仏教文化 2003/10/17 No. 3

10/17 授業の感想3号と回答

感想3号（総数 71）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

今回からサンスカーラの説明を開始しました．みんな，ついて来いよ!!

サンスカーラにはこんなにも沢山の意味があることを知ってとても驚いた。あと、時間は神と人間との共同作業によって創出されるというインド特有の考え方が凄く面白いと思った。夜に明かりのためにともす火を「地上の太陽｣として扱うという考えはさすが！！他にもインド特有の考えなんか、ありますか？（2年女子）
（そりゃあるよ．satya や輪廻だってインド的思考の産物だよ．）

「通過儀礼」については、以前に違う授業で学びました。それを表現している映画の例の一つとして、「スタンドバイミー」が挙げられます。主人公は死体探しをするために自分が住んでいる町を一日離れました。その小さな旅の中でさまざまな「通過儀礼」につながるものを体験したのです。サンスカーラが「通過儀礼」ともいえるということを聞いて驚きと関心を抱きました。生と死などの、すべての時間を創りあげるものと考えると、私自身でも少しはサンスカーラを理解できたような気がしました。とりあえず・・難しかったです。（2年女子）
（サンスカーラはこの講義の中心となる観念なので，何度も繰り返し説明します．）

サンスカーラの話は前回のアジア文化論の時にも聞いたことがありましたが、今日もう一度聞けて良かったです。先生の恋愛を例にした話で、特に「失恋してＡ君は成長していくわけですが・・・」という言葉にぐっときました。（笑）そうなんですね～。なるほど。と思って聞きました。（笑）前のアジア文化論の質問にも書いたかもしれませんが、サンスカーラと「妄想」は同じものなんでしょうか。妄想も相手をいいように想像して、自分の思い通りに仕上げるというところではつながる部分があると思うのですが・・・。同じ質問だったらすみません！（2年女子）
（♪みんな悩んで大きくなった～
　さて，サンスカーラにはマイナス面もプラス面もあります．悪しきマイナスのサンスカーラは「妄想」と言って構いません．プラス面や通常（マイナスでもプラスでもない）のサンスカーラは「思い込み」と言った感じでしょうか．）

最後の毒矢の絵の血が色・書き方共にリアルでした…
太陽は朝(日の出と共に)生まれ、夜(日没と共に)死ぬものだという考え方は何も知らなかった昔ならではの考え方なのだと思いました。ただ、太陽が死んだあとも生まれ変わらせる為に人間が火を焚いている~~炊いている~~というのには、想像もつかなかったので少し驚きました。（2年男子）
（下線部について．では，今の私たちは何を知っているでしょうか．多少の知識は増えたとしても，「知恵」という点では五十歩百歩なのではないでしょうか．逆に昔の人の方が知恵が優れている場合だってたくさんあります．知識量の増加と賢さとは必ずしも比例しないということを学んで，「何も知らなかった昔」のような言い方をするべきではないと思うよ．
　絵について：僕って写実主義なのかなぁ :-) ）

「行」というと、僧や尼さんが行なうものというイメージがあったけど、今日のサンスカーラの話を聞いて、どうやら私たち人間が誰でも無意識に行なっている日常の行為の一つなんだということがわかった。ストーカーの例えもあったけど、最近はサンスカーラを崩しきれず、犯罪に走ってしまう人が多いと思う。（2年女子）
（あなたの言っている行は「チャリヤー caryaa（修行）」の訳語としての行で，サンスカーラの訳語としての行ではありません．なぜサンスカーラの訳語が行となるのかは，次回以降お話しする予定です．）

授業面白かったです。サンスカーラについて自分では結構理解できたつもりです。りんごの味とか人間関係の例とかすごくわかりやすかったです。Ｅ君の顔がとても気持ち悪くて印象的でした（笑）（2年女子）
（皆さんも Eくん，Eさんにならないようにしましょうね (^o^; ）

サンスカーラとは実際どういうことなのかが分かってきた気がしました。名前がついていると特別なことのように思えましたが人間誰でも持つ心理であったことにちょっと驚きました。人間はすべてを分かることはできないというのはその通りやなーと思いました。でも分かってしまったらこの世界が存在する意味がなくなりそうですよね。分からないからこそおもしろいということもあるなーと思いました。（2年女子）
（下線部について．たしかにそうなんですけど，その人の実存に関わるような問題や，病・死などに関わる問題に直面したとき，人はどうしても解答を欲しくなります．そのとき誤った選択をすると，本当の悲劇が訪れるのです．）

太陽の話が印象に残りました。
生まれてから死ぬまでに神が入れ替わって（？）いるところにも驚きました。生まれたときが女神で、死ぬときはその女神の夫の神だそうですが、太陽が男性的、月が女性的なイメージで捉えられたり、黄泉の国にいったのは女神であったり、女性のほうが「暗」のイメージが多いように思いますが、そのような捉え方はしないのかなあと思いました。今日の授業とはあまり関係のないことですみません。
サンスカーラについてはなんとなくわかったような気がします。素敵な絵付の説明はわかりやすいです。（2年女子）
（ヴェーダ文献に女性の神格が少ないのは事実です．）

太陽は朝生まれ、夜になったら死ぬという考えに興味を持ちました。輪廻サイクルが確立されている仏教ならではの発想だと思います。（2年女子）
（それは完璧な誤解です．輪廻サイクルが確立されているのはヒンドゥー・バラモン教においてであって，テーゼとアンチテーゼの枠外にいる仏教にとって，輪廻の観念はサンスカーラの産物です．）

サンスカーラという考え方、自分の中にも存在しているかもしれないと思いました。人間はわからない部分があると不安になる、確かにそうかもしれません。そのためにそれを自分の中で補い、勝手に想像して認識したつもりになる。これは、少し間違えれば取り返しのつかないことになる気もして怖い、とも思いました。しかしサンスカーラはとても興味深い内容でした。次回の授業が楽しみです。（2年女子）
（楽しみにしていて下さい．）

人っていうものが在るからいろんなタイプの思想が生まれるわけで、他人の心中を「認識」しようとするからまた知らないうちに考え込んでいたり・・・。Gautama Siddhartha も人という私と同じ生き物で、でも果てしない思想を繰り広げた脅威の人物にも思えます。何を伝えたいか明白に表せ現せませんが、いろんなことを考えるとき、「私は今生きている」と実感するんです。どんなことがあろうと毎日自分が存在しているということは幸福であり、ありがたいことです。はい。（2年女子）
（「今を生きること」も諸行無常の真髄の一つです．）

サンスカーラがどのようなものかは何となく分かってきたけど、一つ質問があります。先生がいろいろ挙げてくれた例に関してなのですが、ある人がＡ君のことを実際に全部は見えていないのに「こういう人だ」と思っている像がサンスカーラなら、「リンゴはこういう味なんだよ」と教える時に、その人が思っているリンゴの味はサンスカーラではないのですか？リンゴの味の像もその人が思っているものであって、他の人は違う味の像を思っているかもしれないし、本当のリンゴの味だとは言えないのではないでしょうか？（2年女子）
（ふむふむ．たしかに突き詰めればそういう見方もできないでもありませんが，昔から「譬喩一分（いちぶ）」と言われていますからね．「譬喩はあくまで譬喩でしかなく，そのものズバリではない．10% でも共通部分があれば御の字である」という意味です．
　でもこれでは納得のいかない方もいるかも知れません．そこで，あえて「譬喩一分」の限界に挑戦したいと思います．リンゴの味の場合は食べることで経験できますよね? 少なくともその経験はホンモノ（リアル）なわけで決して虚構ではありません（←でも，ちょっと苦しい説明であることは私も承知しています）．また，リンゴの味は各自で変わっていていっこうに構いません．真実は人の数だけあるのです．そこが真理と真実との違いでしょう．経験していればどれでも「本当のリンゴの味」なのです（←こっちの説明はかなりうまくいっているはずです）．）

サンスカーラのお話は前回のアジア文化論でも聞いたはずなのに、やはり難しく、朝の頭ではなかなか理解し難いものがありました・・。しかし、やはり先生は例え話がお上手ですね～！A君のお話はとても身近に感じられて、面白かったです。次回も楽しみにしています！（2年女子）
（では，もっと早起きしましょう :-) ）

無明とは、すなわち真理に暗いということ、とありました。ということは、無知であると言うことではないでしょうか。無明に気付けば、サンスカーラも分かる。これがすなわち「悟る」と言うことなのですか？もしそうであれば「無知の知」に似ていると思います。（2年女子）
（「無知の知」は，無知であるということを知っている人は，無知であることを知らない人と比べてより多く知っているという意味です．一方の「無明」は苦の根元であり対治されなくてはならないものです．自分は無明という状態にいることに気づくことはもちろんですが，それに気づいただけでは覚り（さとり）にはなりません．）

今日の講義を通じて、サンスカーラについて少し理解できたような気がします。特に、他者のイメージを無意識に創り出しているというのには、うんうん！納得しました。ということは、私自身も、周りのみんながそれぞれに見た、いろんな虚構の私が存在するんだろうなぁ！面白い！　また「諸行無常」の神髄に一歩近付けた気がしました。次週が楽しみです。（2年女子）
（おお，なんと頼もしい．）

まず、「苦」が「自分の思い通りにならない」という「苦」だということに納得しました。私は最近、色々考えることがあって、苦しんでいました。今日の講義の中で、それは思い通りにならないからだと気付きました。私はしばらくはこの「苦」から抜け出せそうにありません。
それと、太陽が朝生まれて、夜死ぬという考え方が新鮮でした。神と人間が時間を創り上げるというのを聞いて、これは大役だと思いました。でもこれだと客観的に見ていますよね。サンスカーラは主観的に見て、ということだったので、他人事のように捉えていてはいけませんね・・・。（2年女子）
（「これは主観的に観るものなのだ」と客観的に観ることは，学問の方法論から言って正しいですから安心してください．）

Siddhartha が苦行で死ぬ直前まで挑戦したということに驚きました。ガーンディー~~ガーンディ~~のようなヒンドゥー教徒なら（断食する目的が異なりますが）おそらく Sujaataa の持ってきた乳を飲まずに死んでいたでしょうが、そこが Siddhartha の仏教とヒンドゥー教との違いなんでしょうね。ただ写真でみたような状態になるまで苦行を続けたということに Siddhartha が抱えていた疑問はそうとう根深いものだったのだと思いました。少し疑問に思ったくらいではあれほどまでできませんよね。サンスカーラの観念の部分はよく理解できませんでした。十二支縁起の第二支のところをもう一度説明してほしいです。（2年女子）
（下線部について．そうではありません．ガーンディーも釈尊も satya の力を大変重んじた人です．ただ釈尊は，死に瀕するほどの苦行を実現することによる　satya の力に頼ることを放棄したのです．これは，その力によって何をしたかったのかにも関係します．ガーンディーの場合，身を賭してでも暴動を止めたいという想いがあったわけですが，釈尊の場合は当時の流行に従ったに過ぎない側面が強いという違いがあります．彼はそこから苦行の意味，宗教の意味を観察していくようになるのです．）

サンスカーラの話に考えさせられました。私たちはある人・物などの一面しか見ていなくて、あとは虚構でつくり上げている。そして③の説明では世界ですらサンスカーラの虚構からできていると知り、確かにそうだと感じました。例えばテレビで見るある国の美しい景色などから虚構を作り上げるけれど、実際は環境汚染など様々な問題をかかえていたりするといったようなことがあります。でもサンスカーラによって虚構が作り上げられなければ、私たちは生きにくいようにも感じました。（2年女子）
（だからサンスカーラは「日常生活を送るにはある程度不可欠なもの」なのです．）

今日はサンスカーラの説明で、人は人を全部見ているのではなくて、実際には半分しか見ていなくても虚構により人にしてしまうというのになるほど、そうだなぁと共感してしまいました。確かに逆の立場に立っても、自分のことを本当に全部分かてってくれる人は自分以外には誰もいなくて、その自分さえも、人から見ればまた違う自分で結局その人それぞれの考え方から成り立っているような気がした。それが、りんごの味にもつながっているように感じました。つまり、りんごの味をどれだけ説明しようとしてもそれはその人のみの味であり、本当の味は食べて見なければ絶対に分からないのだということですよね。（3年女子）
（その通りです．）

サンスカーラの話で、人は無意識に思い込みをして、実際のものが見えてないということに、なるほどと思いました。この講義では毎回、身近にあるよくあることから発見があって楽しいです。（2年女子）
（宗教は身近なものですからね．）

サンスカーラとはという話を聞いて、リンゴのたとえのおかげで、なるほど！と思いました。人間が触れているすべてのものは、結局は主観で捉えられたものであって、自分の認識であるということを知って、今まで深く考えたことがなかったので驚きでした。私たちは虚構を作り上げて勝手に理解しているけれど、それはこわい事だと感じました。でもすべての真実を知るのもあり得ない事だし、こわい事だと思います。正しい認識、正しい判断、正しい行動ってあるのですか？（2年女子）
（それを獲得し実践した人の一人が釈尊です．）

だんだんサンスカーラの真相に迫ってきてより面白くなってきました。りんごの味の例や虚構の人物像を創り上げてしまうという例で、サンスカーラの意味の第二番目がよくわかりました。でも三番目の意味に「形成力によって認識されるすべての存在」とあります。ということは、サンスカーラの指すものは人の目を通して創り上げられた虚構の（認識の）世界ということなのでしょうか。そして「諸行無常」に返って当てはめてみると・・・などと考えましたが、難しくて混乱してしまいました。早とちりはせず、これからの講義を聴いてわかるようにしたいと思います。（2年女子）
（じっくりお付き合い下さい．）

今日の講義ではサンスカーラについてより深くわかりやすく学べました。まずサンスカーラが無明から発生したことを知って Gautama Siddhartha っていう人はよくここまで人間の心理を追求したなと関心しました。どこか心理学みたいでした。私たちが思想を学ぶ時、なるほど！とは思うけど、実際にそれを最初に理論立てて発見することはかなり難しいと思うからです。そしてサンスカーラの内容も言われてみれば確かに！と思いました。人は多種多様だから全てを分かるなんて無理だし、自身のことだって分かっているようで分かっていない部分があるけど、それだと途端に不安になってしまうというところに人間の心のか弱さというか寂しがりやというかそんなものを感じました。まさに人間は「考える葦」ですね!?葦って細いから…(^^；だけど、そういう営みを相互にしながら人間関係が成り立っているから、一歩間違えればストーカー犯罪とか誤解とか生じてしまうのかということも理論的に見ることができたと思います。次回も楽しみにしてます。（2年女子）
（仏教って案外面白いでしょう? ）

シッダールタが苦行の後の瞑想によって無明　avidyaa に気がついたというのが興味深かったです。しかし、私は修行僧が苦行というか自分の身体を痛めつけて悟りを開こうとするのをテレビで見たことがあります。開祖である釈迦が苦行ではなく瞑想で悟りを開いたのに、これは矛盾しませんか？修行僧がするべきなのは瞑想であって苦行ではないのではありませんか？（2年女子）
（苦行の程度とその目的にもよります．釈尊が遠ざけたのは「心の安定から遠ざかる極端な行動」でした．また，修行僧がどこの国の人なのかによって文化背景も異ります．「苦行」の内容も含め，もう少し詳しく書いてくれるとコメントしやすいです．）

(1) ＥはサンスカーラとしてのＢ’をどうして壊すことができないのでしょうか。サンスカーラとしてのＢ’を壊せないからといって、なぜ実在するＢを消すことができるのかがわかりません。虚構をいつのまにか実在として把握してしまうことはわたしにもあります。しかし、そこには虚構によって感じる違和感も同時に感じることが出来ます。だから、わたしはサンスカーラとしてのＢ’を守るために実在のＢを消すというＥのようなことはできません。どうしてＥはＢを消すことができるのでしょうか。
(2) また、主体的に認識されたある人にとっての世界をそれがサンスカーラの形成力によってつくられた「虚構」であると誰が言うことができるのでしょうか。その人と同じようにわたしたちも自分で作り上げたサンスカーラの世界を生きていると思います。どうして他人のそれを「虚構だ」と言うことが出来るのでしょうか。本人が虚構だと思っていないその世界をどうやってそれが虚構だと示して見せることができるのでしょうか。（4年女子）
（(1) それはあなたが「マトモ」だからです．マトモな人は B と B' とのギャップに気づいたときに B' の方を修正します．
　(2) サンスカーラの対象が現実世界に存在するもの（真実）である場合（例えば B さんのような場合）は，B と B' とのギャップを認めさせることで虚構であることが知られます．サンスカーラの対象が経験や論理では計ることのできない場合（＝形而上学的問題の場合），虚構であることを「論理的に」示すことは不可能です．）

サンスカーラとの関わりが掴み難かった、「十二支縁起」という言葉に、もう少し説明を加えて頂きたいと思いました。十二支というと、日本でいう子･丑･虎･･･のイメージが強いので少し困ってしまいました。（2年女子）
（「縁起がいくつの支よりなるか」は講義の本筋とは余り関係がないのでさらっと流してしまいました．研究室まで来れば直接教えますし，また，自分でも簡単に調べられますよ．）

(1) サンスカーラで神と人間との共同作業によって時間が創り上げられる、というインド特有の考え方を知りました。太陽の話ですが、神が太陽を生まれさせ死なせているのですか、それとも神は太陽なのですか。
(2) 第２回に書きそびれたのですが、質問があります。三大世界宗教の最終目標は、キリスト教・イスラム教においては天国・神の国にいくことであり、仏教においてはブッダとなることであるとおっしゃいました。仏教で、浄土に往生するという言い方をされるのはどういうことでしょう。(3) また、キリスト教やイスラム教の天国・神の国とは死後のことをいっているのですか？（3年女子）
（(1) 太陽も神の一員です．ヴェーダの神は「いまいち弱い神」で，神と人間（バラモン）との共同作業で世界を動かしているのです．講義の最初で注意したつもりなのですが，あなたはまだ「一神教的な神」の観念にとらわれていませんか?
　(2) 往生とは読んで字のごとく「往（い）って生まれる」という意味です．まだ成仏できない（ブッダになれない）人は，ブッダの世界である浄土に往（い）って生まれて，そこで修行をしてブッダを目指す，というのが往生の基本的考え方です．
　(3) 死後の世界とするのが主流ですが，「神の国は汝の内にあり」という言い方もされるようです．）

今日の講義で段々と釈尊の教えが見えてきたように思います。初回の講義で教わった「全てのサンスカーラは同じ状態にない」の意味が徐々に分かってきました。サンスカーラとは「完全に作り上げること」から完成という意味でもあり虚構という意味でもあります。ということは広い意味ではその人にとって安心を与えることもあるけれど、ストーカー犯罪の例えのように望ましくない方向へ導くこともあるということなので、サンスカーラとどう付き合うかは本当に自分次第なんだなと感じました。サンスカーラによって捉えたものと現実(真実）とのGapつまり仏教の苦は必ず生じますが、それもいつかは「解消」されると考えていたのですか？（サンスカーラ→苦→解消→の繰り返しなのでしょうか？）（3年女子）
（ギャップの解消された状態が，仏教における「涅槃」というものの基本的なありかたです．）

今日の講義は、難しい部分に入ってきた…と感じました。サンスカーラの説明で絵を書いてくださったのがとても分かりやすかったです。ある一部分しか見てなくても、サンスカーラで補い虚構を作り上げる。考えるみると、あまり話した事もない人間の性格を自分自身で虚構したりしている…と思いました。私はどれだけの物事の全てを知って、理解しているのか疑問に思いました。
　仏教では｢これ！」と言った解決方法や解消方法を提示することはなく、自分自身の内面と対話、戦いながら答えを出して行くというイメージが強くなりました。（2年女子）
（それが仏教の「自力」という側面です．「自力」と「他力」の相互補完によって解脱・救済が成就するのです．）

今日の講義は、サンスカーラについての文章の部分を特に難しく感じました。虚構の絵を用いた説明はとてもわかりやすかったです。それで質問があるのですが、(1)サンスカーラに関する文章の二番目で、『日常生活を営むためにはある程度不可欠』『正しい認識、正しい判断を眩ませ、正しい行動を阻害する』とありましたが、これは日常生活で全ての真実を知ることができない以上はたとえ虚構でも足りない部分を補う必要があるという意味ですか？ (2)また、虚構である以上はいつかは壊れると思うのですが(ストーカーの例を除く)、壊すことと新たに虚構を生み出す状況が、内省的というのに繋がるのでしょうか？（2年男子）
（(1) 「必要」というより「それがないと不便」という意味で「ある程度不可欠」と表現しました．
　(2) 壊れることと生み出すことの絶えざる繰り返しを「無常」と呼ぶのであって，「無常」というだけでは内省には結びつきません．）

釈尊はミルク粥を食べて命を拾ったそうですが、食べなかったほかの修行者たちはどうなったのか気になりました。（2年女子）
（五人いたのですが，彼らはシッダールタが覚りを得た後に，最初の弟子となりました．当時はシッダールタほど激しい修行はしていなかったのでしょう．もししていたら死んでしまっていて釈尊の弟子にはなれなかったでしょうから．）

【「♪すじゃ～た～すじゃ～た～、スジャータが10時をお知らせします」、あのラジオＣＭが懐かしい】
　今朝、コーヒーを飲んで学校に行きました。「スジャータ」、使いました。あまりにもタイムリーすぎて、思わず笑ってしまいました。スジャータといえば、「スジャータが○時をお知らせします」というラジオのＣＭが懐かしいです。受験前の勉強の友はラジオ、ラジオのＣＭはスジャータ、コーヒーに入ってるのもスジャータ。（2年男子）
（やっぱりスジャータって有名だよね? 何で授業中は誰も反応しなかったんだろう，せっかく聞いたのに．．．）

サンスカーラについてまだまだきちんと理解できてませんが、すごく興味深いものだと感じました。実は1年の頃のノートに、対象と観察者に間に生じるギャップ＝苦と書いていて、講義中“何故ギャップが苦なんだ？”と考えていたら、苦は思い通りに行かないことという説明を聞いて“なるほど！”と納得しました。この苦から解放され、ありのままを見ることで心の安心が生まれるんですよね。これが、仏教文化。。。なんとなくつながってきたような気がします！来週の講義も楽しみにしています。（2年女子）
（結構，結構 :-) ）

サンスカーラの所での人による恋愛での例え話はとても分かり易かったです。見に覚えがある席のご近所さんは人事ではなかったようですが・・・。（2年男子）
（どうでもいいことですが，よく「人事（じんじ）は人事（ひとごと；他人事とも書く）」と言われます．）

今回はアジア文化論Iのノートを見ながら講義を受けてみました。アジア文化論のときもサンスカーラについて詳しく勉強しましたが、ノートには｢サンスカーラ＝構想力、行｣と書かれていました。この講義では、サンスカーラを｢形成力｣｢行｣とは言うことはあっても、｢構想力｣という言葉はまだでてきていない気がします。先生は意識的に解釈の言葉を変えられたのですか？またそれは何故でしょうか？
それから、インドの現在の時間概念について｢流れていくもの｣とする考えと｢作り上げていくもの｣とする考えでは、どちらのほうがより一般的なのでしょうか。（2年女子）
（「構想力」はどちらかというと私のオリジナルな呼び名でして，「形成力」の方が一般的です．サンスカーラは「その人にとっての世界を構想・妄想・虚構・形成していく」力・作用です．統一しておいた方がよかったですか?
　輪廻・業・解脱の考えが支配的なヒンドゥー教においては，後者が一般的です．）

サンスカーラそのものの存在意義がよく分からなくなってしまいました。何故このように概念的なものをわざわざ名付けて形としなければならなかったのでしょうか。（2年女子）
（名前を付けたから「概念」として把握できるのではないですか? ）

スジャーターの話はアジア文化論のときから知っていましたが、今回は歌ってもらえなくて少し残念でした。（2年男子）
（やっぱりみんな知ってたんじゃん．なら，反応して欲しかったな．）

ストーカーの話が面白かったです。恋愛も一種のサンスカーラなのかもしれませんね。相手を美化して虚像を作り上げてしまう恋愛の結晶化作用。意外と小さい人間だったんだと分かってしまい幻滅する瞬間＝サンスカーラが崩れる時なわけです。だとすれば、恋愛を長続きさせる方法はなるべく相手へのサンスカーラを増大させないことでしょうか。（4年女子）
（恋愛が「惚れたはれた」のうちならばサンスカーラの中でのほほんと暮らしていくこともできますが，発展して「ともに生きていく」という段階になったときには，崩れやすいサンスカーラに頼っていても長続きはしないでしょう．なぜならば「諸行無常」だからです．）

人間は誰しも主観的世界に生きていて、サンスカーラによって様々な考えをめぐらしているということがわかりました。実体のない不完全なものを完全にするということが最初は漠然としていましたが、図を使っての説明でなんとなく頭に描くことができるようになりました。ただ、サンスカーラであるB'を殺すのでなく、Bを殺すという話をよくよく考えてみると、とても恐ろしく、最近多発する男女間の殺人事件などはサンスカーラと現実とが混ざり合って、本来自分の中の虚構に過ぎないものが現実で、思い通りにならない現実のほうを否定し、壊そうとしているのだろうかと思いました。冷静に第三者の目で見るとバカバカしいことのようにも思えるけれど、現実と虚構の区別がうまくコントロールしたくてもできなくなっている人が増えているのではないかと思いました。これは解決できる問題なのでしょうか。そもそも現実と虚構の境界線はどこにあるのでしょうか。（2年女子）
（自分の思い通りにならなければ，それは現実です．その思い通りにならない現実世界の中にあって，「自分は生かされているんだ」と思えるようになったとき，人は単なる「生物学的存在」を超えて「宗教的実存」を獲得できるのだと思います．）

私たちは、解答が無数にある問題を解くことが困難だと経験的に知っています。たった一つの決まった答えを与えられると、それについて他に悩む必要がなくなるからです。今回の講義を受けて私は、定められた解答がないということは、それぞれどんなふうに考えても良いということなんだと思いました。そして、自分自身に照らし合わせて考えた時、この自分自身でさえ『無明』なものに当てはまっていると感じ、自分自身のことさえよく分かっていないことを再確認しました。今認識している自分がほんの一部分だったなら、まだまだ未知な部分がたくさんあって面白いと思います。（2年女子）
（「分からない」ことを不安に思うのではなく，「分からないからこそ面白い」「分からないからこそ発見していく」というプラス面に考えていくことが，仏教をはじめとした真っ当な宗教の生き方なんです．）

いよいよサンスカーラについて詳しく学べそうで個人的には非常に嬉しいです。
[仏教とは何か…]を読んでいたお陰で授業がスムーズに理解できたように思っている。前回よくわからなかった時間論についても今回のサンスカーラの説明①でそういう意味もあるということもわかった。ただ、私はサンスカーラが生じる場合には他の対象(人物に限らず物事も)との接触があるものだと思っていたが、自己理解(それも他者との関係があるからこそ生じるものではあるが)においても虚構が存在するということは盲点だった。確かに考えてみると納得。自分が無理矢理に創り上げた自分というものもいるかもしれない。認めたくない自分から目をそらして自分を正当化するために繕う理由や優越感なんかもサンスカーラの発動のひとつなのかもしれない。受け入れ難い日常を過ごすにはサンスカーラのようなものがないと成り立たないのだろう。サンスカーラは受け入れ難い現実があって生じるものであるが、それでも受け入れなければならない現実に対する痛みを弱めたり錯覚させる(その時点で取り除くことは不可能で後々薄れさせていく)力を持つものだと私は思う。（2年女子）
（真っ当な宗教はサンスカーラを上手に利用します．サンスカーラを悪用した典型例がオウム真理教です．）

授業の最初のほうの話で、四苦の話が興味深かったです。それはただ痛いとか単純なものではなくて、物事が自分の思い通りにならない、病気になりたくないのになる、死にたくないのに死ぬ、という、その矛盾から生じる苦しみでした。これは聖書の中で言われている“人間の罪”というものと少し似ているな、と感じました。聖書の中では、“罪”という概念がやや広い意味を持っているのですが、例えば12使徒の一人が、罪を感じる時は、自分が正しいことをしたいと心では思っていても、罪深き行動に走ってしまったときだ、ということが書いてありました。キリスト教と仏教、相違はあってもやはり同じ人間、思うことは同じなのだな、と感じました。
今日のサンスカーラの例えはわかりやすかったです。なかなか忘れにくいと思います。おもしろい図だったです。あと、黒板の字がとてもきれいで読みやすいので助かってます。（3年女子）
（字を誉めてくれてありがとう．余り言われたことがないので嬉しいです．
　「分かっちゃいるけどやめられない．」　そんな人間の弱さを救ってくれるという点で，キリスト教も仏教も変わりがないと考えています．）

【総評】「諸行無常（一切のサンスカーラは anitya である）」はこの講義，そして仏教を理解するための最重要キーワードの一つです．しっかりついて来てください．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

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