠ることなく励み、今をしっかり生きなさいというのが、釈尊の教えであるというように理解しました。今回の授業に限らず、この授業は自分の身を振り返って、色々と考えることの多い授業だと思います。（2年男子）
（学生のうちにいっぱい考えておこうよ．）

釈尊の今を生きよといった言葉の通りにできる人は周りに何人いるだろうかと考えました。自分はいっつも過去のことはとても気になるし、未来のことを考えてあくせくしています。釈尊の言葉にのっとって生きることが出来たら、過去のことも未来のことも不安がらずに生きていけるのだと思いますが、それはなかなか難しいことだと感じました。（2年女子）
（私もそう思います．）

カーシャパが中心となった聖典編纂会議に、「方便が終わってしまう」という落とし穴があることにはなかなか気付けないと思いました。今までに遺した教えが素晴らしいものであればある程、それを知りたいと思うでしょう。アーナンダのように共に旅していても、知り得ないことは沢山あっただろうと思います。釈尊が入滅してから仏教について知った者には、まとめた物があった方が分かりやすいですし。しかし結局は自分自身で、多様なサンスカーラを除く手段があるわけです。だからこそ釈尊の教えも一辺倒ではなかったのだなぁと今更ながらに納得しました。（2年女子）
（納得していただけましたか．何よりです．）

毎回釈尊の言葉や教えを聞いて、自分を見つめ直すことが多くなったように思います。釈尊の教えは奥が深いとたびたび感じます。こういった基礎的ことは忘れてしまいがちだけれど、最も大切なことだと思いました。今を生きる。当たり前のことをきちんと出来る人になりたいです。（3年女子）
（釈尊は当たり前のことを当たり前のように成し遂げました．だから彼は当たり前ではないのです．）

今回釈尊の『今を生きなさい』という言葉を聞いて、そういえば少し前に『今を生きろ』をテーマにした人気ドラマがあったなぁ・・と思い出しました。最近 ＦＦ IX をしている影響もあってよく「生きるって何だろう？何のために生きているのだろう？」と考えることがあるので、この釈尊の言葉は何だか身にしみたような気がします。過去を怯えず、未来にも怯えず生きるということは決して容易ではないと思います。『今を生きる』＝当たり前のような言葉ですが、この言葉の中には計り知れないほどの重みがあるな・・と感じました。今回も内容は難しかったですが、興味深かったです。（2年女子）
（FF IX やっているの?? おお，同志よ!!）

今回の講義では、アジア文化論I と同様に過去・現在・未来に対する釈尊の考え方が印象に残りました。バラモン教における前世・来世と関連づけて時間を捉える考え方は、自分の存在が無になることに対する恐怖は取りのぞいてくれるかもしれませんが、｢今ここにある時間｣をおろそかにしてしまう側面があるのではないかと感じました。（2年女子）
（そうそう (^^) ）

自分自身を見つめることが多い授業だなぁとも思いました。頑張ります。（4年女子）
（おう，がんばるんだぞ．約束だぞ．）

私にとっての時間はとても重要なものです。前世の自分がどんな感情を持ち、罪を犯したかは想像つきませんが、とにかく今この世で生きているということが大変重要に感じられるんです。バラモンの教えでは前世の業のような責任をとれないことは現在の自分とは切り離して考えているというようなことですが、私もそれには納得できるような気がします。この世に生を受けたということ自体、前世からのお告げのような気がするからです。そして、やはり自分は自分という個性を持った人間だから･･･まとまらなくてすいません。（2年女子）
（あなたがそれで安心して生きられるなら，仏教的には全く問題ありません．）

過去を振り返っては後悔したり、また、未来に不安を抱えるのではなく、「今」行動を起こすべきだという教え~~仏陀観~~が特に印象に残りました。頭では分かっていても過去や未来にとらわれてしまい動き出すのをためらうことがよくある私にとって、今回の講義は心にしみるものでした。この教え~~仏陀観~~を私も大事にしようと思います。また、釈尊は「死んだ」のではなく「入滅した」と考えることになるほどと納得させられました。そして、仏教の聖典をつくると方便が終わってしまうということにも衝撃を受けました。仏教はとても筋が通っている宗教だと思います。（2年女子）
（仏陀観は，「ブッダとはどういう存在であるか」に関する観念のことです．
　「不合理であるが故に信ずる」という宗教もありますが，仏教はそれとは性格を異にしています．）

釈尊釈迦の遺した教えがこれからのブッダとありましたが。遺した教えと言うよりも処方箋の出し方が遺した教えなのだと思いましたが、解釈が間違っているでしょうか？多くの人々に出した処方箋を集めるのは前例として見るには大変いいことだと思いますが、この処方箋を釈尊釈迦の「教え」と決めてしまうと、先生が授業の最後の方でおっしゃっていた教えを確定することで処方箋の範囲を決めてしまい、”方便が終わってしまう”ということになると思います。どうでしょうか？（2年女子）
（NG ワードの連発にイエローカード一枚目．
　「処方箋の出し方が遺した教え」，うーん，しびれる解釈です．NG ワードがなければ素晴らしい感想でした :-) ）

釈尊は決して“死んだ”のではなく“入滅した”のである。以前釈尊の死に触れた感想を書いたとき、仏教用語として“入滅”という言葉をたまたま知っていたので何気なく使いましたが、死んだという言葉と入滅したという言葉が違う意味を持つとは全く知りませんでした。この話を聞いた時、あぁ入滅という言葉を使っててよかった～と密かに思いました･･･
質問ですが、釈尊は“今”を生きなさい、“過去”に生きるなと説いたわけですが、自分では責任は取れないことは分かっていながら、過去の過ちと向き合いながら、悩みながら生きたいと願う人（変わった人ですが）にはどのような教えを説いたのですか？やはり、処方箋・方便的方法を用いて教えを説いたのでしょうか？（2年女子）
（まず確認しておきたいのは，釈尊の教えに「処方箋・方便以外のもの」はありません．全てが処方箋・方便なのです．
　さて，「過去の過ちと向き合う」ことは全く問題ありません．本人に全く身に覚えのない「過去世の責任」まで背負い込むことはないと釈尊は説いたのです．）

釈尊は死んだのではなく、入滅したのであり、輪廻転生しない、ということは、(1)チベット仏教のダライ・ラマはどうなるのでしょうか？確かダライ・ラマは死ぬたびに生まれ変わりが現れていると思うのですが、それは解脱していない、ということなのでしょうか？それともその辺りの解釈がチベットに入った時に変わったのですか？
釈尊の死後、教えを確定してしまったことで、方便が終わってしまったのは、ある意味しかたのないことなのかも、と思いました。講義を聞いた感じでは、釈尊の教えを理解していない弟子もいたようですし、そのままでは結局めちゃくちゃになってしまったのではないでしょうか。
(2)方便とは、共感性の高い釈尊だからこそ出来た教え方だと思うのです。（2年女子）
（(1) ダライ・ラマは観音菩薩の化身とされています．インド以来，観音菩薩はすでに修行を終え輪廻転生しなくても済む資格がありながら，あえてこの輪廻の世界に留まって，人々を救済し続けていると考えられています．ただし，転生ラマの発想はたしかにチベット独自のものです．
　(2) 共感性の高い人は釈尊以後も出てきたのです．そうでなければ仏教は滅びているでしょう．）

釈尊の入滅するという言葉は奥が深いですね。インドでは人は死んだら生まれ変わるということになっていることを初めて知りました。ポジティブな考え方で好きですが、新しく生まれてきた人が、〇〇の生まれ変わりなんていい方をされたらどうだろう?と少し考えてしまいました。
過去に関して、自分ではどうにもならないことで悩まなくて良い、未来に関してしっかり責任を持て！というのはまさにそのとおりですね!でも頭では分かっていてもそれが難しいんですよね・・・・。（2年女子）
（下線部：インドは生まれ変わりの宝庫ですよ (^o^)
　太字部分：「分かっちゃいるけどやめられない」　そのために宗教があるんです．）

入滅という言葉を意識せずに使っていましたが、言葉にはその言葉なりの意味を持っているのだと改めて感じました。
聖典の編纂は、俗な言い方をすると、マニュアルを作ってしまったと言うことになるのでしょうか。それならば、マニュアル化のすべてが悪いと言うわけではありませんが、やはり過度のマニュアル化には疑問視せざるをえません。聖典編纂の功罪は、難しく、大きなものだと思います。
ところで、イコンとはキリスト教の東方正教会などに見られる、聖像・偶像（こういっていいのか分かりません。確か東方正教会は偶像崇拝禁止だったと思います）のことだったと思いますが、英語？にしたことに意味はあるのでしょうか？（2年女子）
（下線部：学界における用法を踏襲しました．
　太字部分：お見事です．）

「過去を憂えず、未来を不安がらず、今をきちんと生きよ」。釈尊がそうやって生きて欲しいと願う事に、私自身もそう生きていけたらなと考えてしまいました。この教えこそ、時代を問わず全人類に与えられるべく処方箋ではないでしょうか。
ブッダの入滅後聖典の編纂が行われ、処方箋の合わない患者は切捨てられる、というところで講義が終わったので「これは仏教じゃない…」と思ってしまいました。方便が終わってしまうとその時点で仏教は幕を閉じそうな気もしますが、今日にしっかりと伝播しているので、その後仏教（釈尊の教え）がどのように受け継がれていったのか、早く知りたいです。
質問ですが、三法印や四法印の「印」とはそもそもどういう意味なのでしょうか？（3年女子）
（しるし，指標となるもの，といった意味です．）

今日の内容もだいたい理解できました。自分が行ってきた過去に対していつまでも後悔していても前へは進めない、未来に対してもあれこれ考えておびえていてもどうしようもない。それよりも今できることをやりなさい、という、生きている「今」を大切だとするブッタの考えに共感しました。私は最近物事にいきづまったりすると、「小さかった頃に戻りたい」なんてどうしようもないことをよく考えて悩んでいたのですが、今日の話を聴いてそんなことで悩むより今在ることを大事にしなきゃと思いました。釈尊入滅後、弟子たちが聖典を編纂したことで方便が限定されてしまうという、釈尊の説く仏教とは違うものになってしまったのは事実ですが、彼らがそのようなものを書き記したことで後の人々がブッタについて多くのことを知ることができたというのも事実だと思います。でも方便を聖典に書き記すのではなく、何か違うものに資料として書いておけば良かったのかも知れませんが...。難しいですね。阿難はそのことを一番よく解っていた（解っていなければいけなかった）のではないだろうかと思いますが...。（2年女子）
（いやー，私は説明しようとしたことを先に言われてしまいました．感心，感心．ただし，「書き記し」てはいません．彼らは「記憶」したのです．）

直接関わることのできる時間＝「今」は決しておろそかにしてはいけない。私の「今」の行動を規定しているものは確実に「過去」の経験である。しかし、いつまでも「過去」に囚われてはいけない。また、「未来」に重点を置くことで、不安に駆られることも多い。「今」に視点を置く前向きな考え方、私は好きです。しかし、今の私を振り返ると過去に対する後悔と将来への不安で足がついていない状態です。釈尊の考えはわかるのですが、当たり前のことが当たり前にできない、これがほとんどの人間なのではないでしょうか。それができる人間になろうと心がけること、これが大事だと思います。（2年男子）
（太線部：そう，そう．分かる，分かる．私だってそうだもの．だから大乗仏教があるのです．）

人間が直接的に携わることが可能な時間は「今」という一瞬のみであり、その「今」を重視し、行動するように説く釈尊は尤もだと感じるが、やはり過去や未来について想う心は切ろうとしても切り離せないもので、すべきことや正しいと思われることをわかっていても出来なかったり、今を大事にしたいと願っていても出来ていないことが多く「そんなことはわかってはいるんだけどさぁ…」と釈尊に対してつい言ってしまいそうだ(釈尊の考え方を否定する訳ではなく)。心の安定というものが在るのかすらわからない。毎回こういった感想ばかり述べている私に対して先生が「ある」とおっしゃる処方箋なんて見当がつかないのだが…。また、ブッダの入滅後、よかれと思って編纂した聖典によって方便が成り立たなくなってしまう問題が生まれたという話を聞いて、仏教の奥の深さを感じた。やはり釈尊の教えをしっかり理解出来るようになるには一筋縄ではいかないようだ、と。（2年女子）
（講義するのが一層嬉しくなるような感想をありがとう．）

【総評】釈尊の遺言に感銘を受けつつも，「そうは言っても実行できないよ」という正直な感想がかなり見受けられました．自分の問題として受けとめてくれたという意味でも，非常に嬉しい感想です．「分かっちゃいるけど止められない」からこそ宗教があるのです．大乗仏教を待たれよ．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

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