12/21 No. 8

12/21 アンケート8号の評価

アンケート8号（総数 26；ちょっと少ないぞ）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や回答内容の質には全く関係ありません．

複数の同一回答は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

今回は，代表的な初期大乗経典である『般若経』『法華経』『無量寿経』『阿弥陀経』を取り上げて，その思想を紹介しました．

真理を説く人は誰もが仏陀であり、その説いた真理はある条件を守っていれば全て教えといえるというのが仏教の大きな特色だということがよくわかりました。（3年女子）
（大変結構です）

大乗仏教が現れたことにより、これまでのスコラ哲学的な考えから、釈尊の原点を目指したものになったのに、中期や後期の大乗になると、再びスコラ哲学化したという所が不思議です。サンスカーラの考えがきちんと適応できなくなると、仏教は機能しなくなるということがわかりました。（2年女子）
（インド人の議論好き，探求好きも一因だと言われています）

どうして、インド人は蓮華が好きなんですか？（2年女子）
（通説では，暑いインドでは水面に咲く蓮華は清涼の象徴だ，ということになっています）

サンスカーラを全く使ってはいけないのではなく､必要ならば積極的に使っていってもよいというのはおもしろい｡釈尊の教えを踏襲しながらも､彼のやらなかったことを人々を救うためにやってしまう｡そういうところが他の宗教とは全く違う性格を持って生まれた仏教らしいと思う。（2年男子）
（You made it!!）

サンスカーラに惑わされずに生きている仏陀であっても、患者を助けるためにはサンスカーラを使うということを知ったとき、初めて処方箋の意味が分かった。なぜ、このような仏教が続いていくことができないのですか。（2年女子）
（やっぱりスコラ哲学化して，民衆との結び付きを欠いていってしまったのが大きな原因です．残念です）

釈尊が死んでしまってから、大乗仏教に移ったが、何度もスコラ哲学の方向へ傾いてしまったようであり、仏教というものが不安定に変化していったといえる。まさに全てのものは、時とともに移り変わっていくものであると言う、諸行無常の考え方が仏教というもの自体についていえる。仏教も時とともに変化したのであろう。現在の仏教の姿はどんなものなのだろうか。（2年女子）
（現在の仏教の姿―あなた自身の目で見極めてみて下さい）

大乗経典は、無用なサンスカーラを増大させないという条件を守れば誰でも教えを説くことができるとあったが、どのようなサンスカーラが無用なのかがよく分からなかった。マイナスのサンスカーラが無用なサンスカーラなのですか？（2年女子）
（次を参照して下さい）

大乗仏教の話のなかで、無用なサンスカーラを増大させないこと、という話があり興味深かった。インチキ宗教は、人々の元々何もないところにインチキのサンスカーラをうえつけてから、人々を救うふりをする。一見すると、その人は救われているようだが元に戻っただけである。インチキ宗教の手口を少しみたようで興味深かった。（2年女子）
（この「インチキのサンスカーラ」が「無用のサンスカーラ」です．そのサンスカーラを発動させることで，以前より不安が増えるなどのマイナス効果を及ぼすサンスカーラが無用のサンスカーラです．インチキ宗教はまず間違いなくこれをやります．冷静に見てみるとなかなか興味深いですよ）

六波羅蜜の一つである“布施”についてなのだが、この前法事でお寺に行った時に住職さんが説法されたのだが、布施について説かれていた時“調和”という言葉が何度も出てきてそれが大切だと言っておられた。先生は「布施ではする方が“ありがとう”という」と話されていたと思うが、先生が言っておられる布施と住職さんが話された布施とは微妙に違うような気がしたのだが、つまりは同じことなのだろうかと少し疑問に思った。（2年女子）
（その住職さんの話された内容が分からないのでコメントしにくいです．もう少し詳しく書いてもらえると嬉しいのですが）

釈尊がいなくても患者のために教えを説いた人がいるということには、強さが感じられた。しかし、やはり釈尊が死んでから仏教の形が変化し、何度も不安定な状態に陥ってしまったということを考えると、釈尊の存在が大変偉大なものであったということがあらためて感じられた。（2年女子）
（そうですね．仏教徒にとって釈尊が偉大な存在であったことに間違いはありません）

必要があればサンスカーラを使ってもよいというのは、おもしろいと思った。仏教は一つのかたちにとどまらず変化をしているので、今の仏教がどんなものなのかよく知らないので、知りたいと思った。（2年女子）
（最後の講義で触れられるとよいのですが，時間の関係上，できないかも知れません．研究室を訪ねてくれれば直接教えてあげます）

なぜ口承でのみ伝えられていたのか不思議に感じた。一人一人の処方箋が異なるにしても、口承ではどうしても誤解や解釈の差が生じるのではないかと思うのですが・・（3年女子）
（口承中心だったのは，宗教上の真理を書き留めるという習慣がなかったことが第一の理由です．それから，誤解はまずいですが，解釈の差が生じても一向に構いません．その解釈こそが，その人に合った処方箋だったからです．また，逆に言うと，たとえ書き留めたとしても誤解や解釈の相違は避けられません．数多く残る写本がそれを雄弁に物語っています）

仏教の教えの基本となる考えや仏教の再生を願ったものが大乗仏教であるということが分かった。大乗仏教は初期･中期とあり、中期大乗が後期大乗と密教とにわかれていると知り、大乗仏教は奥深いものがあるのだなあと思った。（2年女子）
（“中期大乗が後期大乗と密教とにわかれている”のではありません．大乗仏教が発展して行くにつれ，後期大乗へ向う方向性と密教へ向う方向性が分かれてきた，ということです）

仏教は今日に至るまで生き残るにあたって、時代のニーズ（？）に対応しながら変化してきたんだと思う。サンスカーラの必要に応じて使ってもよい、という点は変化上、良い変化の１つに私ならいれたいと思う。サンスカーラにみられるような一種の「順応性」はどんなものにも変化の上、時代を越えていくうえで必要なもののひとつだと思う。（2年女子）
（発展する→組織が大きくなる→身動きが取りにくくなって膠着→衰退，という過程も見られます）

今まで「菩薩」は漠然と「仏様」だと思っていたのですが、今回の講義で、釈尊仏陀を目指している仏陀修行者だと知り面白いと思いました。阿弥陀や浄土など聞いたことがある言葉について、どんどん新しい知識が入ってくるのでとても新鮮です。（2年女子）
（これからも新鮮に驚いて下さい）

般若湯は『般若経』と関係があるのか疑問に思った。（2年男子）
（そのとーり! 般若湯とはお酒の隠語です．酒を呑んではならないはずの僧侶が酒を呑んだときの言い訳として，「これは智慧（般若）のつくお湯でな」と言ったことから名付けられたと言われています）

真理を説く人は釈尊でなくてもいい、誰でもいいのだ、今そこにいる人に処方箋を与えてくれる人が仏陀なのだという考えは、他の宗教には頂点に立つ人がいて、その人の教えや考えを忠実に守って行こうとするのに比べて、一つの考えに固執するのではなくその場に合わせて臨機応変にやって行こうとする、すごく柔軟性のある考え方だなと思いました。あと，インドでは蓮の花の色によって呼び方まで全く変わってしまうというのはすごく興味深い話でした。（2年女子）
（原語で学べばいろいろなことが見えてきます）

今日は、誰でも仏陀になれると聞いて、僕も頑張ってみようかな？、と思いました。質問なんですが、チベット仏教は密教に入るのですか？（2年男子）
（誰でも仏陀になれる可能性はあります．期待していますよ．それから，チベット仏教は後期インド仏教の延長上にあって，大乗仏教も密教も両方あります）

私は英語語学を研究したいのですが、今日の授業を聞いて、インド語学も研究したくなりました。（2年女子）
（英語はやめてうちのゼミにおいでなさい．それから，4月からパーリ語を正規科目で開講します．お楽しみに）

六波羅蜜の話のところで、六波羅探題のことをおっしゃっていましたが、やはり「探題」も仏教に関する事なのでしょうか。あと、浄土の意味を勘違いしていました。他にも勘違いされている仏教の言葉はやはりあるんでしょうか。そういう雑学的なことも聞いてみたいです。（3年男子）
（雑学的なものは講義の中で自然と出てきます．日本は仏教文化圏に入っていますから．もしその手の話だけを聞きたいときは気軽に研究室に来て下さい）

六波羅蜜には、文法的に正しい語源から来る”完成”という意味と、本当の意味を知っていながらわざと辻褄の合うように捉えた”到彼岸”という意味があると知った。厳密に翻訳するチベットでさえ、後者の意味で訳していると聞き、更に驚かされた。また、インドでは蓮の花の色の違いで名詞そのものも変わるということから、「他国の言語で同じようなものを細かく言い分けたりしているものは、その国の歴史においてそのものに注意を払っていた証」と言った内容などは、言語学に関心のある私にとって、とても興味深い内容だった。（2年女子）
（今回の講義ではインドの言語に興味を持った方が少なからずいて，私としても嬉しいです）

【総評】出張が入って二週間ほど空いてしまいましたが，皆さん，よく理解してくれています．次回は大乗から密教へと入っていきましょう．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

suzuki AT ypu.jp