アジア文化論 II 2003/11/11 No. 1

11/11 授業の感想1号の評価

感想1号（総数 55）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

アジア文化論II は5人の教員によるオムニバス形式で開講しています．ネパール，中国に続き，私鈴木が「いわゆる東南アジア」を二回に渡って担当します．

四大文明のうち三つが、また世界のメジャーな宗教も多くがアジア発祥だなんて言われてみて初めて気づきました。先月飛行機の乗り継ぎでマレーシアに立ち寄ったのですが、中国系の人が多いだろうと思っていたのに意外とインド系の人が多いことに驚き、東南アジアに興味を持ち始めていたので、先生の授業はとても興味深いです。（4年女子）
（興味を持ってお付き合い下さい．）

インドが仏教からイスラムへと変わっていくときにいざこざはおきなかったのですか？（2年女子）
（いろいろありまして，手短には説明できません．研究室にいらっしゃい．）

今までは正直、東南アジアの国々をを十派一絡げで見ていたので、今回の授業は大変興味深かったです。また、東南アジアという名称が太平洋戦争のときに付けられたというのは始めて知りました。インドや中国の影響が東南アジアの国々に及んだということでしたが、それは文化の発祥地である以外にも、当時経済的、軍事的に繁栄を誇っていたからなのでしょうか？（2年女子）
（少なくとも中国に関してはそう言えるのではないでしょうか．「中華」思想を持ち，他の国とは朝貢関係を結んでいた国ですから．）

同じ東南アジアの中でも地形の違いにより、インド文化の影響を受けているものと、中国文化の影響を受けているものがある事を知りました。ヴェトナムが中国文化の影響を受けたのは山脈が原因である事は分かったのですが、その他の国はなぜ中国文化でなく、インド文化の影響を受けたのですか？（1年男子）
（ヒンドゥーの王権思想を用いて統治を行おうとしたから，という説明もできますが，これでは堂々巡りになりそうですね．南アジアと東南アジアの間の気候的共通性や地続きであった点，島嶼部は中国がなくインド一辺倒（フィリピンを除く）だった，などが本当のところではないでしょうか．）

普段、私達が何気なく使っている言葉は、ヨーロッパを中心として見ている言葉が多く、気づかないうちにヨーロッパの価値観が含まれているのかなと思いました。また、世界の三大宗教は全てアジアで生まれているということに意外性を感じました。キリスト教については、ヨーロッパのイメージが強くて、あまりアジアというイメージがない分だけに一番意外性を感じました。（1年女子）
（正しい知識を身につけていきましょう．）

東南アジアには、宗教の思想の中にアニミズム的発想が根強く残っており、それが文化の基盤になっているということをよく覚えておきたいと思います。また、日本の文化も、基層文化の上に何重にも多様な文化が重なって、現在の文化を築き上げてきたということを、東南アジアの国々との共通点であると理解しておく必要があると感じました。このように他の様々な地域の文化と日本の文化とを照らし合わせることによって、改めて日本文化を見直すことが出来るのだということを感じることが出来ました。（1年男子）
（よしよし :-) ）

(1) 東南アジアの国々の中でフィリピンのみインドにも中国にも染まらなかったのは、フィリピンがどことも接していない島国だったからですか？その辺りの理由がわからなかったです。
(2) キリスト教は西欧で生まれたものと思っていました。考えてみれば、アジア、といわれている地域は広いですね。これはそう名づけた人がその他の地域は全部ひとまとめに考えてたからなのでしょうか？
日本はアジアの国の一つなのに、そのあたりのことを知らなさ過ぎる気がするので、次の講義もしっかり聞いておこうと思います。（2年女子）
（(1) それが一番大きな理由だと思います．大国も手を出さなかったし，フィリピンの人たちも大国から何かを学ぼうとはしなかったようです．
　(2) 「ヨーロッパ以外の東の方」であったアジアの範囲は徐々に拡大していきました．当初はペルシアかインドくらいまでだったとも言われています．）

(1) 日本はアジアのどのあたりに位置してるのでしょう。
(2) 東アジアと東南アジアは区別されるものですか？（3年女子）
（(1) 広く言えば東アジアで，狭く言えば北東アジアや極東アジアでしょう．
　(2) 区別されます．）

海を越えてでも文化は伝来しているのに、なんでアンナン山脈は越えられなかったのですか？（1年女子）
（越えたときにはもうインドの文化が入っていて，中国文化が浸透しなかったことも一因でしょう．）

フィリピンとベトナムはインド文化の影響を受けてない･･･とても興味深いです。質問ですが、(1)日本の宗教も特質として、アニミズム的思想を持っていますよね？私は宗教の面において、日本は中国の影響を多大に受けたと思っていたのですが、インドの宗教がアニミズム的思想を持っているということは、日本の宗教は中国の宗教ではなくインドの宗教の影響を受けたと言うべきなのでしょうか？ (2)また、今回の講義ではインド文化（宗教）と中国文化（宗教）は、はっきりと区別されていた（今までは中国の宗教はインドの宗教の影響を少なからず受けていると考えていたのですが･･･）ので、その辺の理解がまだよくできていなくて混乱ぎみです。（2年女子）
（(1) アニミズムは世界全般に広く見られる宗教形態ですので，日本のアニミズムがインド源流ということはありません．
　(2) 仏教に関してはたしかに「インド→中国」の影響関係はありますが，中国仏教は十分に中国的味付けを施された宗教で，インド的味付けがかなり少なくなっています．また，中国の文化は宗教だけではありませんし，宗教に限っても仏教だけではありません．）

東南アジアの国々というとそれぞれが独自の文化を現在まで守ってきているという勝手なイメージを抱いていたのですが、ベトナムとフィリピン以外のほとんどがインド文化の影響を受けており、またベトナムは中国文化の影響を受けていると知り意外でした。しかし考えてみれば、確かに日本も基層文化の上に中国やヨーロッパの文化などの影響を受けつつ現在の日本になってきているんだと実感しました。東南アジアの中で唯一植民地とならなかったのがタイであり、その理由がイギリスとフランスの植民地のちょうど境目だったことも初めて知りました。植民地にされなかったとはいえ、それはイギリスとフランスが争ってタイを手にするという面倒をさけただけであると感じます。その時代を知らないとはいえ日本人である以上、ヨーロッパの国々や日本の植民地拡大のための戦争により犠牲を受けた東南アジアの国々があることを、私たちは知り理解しなければならないと思いました。（1年女子）
（この講義をきっかけにして，関心を深めていって下さい．）

言葉の分布で人間の移動の様子がわかる、というのが面白いと思いました。植民地化や移民によって欧米諸国の言語が世界に広まったということは知っていたけれど、東南アジアの地域内ではどのような分布が起こったのかがもっと詳しく知りたいです。（1年女子）
（残念ながら，あと一回の講義時間内では説明し切れません．研究室にいらっしゃい．）

あの大きなアジア大陸の地図を見て、「アジアってこんなに広かったんだ…」とスケールの大きさに感動すると共に、同じ大陸なのに両極の文化は宗教も違えば生活様式そのものも違うことに、大陸文化の深さを感じました。また、日本はアジアの一国であるにも関わらず、私自身、東アジア・東南アジアの事について何も知っていなかったのだということを改めて感じました。東南アジアはインド文化と植民地文化の影響を受けた国であること。基層文化にアニミズム的発想が共通していること…etc 教わったことの大半が初めて知る事実でした。２回の講義を通して更に知識を深めていきたいと思います。
一つ質問なのですが、インド文化が東南アジア以外のインド以西の地域に広がることはなかったのですか？（3年女子）
（現在のアフガニスタンの一部までは西進しましたが，主に地理的要因によってそれ以上は進んでいかなかったものと思われます．仏教思想と西洋思想との出会い・討論を記した『ミリンダ王の問い』がパーリ語で残っています．）

今まで東南アジアについての知識もあまりなく、興味がなかったのですが、この講義でとても興味深いものとなりました。タイが東南アジアの中で唯一植民地にされなかった理由が、イギリスとフランスの勝手な判断というのが驚きました。文化の構造について、４段階を経て現在の文化があるという事を知り、東南アジアの歴史に興味がわいてきました。そのことについて、ベトナムが中国文化の影響を受けていることに驚きました。世界中どこの国でも、その国の文化は地理的な要因に支配されていると感じました。他の講義で、東南アジアはお箸を使う国と使わない国があるということを知りましたが、ベトナムは使うのでしょうか？（2年女子）
（気候も含めた広い意味での地理的要因の力は大きいです．ベトナム，箸使います．箸を使う民族の南の限界とも言われています．）

講義の中で文化のあまり発展していない国は外部からの物をすぐにスポンジのように吸収するとあったのですが、もし（歴史にもしはありませんが…）もっと東南アジアの文化が発展していたら、インドや中国、そしてフィリピンのキリスト教といった影響を受けずにそのまま発展していたでしょうか？（2年女子）
（影響を受けないことはなかったでしょうが，ほとんど全面的に染め変えられるようなことはなかったでしょう．中国への仏教伝来が好例です．）

東南アジアといえば、タイとかヴェトナムのイメージで大体全部同じような文化だと思っていました。しかし宗教の多様性や、異文化の影響による文化の違いが思っていたよりずっと顕著のようで驚かされました。特にインド文化の影響が強いということにとても興味を惹かれました。確かに同じアジアにもかかわらず、中国、日本の文化と、東南アジアの文化は明らかに違います。それがインドと中国、どちらの文明発祥地の影響を受けているかに由来しているかという違いが興味深かったです。どうしてそのように分かれたのかにも大変興味を持ちました。また、それだけ多様性のあふれているアジアも基層文化を見てみると、農耕文化かやアニミズム思想が現代においてさえ人々の信仰の根強くに残っているなど根本の部分で共通性があることに改めて文化というもののすごさを知りました。（1年女子）
（文化に興味を持って下さいね．）

アオザイはチャイナドレスの影響を受けていると言われましたが、チャイナドレスは漢民族の伝統衣装ではなく、満州、つまり清王朝とそのひとつ前の王朝（勉強不足です。名前を忘れました。）の人々の服装だったと思います。アオザイもあまり歴史はないのかもしれません。でも確かにスリット（といっていいのか…）など、影響は明白ですよね。ホー・チ・ミンなど、人名（および地名）も書こうと思えば漢字でかけるとか。（2年女子）
（明王朝ですね．ご指摘の通りです．）

インドに4つの言語があるなんてビックリした。（1年女子）
（?? インドにはたくさんの言語がありますよ．）

東南アジアの国の繋がりというのはあまり考えることがなかったので、インドの他の国への影響力の強さには驚かされました。国の大きさなどを考えると中国がもっと他の国に影響を与えていても不思議ではないとおもったのですが、中国とインドでは何が違ったのが大きな要因だったのですか？（4年男子）
（中国は「国内」と呼ばれるところにたくさんの民族を抱えていますよね．そのあたりから推して知るべしです．詳しくは直接聞きに来て下さい．）

同じアジアに住んでいるにもかかわらず、知らないことがありすぎるなあと痛感しました。なぜここまで知らないのか、今までどうして知ろうとしなかったのか…。大学に入り、勉強をさせられるのではなくやっと自分から取り組もうという気持ちを持てた今、たくさんのことを吸収できそうな気がします。お米の話が頭に残ってます。お米大好きなので(笑)日本以外で食べられているお米、食べてみたいです!!（2年女子）
（是非試してみましょう．）

アジアの文化が四重構造になっているとは。ちなみに、昨年、スタディーツアーでベトナムに行ったときには、フランスと中国の感じがあったのを覚えています。（2年男子）
（体感してきたわけですね．）

東南アジアの言語が4つに分類できるというのに驚きました。講義中の図では、オーストロアジア系とカムタイ系が重なっているように見えたのですが、その辺りの地域の言語はどのようになっているのでしょうか。
また、イスラーム国というと、中近東の国を思い浮かべるので、インドネシアが世界最大のイスラーム国であるということを意外に感じました。（2年女子）
（オーストロアジア語族が半島部の大部分を占めていたところに，北からチベット・ビルマ系とカム・タイ系が南下し，オーストロアジア語族の分布を分断したと考えられています．）

最近アジアにすごく興味を持ち始めた。なぜなら今まではアジアは何となく治安が悪く、暗いイメージを持っていたが、鈴木先生の授業を受けて悪い面ばかりではないんだということが分かったからだ。また、今まで知らなかった事がたくさん知ることが出来て、面白い。特にビックリしたことは、キリスト教が西アジアで生まれたということだ。私はてっきりアメリカで生まれたものだとばかり思っていた。多くの宗教がアジアで生まれていたなんて少し私はアジア人として誇らしい気がする。また、元々あった根強い文化である基層文化にはアニミズムと農耕文化が関係しており、ベトナムは中国文化、それ以外の九カ国はインド文化の影響を受けていることが分かった。そしてベトナムはインドだけでなく中国の影響も受けていることが分かり、アジアは奥が深いとすごく思った。日本も独自の長い文化を持っているけど、中国の影響をすごく受けていると思う。もちろんインドから言葉（カルピスなど）や仏教が伝わって来たことも学んだ。これからもっともっとアジアについて調べてみたいと思った。（1年女子）
（うーん，真っ当な宗教教育がこれからは必要なのかも知れません (^^; ）

私は今まで、東南アジアの国々も昔から今も変わらずはっきりとした自国の文化をもっているのだと思っていました。それが同じ東南アジア諸国でもフィリピンはスペイン、ベトナムは中国、他の国々はインドの影響を受けていることを知ってとても驚きました。でも改めて考えてみると、フィリピンという国名はフィリピンがスペインに支配された当時のスペイン王・フェリペに由来しているし、すごく納得できました。ベトナムが中国の影響を受けたというのが不思議だったので調べてみたのですが、ベトナム戦争で勝った北ベトナムをソ連と中国が支援していたことと関係があるのでしょうか・・・？改めて歴史の深さ、重みを感じました。世界史が大好きなので、「東南アジア」という呼び名の由来などいろんな話を聞けてとても楽しかったし有意義でした。（1年女子）
（ベトナム戦争は共産主義勢力と資本主義勢力とのぶつかり合いが基本構造です．）

今回の講義で、自分が単純に呼んでいた「東南アジア」という名称が、如何に危ういものであるかが分かりました。太平洋戦争時の造語であるということは、かなり侵略的なニュアンスが背景にあったと見ても良いのでしょうか。（もっとも東南アジアに限らず、地名というものはかなりナショナリズム的な要素を含んだものであるという程度の認識はあったのですが、やはりこのようなことは言われるまではなかなか分からないものです）このような歴史的な背景を知らないまま、或いは何も考えないままに東南アジアを語ることは大変危険であると改めて感じました。
東南アジアと日本の共通点も、違う角度から認識することが出来たと思います。多層な文化構造を持っているということも、普段はあまり意識することがありません。それは、やはり私たちの生活に浸透してしまった部分だからでしょう。その部分を如何に再認識するかが、勉強のおもしろいところだと思います。（1年男子）
（「好きこそものの上手なれ」と言います．これからも学んでいって下さい．）

【総評】「アジア」「東南アジア」という概念のあやふやさ，そのことばで一括りにしてしまう危うさを承知した上で，四層モデルの文化理解を試みてみましょう．（鈴木隆泰）

アジア文化論 II

アジア文化論研究室

suzuki AT ypu.jp