2002/11/8 No. 5

11/8 授業の感想5号と回答

感想5号（総数 79）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

仏教の教えの多様性を，医者と患者の話，処方箋等に準えて説明しました．

医者と患者の話、分かりやすくておもしろかったです。人の数だけ教えがあるというのが印象深かったです。ところで、授業の中で先生が「さとる」を「覚る」と書かれていましたが、「悟る」とどう違うんですか。（もうすでに説明済みだったらすいません。）（2年女子）
（説明済みです (^^;　「仏陀 buddha」は「目が覚める，真理に目覚める」という意味があるので，私は「さとる」を「覚る」と表記する場合が多いのです．）

接近が何なのかを聞き逃してしまったのですが、教え＝方便＝接近₍₁₎ ということですか？
　それから諸行無常においての時間論ですが、時間は自分が現在に立っていることの連続によって作られるという考え方と、ウシャスやスーリャが出てくる、時間は人間と神との共同作業により作られるものだという考え方がありましたが、後者は昔の考え方₍₂₎ なのでしょうか？（3年女子）
（(1) その通りです．
　(2) ヴェーダの段階での考え方です．それに続くブラーフマナ文献の段階でも時間の死と再生が謳われており，若干モチーフは違いますが，「時間は死と再生を繰り返す」という考えは同じです．ブラーフマナ文献は仏教とそう変わらない時代のものとも言われていますので，そういう意味では「昔の考え方」ではありません．）

サンスカーラの時間論とはつまり、自分が勝手に想像している時間₍₁₎ のことと理解してよいのでしょうか。
それから、お坊さんが説教をするのは、仏陀の教えのをアレンジしたものですか、それとも仏陀の教えとは全く関係ないものですか₍₂₎。
仏教とは現実をいかに心のゆとりを持って受け入れるかを教える宗教かな、と感じました。（3年女子）
（(1) そう考えてもらって結構です．
　(2) アレンジしたものもあるでしょうし，全く新しい処方箋である場合もあります．そう，仏弟子が処方箋を出して構わないのです．）

今日たとえ話で釈尊が「今まで一度も死人を出したことのない家から芥子の種をもらってこい」と言ったというのを聞いて、やはりすごい人だな、と感動しました。直接的に教えるのではなく、気づかせる、というのが普通の人にはできないことだと思います。私なら、わかってくれるまでこんこんと甲斐もなく諭していたと思います。でもそれでは他人の心には届かない。自分で気づいたこと、学んだことの方が心に届くと、今日改めて実感しました。（2年女子）
（キサー・ゴータミーは悲しみの余り，人の話を素直に受け入れられるような精神状態にはありませんでした．それを見て釈尊は，あのような処方箋を出したのです．）

悟りにたどり着くまでには、色々な方法がある。その様な仏教の特徴を知らなければ、仏教の教えは矛盾していると勘違いしてしまう。仏教の教えは、一見悟りにたどり着くことが大事で、その過程は重要ではないと考えられがちであるが、先生の講義を聞いて、実は、仏教は目的を達成するために、過程を大事にしているんだとわかりました。（2年男子）
（その通りです．過程は大事です．）

「人は病気のままでも生きていける。」という話の中で、病気を治したら仏陀になってしまうということでしたが、仏陀は複数いるのですか？なることは難しくでもなれる場合もあったりするのですか？（2年女子）
（その通りです．「仏陀の教え」であると同時に「仏陀になる教え」，それが仏教です．）

過程にこだわりすぎてはいけないというのは、なるほど確かにその通りだと思った。過程ばかりに気をとられていると、目的自体が見えなくなってしまうことが多々ある。
　医者と患者の例えがなかったら、仏陀の教えについてよく分かっていなかっただろう。最初に例えの話があって、次に仏陀とその教えについて説明があったとき、すんなりと頭の中に入ってきたように思う。人は一人として同じ人はいないし。それは誰もが知っていることであるが、それぞれにあった処方箋があるということは、気づいているようで気づいていないのかもしれない。
　「ウソも方便」という言葉は間違いであるのに、なぜ慣用句のように使われるのか不思議に思った。はじめに言い出したのは、いったい誰なのでしょうか。（2年女子）
（うーん，誰なんでしょう．「責任者出てこいっ!!」）

時間は人間と神によって作り出されるという考え方は理解できました。しかし、もうひとつの方の　現在の繰り返しによって作り出されるというのは　少し疑問があます。それだったら人間が生まれ　死ぬまでの過程までしか時間は作られず　時間は個人個人の話になってしまうと思います。　前者の方とは　基本的な部分が違うなと思いました。
（2年女子）
（生まれる前と死んだ後はどうなってるのかって分かりませんよね．分からない部分には責任を持たなくてよい，という意味でもあるのです．）

今日のキサーゴータミーのお話にはとても感動しました。具体的な問題そのものの解決でなく、病んでいる心そのものを治すという、解消を重視するという考え方は当たり前のようで、人はきずきにくいものではないでしょうか。またこの考え方を応用したら、現在の問題などの見方も大きく変わってくると思います。北朝鮮の拉致問題なども何か見出せるような…？もう少し考えてみます。（2年女子）
（拉致問題への応用ですか．．．　私は現時点ではちょっと方向性が見えてこないです．）

医者と患者の例えで、仏陀の教えがわかりやすく理解できました。仏教に様々な教えがあるのは、個人個人の抱えている不安が違うためその人その人なりの処方箋が必要だからであるんだなとわかりました。つまり、人の数だけ教えがあるんだなと思いました。（2年女子）
（その通り．へんなセクト主義に陥るから駄目なのです．）

人々の考えを前向きにし、心の悩みを解消することが仏教というところに印象をうけました。しかし、そのためにサンスカーラを用いて人々を導くのには疑問が残りました。サンスカーラは、人々の思い込みから発生するものだと感じます。例え、それが良い方向へと導くといっても、例外はあると思います。方便を間違えた方向に考えてしまって、リンゴを取れずに挫折してしまうような人はいなかったのでしょうか？（3年男子）
（正しい指導者に就けば，悪しき方向に働くサンスカーラを抑え，心を安定させる方向へ導いてくれます．逆に言えば，そういうことのできる人が正しい指導者であって，不安を煽って無理矢理信じ込ませようとするようなものは，インチキ以外のなにものでもありません．）

そのとき、その人に必要なものによって、教えたり、押し付けたりするのではなく、本人に気付かせる・・・いまこの時を大切にする。仏教は生きている人のための宗教なんだなと思いました。
病気の人は病んでいる状態でも・・・というのは、デートの待ち合わせ場所に行く途中、相手に会えることが楽しみで、その場所に着いて相手に会う前から幸せで仕方ない、あの状態ですよね。また、幸せになるのは簡単だとのことですが、確かにそういうものだと思います。心の迷いがなくなればというか、自分の中の間違い(？)に気付いたら、不幸は消えると思う。幸せになる方法に気付くまでが長かったりするから、言葉で言うほどに簡単だとは思えないけど。（2年女子）
（そもそも宗教とは生きている人のためのものではないか，という説もあります．死者に手向けているようで，実は生きている人向けだったりしますから．でも，仏教はそれ以外の面でも「生きている人向け」の要素が強いですよね．でも，そう考えると，現在の日本の仏教のありかたには，やはり少々疑問を覚えてしまうのです．）

今回の講義では、人によって教えが違うということを説明するための例題がとても分かりやすかった。特に、“やせっぽっちのゴータミー”の話は、なんとなく聞いた事があるような気がしたにも関わらず感動を覚えた。その話に関連した話で、余命を告げられたがん患者の例も深く考えさせられた。今日の医療において患者には心も癒されるための助けが必要であると思う。あと、「生きている時に死ぬことを考えるな。死んでから考えろ。」という言葉もガツンときた。でもそれはなかなか意識しないと難しい。（2年女子）
（難しいからこそ，仏教には様々な処方箋が用意されているのです．決して誰もが「釈尊と同じようにサンスカーラを通さずに世界把握をしなくてはならない」などとは押し付けません．できる人はできる人なりに，できない人はできない人なりに，幸せになる方法があるのです．）

「うそも方便」と言う使い方は、間違っていると授業で言われましが、そのあとの話で矛盾を感じました。キサーゴータミーに釈尊は子どもが生きかえると嘘をついたのではないですか。しかし、それがうまく説明できません。最初の、初転法輪の話がうまくついていけませんでした。この授業では、ボーっとしていると話についていけなくなると分かりました。先週授業に出たのに出席メールを書くのを忘れました。気をつけます。（2年女子）
（釈尊の発言はサンスカーラを有効に使ったのであって，決して嘘ではないのです．）

昨日という日は存在しないし、明日という日は永遠にやってこない。すべて今日の繰り返し。存在しないものを憂いても仕方ないのは知っていても、そこにはまりこんでしまう。そして抜け出したいと強く願うから釈尊にあこがれるのだと思いました。はまり込んだままじっとしているよりは、抜け出そうともがく方がまし。でもそれもなかなか難しい。そんなことを考えつつも「明日から頑張ろう」などと言ってしまう今日この頃です。（3年女子）
（「明日から頑張ろう」と決意したら，その「明日」が「今日」になった時点で必ず頑張りましょう．そうであれば「明日から頑張ろう」と言っても一向に構いません．問題なのは「明日」が永遠に「明日」のままに止まっているときなのです．）

世界に多々ある宗教・呪術の類で「粉を振り掛けたら病が治る」とか「お祓いしたら治った」というのは私から見れば何とも怪しい話だ。でも信じる信じないはその人の自由で、それで本当に救われている人がいるからこそ、その教えは成り立っているのだろう。それにしても、「宗教で病気が治るわけない」と思っている私にとって、今日のお話は目から鱗が落ちる思いだった。病気に罹った人の病そのものを治すのでなく、病気によって病んだその人の「心」を治すべきという考え方。しかし「人間生きているか死んでいるかのどちらかだ。生きているうちは生きているようにしろ。病気になっても病気であることを受け容れろ」とは極めて難しく厳しい言葉である。もちろんこれは病気になっても治療するな、延命治療するなという意味ではない。しかし、末期のがんにおかされて治癒の見込みもなくなったある人の絶望を目の当たりにした経験から、病気の苦しみ、近々自分は死ぬのだという現実を受け容れることがいかに難しいかを思い知らされた。その人はよく自殺を口にした。周りの人間は「逃げをうたずに残された日々を充実したものにしなさい」と言ったけれど、おそらく彼は死ぬ間際まで病から起こる心の苦しみに悩まされたに違いない。私がもし彼が亡くなる前にこの講義を聞いていたら、少しでも気持ちを楽にしてやれただろうか。（4年女子）
（インチキ宗教や原理主義の問題は次回以降取り上げる予定です．
　私が講義で話しているのは「仏教の基本的な考え方」であって，それをそのまま実際問題に適用すべきだという提言ではありません．実際には，まさにケースバイケースの処方箋が必要なのです．不治の病に苦しんでいる人に，いきなり「病である自分を受け入れよ」と諭しても無理でしょう．その処方箋はまだ早すぎたのです．）

嘘と、人のことを考えたときに口から出てくる言葉の区別はつけにくいものだと今まで思っていたのですが、それって「医師の診断結果の宣告」と「処方箋」が、患者のことを考えて全然違ったものになっているけど、表面は同じになっているからわからないだけなのでしょうか！？なんだかうまく説明できませんでしたが、嘘も方便の話とキサーゴータミーの話の間に、矛盾は感じられませんでした。私の中の嘘に対する考えが、少し変わったような気がします。（2年女子）
（処方箋の例えは，患者の症状によって様々な治療法があることを言ったものです．医者の告知の問題とは別問題です．告知の問題は，これはこれで大きなテーマであると思いますが，基本的に「医者対患者」だけでなく「患者本人対患者の家族」という側面もあろうかと思います．）

「嘘も方便」私は今の今までいいことだと思っていました。嘘が存在するのはやはり時には必要だからと思っていたからです。しかし、本質的にはやはり嘘なのだからだめなんですよね...かなり悩みました。キサーゴータミーの話かなり感動しました。仏陀の考えにはおどろかされます。私も死について考えました。死を受け入れることは容易なことではないと改めて感じました。（2年女子）
（私は「嘘も方便」という使い方が間違っていると言っただけであって，「相手を思い遣って，本当のことを言わない」ということまで否定しているのではありません．方便（処方箋）は，それがなくては人（患者）を救うことのできない唯一の方法（手段）なのであって，その方便を嘘と同列に並べて用いる「嘘も方便」という使い方の誤りを指摘しただけです．）

医者と患者の話は前のりんごの話よりもわかりやすかったです。「うそも方便」という言葉、けっこう好きだったんですけど講義聞いたら使えないですね。しかし、方便といい諸行無常といい日本語は間違った解釈をしてるのはなぜでしょう?他にも宗教関連でそういう言葉があるのだったら教えてほしいです。（2年男子）
（『平家物語』の「諸行無常」は，誤っているのではなく，「諸行無常」という考え方のある一側面だけが過剰にクローズアップされた使い方です．
　他には「他力本願はいけない」というような使い方も間違っていると言えます．他力本願は，計らいを捨て，阿弥陀仏の本願に委ねるという意味で，“阿弥陀仏を信じている人たちにとっては”当然の行為です．いつの間にか「他力」が「他人の力」と解釈されたことから生じた誤用でしょう．）

サンスカーラによる心の平安を求めるのではなくそのあるがままを受け止めることによって悟りを開く。あるがままを受け入れるということはどういうことなのだろうか？自分の無力さ、己の小ささを知るということなのか。そしていつか消え行く自分の運命をうけいれるということだろう。（2年男子）
（全然違う．それでは単なる運命論・宿命論に過ぎない．）

医者と患者の例はりんごよりもわかりやすかったです。その人に合った一番いい処方箋(教え)を出してあげることのできた仏陀はかなりすごいと思う。でもその処方箋を自分で見つけられることができたらどんなに悩まないですむかと思う。そういえば、病気の人が落ち込んで、みるみる元気がなくなっていったので、知り合いの人が毎日魚釣りに連れてでかけたそうです。すると病気のひとはだんだん元気になって、今では自分から誘うようになるほどに元気になったという話を聞きました。病気の人にとっては知人が仏陀で、処方箋が｢魚釣りをしなさい。｣だったのでしょう。元気になって、よかった。「嘘も方便」がまちがいというのは納得です。（2年女子）
（その通り．処方箋を出して人を救うことのできる人は，誰であっても仏陀なのです．）

キサーゴータミーの話を聞き、仏陀が相手の病んだ心を治そうとしたということにすごく納得できました。また、仏陀が「芥子の種をキサーゴータミーにとってくるように言えば、彼女の病んだ心が救われるだろう」と考えたことが、「きっとこうなるはずだ」というサンスカーラの考えからきているのではなく、芥子をとってこさせるという行為の結果起こりうる「真実」をきちんと理解して言っているということに感動しました。こういう点からも、真の悟りを開いた仏陀のすごさが分かりました。（2年女子）
（よい視点です．加えて，サンスカーラの有効利用ということも付け加えてみましょう．）

人は必ず死ぬものなのだという事を改めて知った。その事実から逃れることはできず、嫌でも受け入れなけばならないのだ。病気の話にしても、自らがその立場に立ったとき、自分は事実を受け入れる事ができるだろうか。あらかじめ知っていたとしても経験するのとしないのでは違う。私は嘘でもいいから自分を安心させてくれる何かが欲しいと思った。（2年男子）
（「嘘でもいいから」と思ってはいても，結局は「嘘ではないもの」が欲しくなります．そのために「本物の宗教」はあるのです．）

サンスカーラについて実はまだ何もわかってないことがわかりました。作り出した時間ということは釈尊は時間の観念が人間によって勝手に刻まれたものだと知っていたのでしょうか。(１月１日を正月と決めているが犬や植物にとってはいつもの日常である)だから人間の作り出した輪廻観念を自然の観念の諸行無常で断ち切ったのでしょうか?まだまだ人に教えるなんてできないと思いました。キサー・ゴータミ－の話はすごいと思いました。釈尊は哲学者みたいです。（2年女子）
（釈尊は宗教家であって，一般的な意味での哲学者ではありません．
　「作り出された時間」とは，「今の自分にはどうしようもない，手の届かない，形而上学的な対象としての過去・未来」を指します．）

ガンの人に、「ガンで1ヶ月で死にます」と告げずに、「後一年間はもつでしょう」と医者が告げる場合、確かに患者は心の平安は得られるのですが、この患者は、ガンという病気であると言う事実に向き合えずに、１ヶ月をすごしてしまうかもしれません。それは、「一病息災」というのに反しています。この人は、サンスカーラに悩まされているといえます（よね？？？）。この場合嘘は嘘でしかありません。
ここで、疑問が残ります。心の平安を釈尊は人々に得させようとしていますが、同時に、サンスカーラに悩まされることも否定しています。しかし、サンスカーラによる心の平安があることもまた事実です。時と場合によるのでしょうが、上のようなガンの人の場合、釈尊なら、どうしろというのでしょうか???（2年女子）
（相手が正確な告知を受け入れることのできる人であれば，余命を伝えて，残された命をしっかり生きるようにと言うでしょう．相手が告知を受け入れられない人であれば，相手が告知を受け入れるようにならない限り，本当のことは伝えないまま，前向きに生きることを教えるでしょう．）

先生はいつも黒板に面白い絵を描いて説明してくれますが、私はその絵がとても気に入っています。今日の肥満体の人の絵も面白かったです！！キサー・ゴータミ―の話では仏陀が半狂乱になっているゴータミ―の心の病を治した。それは、どの家へ行っても死人を出したことのない家というものは存在せず、人はいつか死んでしまうのだという事実をうけいれたということである。つまり、息子の死という問題そのものを解決したのではなく、宗教的解決(解消）をしたのであるということが分かった。また、仏教に様々な教えがあるのは教えを聞く人が多数で千差万別であるからその人に適応した教えをし、最終的にある一つの状況に近づけようという意図があるというのに納得させられました。（2年女子）
（解決と解消の違いをよく理解してくれています．）

医者と患者の話で、仏教の教えについて目の前がパーッと開けた感じがしました。仏教の教えが多様なのは、患者の症状（心持ち〉が異なるからそれぞれにあう処方をする医者と同じことだということでした。人が確実に心の平安へと歩んでいけるように教え＝方便〈接近）があるのですね。そして私たちはそのウパーヤにのっかて目的へ接近していきます。仏教は押し付けがましくなく謙虚な宗教だなぁなんて思いました!!　どんどん仏教にたいする目が真剣になってきている気がします。（2年女子）
（よーし，ついて来いよ!!）

キサー・ゴーダミーの話を聞いて、ただ教えられるだけでなく自ら体験し実感することを通して気付いていく…ということに何か魅力を感じてしまいました。「仏教が目指すのは解決よりもむしろ解消」　解決は形だけの結果に思えるけど、解消は靄が晴れたように心の中まですっきりした感じがします。キサー・ゴーダミーも自ら実感し気付いたことによって心から離れなかったものが解消され、息子の死を受け止めることができたんだろうな、と思いました。（2年女子）
（それこそまさに「目覚める」ということなのでしょう．）

釈尊は、こどもを生き返らせてキサーゴータミーの心の病を解決しようとはせず、ゴータミー自身に、人は死ぬものであると理解させ、解消した。りんごのおいしさは口で言っても伝わらないから、実際にりんごを食べに来てもらう、という例と、ゴータミーの話がつながり、覚りを得るためには、口で説くのではなく、実際に覚りの境地まで達してもらうことが大事ということが具体的に分かった気がしました。ゴータミーは、りんごを食べたんですよね？？（2年女子）
（「子供の死を受け入れる」というリンゴを彼女は食べることができました．そして「変わることのない心の平安」というリンゴの味を求めて，彼女は仏弟子になったのです．）

「仏教の教義はたくさんある」というときの教義と「釈尊が説いた教え」の教えとは同じもののことですか？だったら両方とも方便といえるのですか？二つの言葉を使い分けていたので気になりました。（2年女子）
（混乱させてしまってごめんなさい．両方とも同じもので，どちらも方便です．仏教の教えには，方便しか存在しません．リンゴの味は，各自が自分で味わうしかないからです．）

医者と患者の関係での例えはとても分かりやすかったです！病院に来る患者はすべて同じ症状を抱えた患者ばかりではない。だから医者もそれぞれの患者に合った処方を施す。様々な方法を提示し患者に健康になってもらいたいと願う医者、医者の言った通りにできるか否かは患者次第！それぞれの病気に対してそれぞれの対処法があるように、人の数だけ悩みがあれば解消法もまた人それぞれなんだよなぁとしみじみと感じました。今日の講義での医者と患者の話で、子供の頃、医者の言いつけをしばしば破って再び病院に送り返されたりしていた自分自身の苦い経験を呼び起こされました。（3年男子）
（今は健康になったんですよね? 元気が一番．私自身，近頃ちょっと元気がないので，尚更そう思います．）

仏教の教えがなぜたくさんあるのか今日の授業でわかりました。医者と患者の例はよかったと思います。しかし、今日の授業とは直接には関係ありませんが、それにしてもたとえば浄土真宗新宗は来世に幸せを求めるのに対し、日蓮宗は現世に幸せを求めるように、同じ仏教でもまったく違うことを唱えているように思いますがなぜそうなったのでしょう？（2年女子）
（患者が異ったからです．患者が違えば症状も違い，その結果，処方箋も異ってくるでしょう? それと同じです．大事なことは処方箋の違いではなく，「あなたたちが主体的に，自分の症状に合った処方箋を選んでいるか」，「あなたに現在与えられている処方箋が，本当にあなた向きなのか?」ということです．）

やっぱりお医者さんの例えは分かりやすかったです。
目的は一緒でも、その過程が違う。このことを考えていると、テロについて少し思いました。
テロ行為をする人達も、願いは私達と同じ、飢えや戦争の恐怖のない世界に、家族と一緒に幸せに暮らすことだと思います。しかしその目的を叶える為に、間違った過程を選んでしまったのではないかと思いました。
こう書くと、あまりいろいろな過程はない方が良いのかもしれない、と思ってしまうのですが、しかし、いろいろな過程があるからこそ、私達人間は人種や宗教、そして文化に関係なく、救いを求めることが出来るのだと思うと、いろいろな過程がある方が良いと思います。
しかしその選択を誤ると大変なことになる可能性があるので、ちゃんとより良い過程を選ぶための考え方を、学ばなければならないと思いました。
あと「一病息災＝病んでいても幸せになれる!!」と言うのは、何だか少し【下見て暮らせ】チックだなぁと思いました・・・・。（2年女子）
（何チックだろうが，要は当の本人が安心して暮らせるかどうか，です．「何々すべきだ」の世界だけでは人間は生きられませんから．）

今日の授業は、はっきり言って、ものすごく勉強になりました!!まずは、医者と患者のたとえ話についての意見ですが、患者は病気そのものという「出来事」を受け入れることが出来ないから、その出来事に対する主観的判断で、心を悩ましてしまう。その心の乱れのほうが、病気そのものよりも本人を苦しめてしまい、安心の状態ではなくなってしまう。確かにそうであると納得できます。以前、本で「人間というのは出来事そのものに左右されるのではなく、その出来事に対する自分の受け止め方によって左右されるのである。」と書いてありました。この授業の内容とかぶるな、と思いました。ありのままの現状を否定するのではなく、受け入れていくことがどれほど私にとって重要かを再認識させられます。キサー・ゴータミーの話も私にとって、ものすごく価値ある知識となりました。最近は、自分の意思と反して起こった出来事に対して、よい意味で「まー、現実はこうだもんなっ」と自然に受け入れることが出来ている気がします。私にとっての方便は「容認」です。（方便の使い方は正しいですか？）　話は変わって、時間論をもっと詳しく説明してほしいです。ちょっとわかり難かったので。（2年女子）
（時間論についてはちょっと分かりにくかったかも知れないですね．次回，再び説明することにします．
　“方便”の用法，それがあなたの処方箋である限り，正しいです．）

私の祖母も（そこまでひどい状態ではないのですが）ちょっと病気をしていて、「はあ死ぬるでね（もう死んでいくのいね）。」などとさみしいことをよく言ったりしています。なので、今日家に帰って、生きているときは死んだときのことを考えたりせずに生きればいいんだという話をしました。はははと笑って「はいはい」と言って喜んでいたので、病んでいる心が少しはほぐれたかなと思われました。（2年女子）
（処方箋・方便として効いたのなら何よりです．）

目の前にある苦しみを解決することはできなくとも、捉え方を変えることで解消することはできる。奇跡などに頼ることなく、そこを押さえた上で、そのために各人それぞれにあった処方箋をちゃんと用意しようとしているというのはすごいことだと思いました。（2年女子）
（そのような生き方こそ，本当の奇跡なのかも知れません．）

医者と患者の説明は、とても良く分かりました。患者に良くなってもらいたいのと同じで、仏陀は人々に心の平安を得てもらいたいと思っているのです。患者はそれぞれ症状が違うので、それに合った処方箋を医者は出すように、人々の数だけ仏教には教えがあるのです。納得出来ました。また、キサー・ゴータミーの話もとても納得できるものでした。私の周りでは、今年だけですでに４人の人が亡くなってしまいましたが、初めは、そのことを受け入れることはできませんでしたが、最近になって、生きているものは、遅かれ早かれいつかは死んでしまうものなんだと自分自身で気づき、なんだか心が少し楽になった気がします。（2年女子）
（先生は嬉しいぞ!! (;o;) ）

人の悩みは千差万別だからその人なりの処方箋（教え）が必要なのだ、という「医者と患者の例え」は、前回の「りんごの例え」から発展させて考えることができたので分かりやすかったです。悟りに到達するまでの過程にはこだわらないというのはそういうことだったんですね。　方便が「（悟りに）接近する」という意味からきている言葉だということは初めて知りました。間違った使い方をする前に気づくことができてよかったです。　私もキサー・ゴータミーの話が好きになりました。もし子供を生き返らせていたら、教えになる以前に現実に背を向けることになってしまう。人は誰でも死ぬという現実に向き合い、悩みを解消させるように導いた仏陀の考え方はすごいなと思いました。（2年女子）
（みなさんの「過程」と「結果」についての誤解が解けたようでよかったです．）

毎回、仏陀の考えには納得させられたり、また考えさせられたりしています。しかし、今までに仏陀の考えに共感できなかった人はいないのでしょうか？（2年女子）
（いっぱいいます．なぜ今のインドで仏教が滅びてしまったのかを見ても分かるでしょう?）

人によって悩みは違う。それに応じてまた解決策も違ってくる。それこそが、真に求められる。たしかにそう思う。ただ、それを現実的な問題として考えた時、それを本当に実行に移せるかはやや疑問が生じる。特に、大宗教になればなるほどある程度固まったものである方が、より多くの人を救済できるのではないだろうか？と感じてしまった。この矛盾の解決は容易ではないと思う。　　　それから、現実に向かうと言うことは、想像以上に困難で不安なものである。positive　thinking（「現実との直面→受容→新たな道の模索」を敢えてこう表現させてもらいました）が心の平安をもたらしてくれるとわかっていても、時として不安に苛むことが多いように感じます。（4年男子）
（以前から何回か繰り返しているように，だからこそ仏教には，サンスカーラを有効に用いた様々な教説があるのです．）

授業の前日、身近な人が亡くなったのですが、キサー・ゴータミーの話はいまの自分に必要な話でした。心の病、死の現実を受け入れて、心の平安を得るということ。なかなかできることではないけどあの状況のキサー・ゴータミーには一番の助けだったと思います。どうしようもないことにこだわるのがサンスカーラという話が出てきましたが、やっぱりどうしても人間にはまとわりついてしまうものですね。医者と患者の例えは先週よりさらに分かりやすかったです。（2年女子）
（お役に立てて何よりでした．）

仏教の時間に関する考え方について。

過去を後悔し思い悩むことや、未来を不安に思うことは間違った時間認識によるものでしかない。時間とは、そのような過去、現在、未来の一方向的、単線的なものではなく、現在の積み重ねとして創り出されるものである。従って、過去や未来を現在の自分と切り離し客観的に眺めることで心の平安を失うことは「心の病」であり、解消（宗教的解決）されるべき事柄である。

と、取りあえず理解しましたが、正しいでしょうか？（4年男子）
（いい感じです．）

【総評】医者と患者の例え，分かりやすかったようですね．次回はインチキ宗教や原理主義の問題を扱ってみましょう．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

suzuki AT ypu.jp