2002/11/22 No. 7

11/22 授業の感想7号と回答

感想7号（総数 81）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や感想の質には全く関係ありません．ただし「感想の内容」は評価対象となっています．

複数の同一または類似の感想は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

今回はアングリマーラ A^ngulimaala 伝説にこと寄せて“諸行無常”の説明を行いました．

アングリマーラは師匠様が　人を殺せと言ったから　殺人鬼になったらしいが、バラモンだったなら　人を殺してはならないという　教えはなかったのか？！もしあったとしても、やはり師匠様の権限の方が強かった~~つよかった~~のか！？人は　いくら拒否しても　何度でも~~なんども~~同じことを言われると　考えが変わってしまう~~かわってしまう~~ものなのか・・・　アングリマーラも　今で言う~~いまでいう~~　悪徳商法にひっかかったような感じかなと思った。（2年女子）
（もうちょっと漢字を使おう．．．
　ヴェーダの宗教は必ずしも道徳的とは限りません．そもそも「宗教」と「道徳」とは別のものであって，だから「殺人教団」も「宗教」として成立しうるのです．もちろん，それを社会が許すか許さないかは別問題です．
　ヴェーダの学習において，師匠は絶対的な存在です．もっとも，彼の場合，おそらく途中からは自ら進んで殺人を行っていたと思われます．人は善い方向にも悪い方向にも変われるのです．）

釈尊の教化の話、「聖なる場所に」をつけると何故真実になるのかよく分かりませんでした。（4年女子）
（生物学的な誕生ではなく，宗教的な誕生を意味するようになるからです．）

人を生まれで判断しない、今、何をするかによる。人は行動によって変われるのだ、というのが印象的だった。罪を犯すのはいけないが、その後、その人の心が変わっていけば良いと思う。また、過去のことも重要かもしれないが、それにとらわれず、現在、現実を見ることが大事というのは、いろんな場面でいえると思った。（2年女子）
（もし人が変わることがないのなら，罪を犯した人はどこまでも罪人であって矯正することは不可能になってしまいます．もちろん，矯正不可能な人もいるでしょう．また，どんなに贖っても極刑をもって断罪せざるを得ないケースもあるとは思います．でも，「人は変われる」という信念は持ち続けたいと思っています．）

アングリマーラの話がとても印象的でした。アングリマーラの「聖なる場所に生まれて以来、人を殺めたことがない。この satya によって女性に安産あれ」ということばですが、なぜ「聖なる場所に」と付け加えたのかよく分かりません。「聖なる場所」とは何ですか？（2年女子）
（彼が自らの罪を自覚し，仏教者として“生まれ変わった”現在のことを言います．）

今日の講義はいつにもまして説明が早かったように思います。釈尊とアングリマーラの話は「聖なる場所に生まれて以来、故意に殺めたことがない」が真で、これはジャーティの超越のことって言うのは分かったのですが、ポイントが良く分かりません。ポイントは生まれとは単なる誕生のことではなく、行為による新しい自分の誕生のこと、アングリマーラの殺人という事実は消えないが、大切なのは今をどう生きているかだということですか？（2年女子）
（その理解で結構です．）

釈尊の、前世の業などの、今の自分ではどうしようもない問題には責任を取る必要はなく、自分が今やったことに対して責任を取れという考えに感銘を受けました。自分ができる範囲での最大限の償いをするという姿勢はすばらしいと思いました。（3年男子）
（仏教には，言われてみると「たしかにそうだよなぁ」と思う節が結構あることに気づいた方もいるのではないでしょうか．問題は「たしかにそれは分かるんだけど，なかなか実行できないんだよなぁ → 分かっちゃいるけどやめられない」という事実をどうしていくかだと思います．そのために仏教には様々な教説があり，自分にあった処方箋を選び取っていくのです．）

アングリマーラは何百人も殺しておいて、石を投げつけられるだけで済んだんですか。国の兵隊が捕まえたりしなかったのでしょうか。それとも殺人鬼を題材にした説話なのですか。（2年男子）
（授業中には触れませんでしたが，王が軍隊を引き連れて彼を逮捕に来ました．でも，彼の姿を見，さらに釈尊の話を聞いて，アングリマーラが生まれ変わったことを知ったのです．）

現在あるはずの自分が、あるかどうかもわからない世界（前世や来世）の責任や罪をつぐなう必要があるというのが輪廻。釈尊は、こういったものを全て排除し、今自分の行為に責任をを持ち、善悪を判断した。輪廻からの解脱がやっとつかめてきたように感じました。自分の行為に責任をもつことは当たり前のことと考えていたけど、輪廻では、前世や来世に責任転嫁できるから、今思うと、都合のいいように感じます。（2年女子）
（釈尊の到達した“諸行無常”の世界の一端を垣間見てくれたようで嬉しいです．）

大切なのは現在で、いつまでも過去のことにしがみ付いているのではなく、今を良くするためには何をすれば良いのかを考えることが大事だと思います。でも、過去の良い思い出にひたったり、過去の失敗をいつまでも悔やんだり…というのもなかなか止められません。過去にこだわり過ぎるのは苦しいけど、多少のことはしょうがないと思います。アングリマーラの話の『聖なる場所に生まれて以来』というのは、「釈尊の弟子になり、清い心に生まれ変わってからは」という解釈でよいのでしょうか？（2年女子）
（解釈，それで結構です．
　「分かっちゃいるけどやめられない」のが人間．だから人間には宗教が必要なのでしょう．）

罪を犯しても、過去ではなく、今をどう生きてるかってことが大事だと言うことですね。じゃあ、今日、罪を犯したり、やってはいけないことをしても、明日から、ただせばいいというのは・・・、だめなんですかね？（2年女子）
（正すのはもちろんとして，仏教では今日犯した罪の償いもしなくてはなりません．）

今、行う行為によってその人が決まってくる、という言葉が強く心に残りました。自分の理解を超えた、あるいは自分にはどうすることも出来ない過去や前世にとらわれ、悶々とした日々を過ごすのは良くない、という釈尊の考えも理解できました。ただ、やっぱり、ああすればよかった、などと「たら・れば」といった考え方をしてしまうのはやめられません。人間だもの。りんごはまだまだ遠いです。（2年女子）
（だから，何度も言っているように，釈尊と同じアプローチをする必要はないんです．釈尊はまさにストレート直球勝負でリンゴに到達しましたが，同時に，（というより，だからこそ，か?）人によって様々な処方箋が必要であることを見抜かれました．どうせ駄目なんだから何もしない，と言うのでは，薬があるのに飲まないで，いつの間にか手遅れになってしまう人と同じです．）

人の貴さがその人の行為で決まるという釈尊の考え方は当たり前のようで、みんな忘れていることではないでしょうか。世の中にはお金持ちや権力者が偉いという風潮がありますが、彼らが悪いことをしていれば、決して偉いとは言えないと思います。（3年女子）
（なぜ世の中には金持ちがいるのか? それは，そのお金をみんなのために使うようにと，神さまが金持ちを創ったからだ，という考え方をする宗教もありますね．その義務を実行しない金持ちは「悪人」となり，真の意味で「金持ち」とは呼べないことになります．正しい宗教教育に基づく歯止め，それがない社会は恐ろしいです．）

きょうの授業で「輪廻」というのは形而上の問題なので釈尊はそれがあるかないかについては言及しないと勉強しましたが、それではなぜ仏教に「輪廻」という観念があるのだろうかと疑問に思いました。また、先生がおっしゃた「仏教は能天気に人は平等とは言わない」という言葉がとても心に残りました。その言葉を聞いて思ったのは今の日本についてです。日本は平和を主張していますがそれがあまりにも無防備な「平和」であるような気がします。他の国からの攻撃から守るある程度の軍事力は必要だと思うのですが今の日本は頭ごなしに核兵器はだめだと決めつけて能天気に平和を口にする傾向にあるのではないかと先生の言葉から連想しました。（2年女子）
（仏教を受けとめた大多数のインド人は，「輪廻というサンスカーラ」を抱いていました．釈尊はあえてそれを否定しなかったのです．サンスカーラの有効利用は授業中に説明しました．
　正義・信条のない力は暴力ですが，実効性を伴わない力はただの無力だと感じています．日頃から有事に備えておかないと，いざという時になし崩しに国家体制が傾傾くことも十分あり得ます．「極右」も「極左」も速攻で議員の職を辞してもらいたいものです．）

自分の手の届かない範囲（生まれによる差別や死後の世界など）の責任を負わされるとしたら人間はすごく貧しくなってしまうと思う。生まれによる差別は日本にもえた・ひにんという形であって、今でも根強く残っている。釈尊の業主義はそういった今の差別問題を考える際に立ち戻りたい考えだと思った。アングリマーラの伝説を聞いて、単純に感動した。
釈尊の遺言で諸行無常の決着が着くらしいので、楽しみです。（2年女子）
（以下は釈尊のことばです．

人は生まれによって卑しいのでもなく，生まれによって貴いのでもない．人は行いによって卑しくもなり，行いによって貴くもなるのである．
）

アングリマーラの話がとても印象的でした。大きな罪を犯したアングリマーラは釈尊の弟子となることで心の平安を次第に取り戻し、そして彼に対してひどい仕打ちをしていった住民たちもやがては心の平安というものを取り戻していくと思うのですが、これらの平安は区別する必要はないのですか？（変な質問をしてすいません）（2年女子）
（「平安を区別する」ですか? 「平安の質を区別する」という意味なのか「平安の程度を区別する」という意味なのかよく分かりませんが，マイナスがプラスに振れることと，マイナスがゼロに戻ることとは，質・程度ともに差があると考えます．）

アングリマーラの話を聞いて、先日読んだ≪窃盗(もしくは強盗・・・・!?)で指名手配されていた人が住職さんに諭されて、自分も「住職になりたい!!」と自首してきた≫という記事を思い出しました。それを呼んだ時は「ははは・・・頑張ってください！」と思ったのですが、今日の話を聞いて、とてもすごいことなのだ、と思い直しました。笑い事ではなく、本当に頑張ってほしいです。（2年女子）
（そのご住職の教化力，見事なものだと感服します．是非お会いしたいものです．）

過去を悔いるのではなく、今を生きる。この言葉から高校時代に好きだった先生の言葉を思い出しました。「俺は今まで後悔したことは一回もないよ、そのときに自分が思った最良のことをしてきたんだから。」すごい人だと思ったのと同時に自分もそういう人間でありたいと思いました。今何をやるにしてもそれは自己責任でそしてその行動がいずれ過去の出来事になってもそれを悔いるような自分にはなりたくない、そんな行動はしたくない。そう思いながら僕は今を生きるようにしています。（2年男子）
（その先生，立派ですね．私は「分かっちゃいるけどやめられない」の実践者です (^o^; ）

今を生きることが重要だ、という考えに共感した。しかし、過去があってこその今、という点も否めないのではないかと思う。確かに、過去のことで悩み続けて生きていくべきではないと思うが、すべてをゼロにして忘れ去る、という考えではまた同じ過ちを繰り返すのではないかと思う。（2年男子）
（私は，そして何より仏教は，そのような主張は全くしていません．何か大きな誤解をしていませんか? 自分の理解に不安があれば，早めに研究室を訪れて質問するなりしておいたほうがいいと思います．）

アングリマーラの話には考えさせられました。石を投げられ、血だらけになっても耐え、自分のした罪を受け止める…。私は今までいろいろ悪さをしてきましたが、それを受け止められるほどの強さはないです…。仏教っていいですね、考え方とか、癒されます。（2年女子）
（癒されましたか．こういう話を聞くと私までホッとします．）

人間を生まれによって浄、不浄を決めず今までの行いによって決めるというのが印象的でした。たしかに生まれた時点で浄とか不浄とか決められてもどうしようもないですよね。（2年女子）
（どうやっても自分の責任取れないことまで背負い込む必要はない，と仏教は教えます．）

今日のアングリマーラの話についてです。彼は、釈尊の弟子になった。しかし、町の人々が彼を信用せず托鉢時の食料も与えなかった時、釈尊は「耐えろ」と言った。その時私は、釈尊が、過去の彼の行いの償いと思って耐えろと言っているのかと思った。そうすると、それは、バラモンの考え方と同じものになってしまうのではないかと考えた。しかし、私はその考えは違うことに気付いた。釈尊は、全く過去の償いのために耐えろとは言っていなかった。釈尊が「耐えろ」と言ったのは、ただ今を正しく生きろという意味で耐えろと言ったのだと考えた。この考え方であっていますよね?
　また、釈尊の教えは、過去にも未来にも縛られない、今のその行為が大切ということだった。そこで、私の頭の中に、「一事が万事」と「一期一会」という言葉が浮かんだ。これらの言葉は、総括して言えば今が大切ということを言っていると思う。だけど、「一事が万事」は、釈尊の一部の教えを掻い摘んだだけのような気がしてきた。なぜなら、「一事が万事」では、確かに、その一時の行為は今のことだが、それが、その人自身になってしまっては、「無常」という教えに反している。人間は、変わるのだからこの言葉は、今の行為が大切ということだけを掻い摘んだものだなあと思った。そこで、「一期一会」は、どうでしょうか？その出会いは一度しかないものと思って今の出会いを大切にということだと思うのですが、これは仏教的ですか?これは日本の茶道か何かから来た言葉と聞いたことがありますが・・・。それより何より、「一事が万事」の捉え方や、アングリマーラの話の捉え方は、正しいですか? （2年女子）
（釈尊はアングリマーラに「自分の犯した罪は自分で責任を取って償え」と説いたのであって，ニュアンスとしては前者です．ただし，ヒンドゥー・バラモンと同じ考えではありません．あくまで「自分で責任が取れる範囲かどうか」が大切なところです．
　「一事が万事」はサンスカーラ発動の典型ですね．繰り返しますが，社会生活を営む以上，サンスカーラを完全に排除することはまず不可能です．
　「一期一会」，仏教的です．）

自分の前世など取れない責任は取らなくていいということでしたが、そのぶん今の自分の行動によってすべてが決まってくるということで少し考えさせられました。やはり、自分を形成していくの今の自分自身で、どこかに責任転嫁して逃げることはできないということですか。（2年女子）
（そうです．自分には絶対に責任の取れないことまで引き受ける必要はありませんが，その代わり，自分の蒔いた種は，善いものも悪いものも自らで刈り取る必要があるということです．もちろん，これはリンゴに至る一番ストレートな道であって，実際には様々なルート（処方箋）が存在します．）

今を生きていく、っていう生き方は私にはぴったりのようで、遠い感じもしています。私は少し前まで、先を見てからじゃないと動かないような生活でした。しかし、ある出来事がきっかけで先をみることなんてできない、そんなに器用に生きていけなくなりました。実際それまで器用に生きていけていたのかは別として。私は今を生きるようになりました。悔いるような行動はまだまだあるかもしれないけど、とりあえず言えることは、今というときを、最大にふくらまして、充実させるためには、先生の話を聴いてこうやって自分の中のなにかが変わっていくこと、これは絶対後悔するものではない、と実感しています。（2年女子）
（がんばれ!!）

確かに輪廻にとらわれて現世を過ごすことは、人生を無駄にしていると感じました。前世の分かるはずもない全くのサンスカーラによって私たちに身分差が生じるのなら、それは身分の差を利用して優位に立ちたい人間の仕組んだものだと思います。とすると、インドのカーストに疑問を感じます。たとえそれをインド人が受け入れているからとはいえ納得できません。インド人に是非仏教を学んでほしいと思いました。（3年女子）
（当初，仏教はインド人に向って説かれました．しかしインドでは 1500～1600年くらい経つうちに一旦滅んでしまい，インド以外の土地の，インド人以外の人たちによって信奉されています．歴史的に見た場合には，インド人はカースト制度を自ら選択したのです．）

過去を悔いるよりも、今をどのように生きるかが仏教では大切だということが分かった。過去にとらわれすぎて今を正しく生きれなくなるのはもったいないと思った。でも、自分がしてしまった正しくない行為を反省することは必要なのではないだろうか。そこから人間として成長することもあるだろう。（2年女子）
（当然ですね．授業でもそう説明しています．）

前世でしたとされることや、肌の色など、自分で責任を負いきれないものは負う必要がない。自分のしたことで善悪が決まる。このような仏教の考えは、個人的に好きです。しかし、自分が責任を負う必要はないと考えたことも、他者がそれを認めない限り、責任は負わされ続けることになるのではないかと思いました。どうしようもないことに責任を負わなくてもよい社会というのは、きっとやってこないだろうと思います。世界中の人が仏教徒、しかもきちんと仏教を理解した仏教徒にならない限り･･･。（2年女子）
（未来のことについてサンスカーラを発動させるより，今を生きよう!）

アグリマーラの話は結局奥さんの讒言が明らかにならないまま終わっていて少し残念でした。その話で「聖なる場所に生まれて以来故意に殺めた事はない」というように釈尊に命令されたのはなぜですか？どうして「聖なる場所に生まれて以来」と付けたことによってその言葉が力を持つようになったのでしょうか。その辺があまりよく分かりませんでした。（2年女子）
（そのことばが satya になったからです．satya なことばがなぜ力を持つかについては，アジア文化論 I で詳しく説明しているのでこの講義では割愛させて下さい．）

今日の授業で、以前先輩に「今、死んでも後悔しない生き方をしなさい」と言われたことを思い出しました。過去の思い出はいつか忘れてしまう。今をこれ以上ないくらい真剣に生きることは、私のように毎日ダラダラとすごしている人間にとっては難しいことのように感じます。自分のしたことに責任を持って生きること。これはそんなに難しくないように思いました。仏教は日常に密接につながっているように思いました。（3年女子）
（仏教って，おそらく皆さんが思っていたほど厭世的な教えではなく，とっても身近でしょう? ）

今日の講義の中での、アングリマーラが必死に釈尊を追いかけるも釈尊から見れば｢動いているのはお前の方であって私はずっと止まっている｣という所で感じたのは、やっぱり一度起こってしまった事をジタバタと動揺しても仕方がないんだなぁということです。私も一度おかした失敗をなかなか拭い去れないままズルズルと引きずってしまいがちなので、この言葉すぐ自分を当てはめてしまいました。それと、これまた講義の中の｢諸行無常｣の所でも言われてましたが、過去のことにクヨクヨしたり、変に未来に対して不安を抱くより、｢問題なのは今何ができるかだ！｣というフレーズにとても勇気ずけられました！この講義って週末の早朝の授業なので眠いし寒いし何か憂鬱だなぁと思いがちなのですが、帰る頃には何となく清々しい気持ちになります！（3年男子）
（ (^_^) ）

諸法無我＝全ての物はアートマンではない。考えてみたら確かにそうですよね。先生はアートマンの事を日本で言うと霊魂のようなものと説明しておられましたが、仏教は霊魂の存在の有無について議論しないのですよね。霊魂は形而上学的なものだから。以前、安齋さんの講演を聞いたとき、「そもそも仏教には幽霊とか、死んだ人が化けて出るなんて考え方はない」というお話があったのを思い出しました。仏教文化の講義で理論的裏づけがとれました。（4年女子）
（あなたには（そして安齋教授にも）仏教に関しての誤解が見受けられます．こちらをご覧下さい．）

過去を悔いて苦しむのも未来を考えて憂えてしまうのも人間である以上、｢分かっちゃいるけどやめられない｣ということなんですね。私は釈尊のようにきっぱりと過去への後悔や未来に対する不安を断ち切ることが出来ないけれど、なるべくそれらにとらわれずに生きていこうと思います。前から知っていた歌にこんなに深い意味のある言葉が埋もれていたことに気付いて、今日は驚いてしまいました。（2年女子）
（スーダラ節は奥が深いですよっ! ）

今というのは未来を想定しなければ動けないような気がします。例えば、就職、進路、それらに限らず、夕飯前の買い物でさえもです。それは、別に未来に不安を抱いているわけではないから、考えてもいいのですか?釈尊の言っていることは、未来を踏まえた上での、今の行為のことですか?それとも、未来のことなど考えずに、ただ今を生きなさいということですか?もしそうだとしたら、私たちは、未来の状況を想定することなしに、今を生きることはできないと思います。（2年女子）
（「過去は悔いるものではなく学ぶもの，未来は憂うものではなく慮るもの」です．未来を考えて今を生きることが仏教に反するわけではありません．前から何度も申し上げているように，釈尊は「当たり前のことを説き，そして当たり前のことを当たり前のように実行した人」です．）

アングリマーラの話で、街の人たちが石を投げつけたりしても「今までの殺人の罪を受け止めなさい」と釈尊は言い、アングリマーラはその通りに何をされてもその人たちをまた殺すのではなく、改心していった話を聞いて、「生まれ」がそうさせたのだとか、「運命」がそうさせたのではないと思えた。その人の価値は生まれではなく、その人の行為によって価値は決まっていく。その通りだと思った。大事なのは中身であると再確認した気がする。過去や未来を見てもどうしようもできないのだから、今（現在）をきちんとみつめていこうと思った。でも、本当に人生って一切皆苦な気がしました・・・。（2年女子）
（一切皆苦（思い通りにならない）と承知していようが承知していなかろうが現実は変わりません．でも承知していれば，常に少しずつ軌道修正しながら生きていくことも可能になると思います．）

過去を後悔せず、未来への不安を捨てて今を精一杯生きる、これができたら最高だと思います。しかしそんなことはできないと言う人は多いです。でも、できないできないと言っていないで、過去や未来のことを考えながらでも今自分が何をすべきかを考えなければならないと思います。今日の授業を聞いて自分に厳しくなれたことが嬉しいです。（3年女子）
（納得したら，あとは実践あるのみ．あなたの人生がより実り豊かなものとなるよう祈っています．）

生まれがどうとか、劣等感などの負の感情にとらわれず生きることができたら幸せだと思います。しかしそんな風になろうとすること自体が既にとらわれているのではないか、などと考えているとキリがありません。（2年男子）
（なれるように正しく努力すればよいのです．仏教は，目標をもって努力することを奨励します．問題は，その目標が到達可能かどうかを見極めることです．）

いつも、釈尊の言葉や伝説をとても興味深く聞いています。今日のアングリマーラの話で、人々から食糧ではなく石をもらうアングリマーラに釈尊は「耐えろ」と仰っていますがもしもアングリマーラに家族を殺された者達がいつまでも彼を許さなかったとしたら、許されないまま死ね、ということですか？すごい放任主義ですね･･･それとも何かフォローをしてくれていたのかな？？自分でしたことは自分で責任をとらなくてはならないってことですよね。アングリマーラの師匠と妻にはお咎めナシなのがなんとなく納得いかない感じですけど、彼らはもう救いようがないのかな。聖なる場所に生まれ変わる瞬間と言うのは、釈尊の弟子になった瞬間、それとも自分の罪を悟った瞬間？でも彼は最初から殺人なんかしたくなかったわけだし、最初からそれが罪だって知ってたんですよね･･･むずかしい。（2年女子）
（釈尊は，アングリマーラが正しく修行し続けていれば，きっと皆は許してくれることを見抜いていたはずです．「聖なる場所に生まれ変わった瞬間」は，彼の場合，「罪を自覚し仏道修行を始めた瞬間」でしょう．）

今日はなぜか、「分かっちゃいるけどやめられない（人間だもの）」という言葉にものすごくほっとさせられました。過去のことを考えて悩んでいてもしょうがない、過去はかえってこないんだからと言い聞かせても、やはり考えてしまって、「ダメだなあ」と思って悪循環・・・なんてこともあるけど、人間だもの、そんなときもあるさと前向きになれそうです。過ぎてしまった過去を消してしまうことはできないけど、何らかの形で行動を起こしていくことによって、過去への後悔や未来への不安を取り除くことができれば・・・と思いました。
ところで、前世の業が次の生まれにつながるというところの話でふと思ったのですが、何かラッキーなことがあったときなどに、「日頃の行いがいいからだね」と言ったりするのは、このような考え方と関係があるのでしょうか？（2年女子）
（後半，その通りです．前半，「分かっちゃいるけどやめられない（人間だもの）」は人生の真理ではないかと私は思っています．仏教の一宗派に限定のものではないですよ．）

アングリマーラの話で、釈尊は「私は止まっている、動いているのはお前の方だ」と言ったが、その表現はとても明確なものだと思った。今までの話を聞いていても、釈尊はどんな相手にも理解できるような表現で教えを説いていると思う。どんな人間にも理解できるものであってこそ教えを説くという行為は成立すると思う。また、「行為によって人は変われる」ということだが、この過去にも未来にもとらわれず、現在の行為を重視した考えは、全ての人間を救うものである。（2年女子）
（「誰でも救える魔法の処方箋」はないと私は思っています．例えば，許しが罪人の心を救う場合もあれば，甘やかしてしまう場合もあります．要は患者に合わせて適切な治療を施すことなのです．）

「生まれによる差別はない。過去や未来には手が届かないから、自分で責任はとれないのだ。　悪いことをしてしまっても生まれのせいにせず、しっかり責任をとればよい。　行為によって人は変わるのだから、過去や未来に縛られず、今何をしているかが大切なんだ」と釈尊は説いていますが、カースト制が浸透していたインドでこの考え方はすぐに受け入れられたんですか？　私はこの時間論がすごく好きです。自分が行動できる今を大切にして、前向きに生きていけたらいいなと思います。過去にとらわれがちなので、すぐには無理かもしれませんが・・。
釈尊の考え方や言葉に毎回考えさせられます。以前先生がおっしゃった「当たり前のことを当たり前に行うことがいかに難しいか」ということが分かってきたような気がします。（2年女子）
（仏教は，ある時期，インドの思想界に大きな潮流を巻き起しました．人が，自ら創り出した“サンスカーラ”の迷妄に混濁している時に，そこからの覚醒を説いて，本来持っていたはずの精神の自由を再獲得させたのです．）

一切皆苦について私なりの理解を示したいと思います。
人間は決して世界（あらゆる構造）を超越することはできず、様々な構造（言語、慣習、システム）＝サンスカーラの中で生きていくしかない（分かっちゃいるけどやめられない）。従って、自由意志なるものもない。たとえ自分が自由意志によって決定していると思っても、それは構造＝サンスカーラの中でのことに過ぎない。｢苦｣とはそのような人間の在り方（思い通りにならないこと）のことである。（4年男子）
（一部誤解があります．人は何かに操られているわけではありません．サンスカーラの中であっても，決定するのは個人の責任です．）

アングリマーラが耐えて耐えて、そのうち周りの人の心をも動かすようになったのは、すごいと思いました。釈尊に、そう言われても、実行できるかどうかは結局は自分のことだから、実行できた彼は本当に釈尊の弟子になったなぁと思いました。分かっちゃいるけどやめられない　は、なんだか自分でよく言っているような気がします。（2年女子）
（「やめられない，ならどうする?」の問いにまで進めるといいですね．）

自分が日本人だからとか、誰のこどもだからとか、女だからとか、そういう自分にはどうしようもならないことで他人から蔑まれたり嫌われたりするのは、ほんとうにたまらない。でも、そういう自分ではどうにもしようがない事だから簡単にあきらめることができる、というのもあります。それ以外の、例えば行動や言動、性格によって誰かに責められたり軽蔑されたりしたなら、それはまぎれもなく「自分」の責任であって、逃れることができないから。（3年女子）
（理不尽な境遇を甘んじて受け入れるのも，それを改善して生きるのも，どちらも人生です．）

今を大切に生きるということは、行為によって生まれ変わることと繋がっている気がしました。私は最近悩んでいることがあるのですが、釈尊の、「止まっている。動いているのはお前の方だ」という言葉が心に響きました。ああ確かにそうだ、と感じました。この講義によって心が軽くなったり何かを見つける人は少なくないと思います。まるでカウンセリングを受けているみたいです。ところでアングリマーラの、釈尊の助言後の行動が、ガーンディーの行動と少し重なってみえたのは私だけでしょうか？（3年女子）
（カウンセリングですか? あなたにとってこの講義が役に立っているなら何よりです．）

過去にも未来にもとらわれず、今があって今が大事という考え方がすごいと思いました。なかなか出来ないことですね。この授業に励まされているような気がします。（2年女子）
（教師たるもの，誰でも微力ながら皆さんの人生を応援しているものですよ．）

アングリマーラの、動いているのはお前の方～というのに、ドキッとしました。なにか、自分のことを見透かされたような気になりました。　　　　私は今、ある武道をしているのですが、よく、師範代のように美しい（そう見えるのです）立ち振る舞いが出来ないことにもどかしさを感じるのです。でも、修業の年数が明らかに違うのだし、うまくいかないからこそ稽古に励めるんだということを、受け止めたら、ちょっとだけ楽になりました。ある意味これも、サンスカーラが除かれたことによって生まれる、ありのままを見るってことなのかな、と思うのです。　　　この講義を受けてから、色々なことを、あ、これもサンスカーラが働いているからかも、という視点から見えるようになってしまいました。そして、ああ、やっぱり世界はサンスカーラだらけだなと感じるのです。（2年女子）
（その，サンスカーラだらけの世界で，できるだけサンスカーラに惑わされずに生きていくことができれば，同じ時間を過ごしても人生は大きく変わってくるはずです．どう生きるのもある意味では個人の勝手．でも，自由に生きる権利は，そこから生じる結果に対して責任を持つことと抱き合わせではじめて成立するものです．お互い，よい人生を送りたいものです．）

「行為によって人は生まれ変わる」という言葉は、私の心にとても響きました。今の自分からは、絶対変われないとあきらめるのではなく、変わるために今、現在何ができるか努力しなくてはいけないんですね。アングリマーラは、過去確かに殺人を犯してきたけど、自分を変えるためにひたすら耐えて皆の恨みを受け止めたことは、本当に信じられないくらいすごいことです。
釈尊の考え方にははっとさせられることばかりです。今の私たちの生き方に通じるものがありすぎて…（2年女子）
（これからも仏教に興味を持ち続けて下さいね．）

まずは時間論についての諸行無常についてですが、アングリマーラの話を用いて「生まれ」についての話がとても印象深かったです。人は「今」行っている行為によっていくらでも生まれ変わることができる。悪い事を犯してしまったら自分が今できる限りの償いをして、あれこれ悩まない。「生まれ」というわれわれが今まで持っていた観念が必ずしも絶対ということはないのだ、ということに気づかされました。オギャーと母から産み落とされることだけがその人のもつ「生まれ」ではないし、バラモンの言う、生まれて、持ってきたその個人のカーストはずっと変えることができな「生まれ」も絶対ではない気がします。今を精一杯生きることで自分はどんどん生まれることができるのですよね。そう考えるとドキドキしてきました。それに、この世の中には、絶対というものがないということになりますよね。（生まれの観念と同じように考えると）そう考えると何が何だか分からなくなってきてしまいました。だから、私は今のこの気持ちを大切にしていきたいと思います。
最後に、鈴木先生の好きな本を教えていただきたいと思います!!哲学系の本がいいです。（2年女子）
（アングリマーラの話，よく理解してもらえて嬉しいです．
　大学3年生の時に読み，今でも好きな本の一つに『大乗起信論』があります．岩波文庫にも入っているので入手しやすいと思います．）

【総評】皆さん，サンスカーラをよく理解してくれています．次回は釈尊の遺言を通して，“諸行無常”理解に一応の決着をつけておきましょう．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

suzuki AT ypu.jp