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1/11 アンケート9号の評価

アンケート9号（総数 33）の結果をお知らせします．「自分の意見が載っている，載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や回答内容の質には全く関係ありません．

複数の同一回答は，原則的に最初に目についたもののみを採用しました．

原文の一部を修正したものがあります．

男子・女子の区別は氏名に基づく判断です．もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい．

新年明けましておめでとうございます．本年もよろしくお願いします．

今回は，中期大乗の如来蔵・仏性思想に始まり，密教，チベット仏教，南伝仏教，そして中国仏教の鳩摩羅什の時代まで駆け下りました．

話の展開が早くてあまり理解できていなかった。サンスカーラの辺りのほうの話の方が面白いと思った。仏教仏陀崇拝が中国の「忠」の思想に反するとはどういうことですか。「忠」ってナンでしたっけ？次回は日本に入っていくということで、楽しみにしたいと思います。（2年女子）
（仏陀を崇拝して帝王を崇拝しないのが忠に反するということです．忠が何かは自分で調べてみましょう）

密教の、極端な意味での体験至上主義というものには少し怖さもありますが、体験こそがものをいうような考えに対しては大変共感できます。共感するということは難しいことなのかもしれないと深く感じさせられました。
　次回からの日本での仏教の動きが楽しみです。（3年男子）
（「体験とことば」は仏教の根元に関わる問題です）

密教におけるシンボル操作については、はじめはほとんど理解できなかったが、神社での参拝の例を聞き、そういうことかと思った。（2年女子）
（そういうことです．皆さんもよくやっているのでは? 占いなんかもシンボル操作の一つと考えてよいでしょう）

密教の本質的部分である「シンボル操作によって、実際の行為を代替する」ということは、密教独自のものであるなと感じました。
　また、このような事が自分にもできたらおもしろそうだなと思いました。（2年女子）
（「できたら」ではなく「できると信じる」ことができれば成立してしまう世界です）

中国に仏教を伝えるために格義仏教ができるなど、教えを伝えるために様々な工夫や練りだしをしているのだと思い、何かを人に分かってもらうためには、練りだし工夫が必要だと思わされました。
（2年女子）
（私も授業ではいろいろと工夫しているのです）

今年もよろしくお願いします。中華思想という独自の考えが根強い中国において、外来の宗教である仏教が中国国内に浸透していったという事実は、仏教がいかに深い教えであったかということをよく示していると思いとても驚きました。すごいですね。日本は如来蔵についての解釈が違っているというお話をなさいましたが、現在もずっとそうなのかなと思いました。その辺は来週お話してくださるのだと思うので楽しみです。（2年女子）
（たしかに中古天台の本覚法門は如来蔵・仏性を誤解していたと言えますが，鎌倉新仏教がそれを乗り越えていきました）

密教について興味をもった。密教は体験至上主義であり、だからこそ瞑想・ヨーガ・シンボル操作を大切にするのだろうか。（2年女子）
（「ことば」に依らず「体験」を重視するときには，通常の手段やコミュニケーションでは通用しなくなりますからね．問題は，果たしてそれが本当に他者と共有できるかどうかということです．釈尊は悩んだ末，結局「ことば」に依ることに決めたのです）

チベット仏教の話で、誤解される怖れから大乗仏教を修めないと密教を教えてもらえないという話を聞いて、空海が最澄に誤解を怖れて仏典か何かを見せてあげなかったという話を思い出しました。仏教について学んでいてよく思うのは、言葉面だけを捉えて曲解したり、議論に終始したりすることが多いということです。何事も、対象に向かって真摯に考える事がなければ、意味のない形だけが残されていくのではないでしょうか。（3年女子）
（空海と最澄の話を思い出してくれましたか．実は次の授業でお話ししようと思っていたのです．あなたの指摘の通り，空海の場合もチベット仏教と同じで，密教を「ことば」だけで学ぼうとすると誤解が生じることを恐れ，『理趣経』という経典を最澄に貸さなかったのです）

体験というものは伝承不可能であることにより、シンボル操作によって実際の行為を代替するということが、私にとって新鮮な考えであった。しかも、花を見ることによって食事という行為を代替するなど、一見関係のないように思うので不思議に感じた。あと、内在物仏の話がよく理解できなかったのでもう一度説明してほしいです。（2年女子）
（内在仏思想である〈如来蔵・仏性思想〉は，仏教者が目指すべき究極目標である仏陀・如来を，まだ仏陀になっていない仏教者一人一人の内側に見出す考え方です．キリスト教の「神の国は汝の内にあり」やイスラームのスーフィズムの考え方とも似通ったところがあります．このような感じでいいですか? もしこれでも分からなければ直接質問に来て下さい）

シンボル操作によって、呪文を唱えるだけで仏陀になることができたり、手に印を結ぶことによって修行することができる密教は危険なものであると感じた。この密教の性質が日本にはいってきたときどのようなかたちだったのだろうか？今の日本にはこのシンボル操作はどのような形で残っているのか知りたい。（2年男子）
（次回は最澄・空海について話すので，そのときに説明しましょう）

仏陀の教えとは違い、密教では体験を口で説明して伝えることはできないとしているのがおもしろいと思いました。でも確かに個人個人で感じ方は違うのだから、その通りだと共感しました。（2年女子）
（少しだけ誤解があるようです．釈尊も体験をことばで説明することができないと考えていました．授業で何回も説明したように，リンゴを食べた体験（＝リンゴの味）を，リンゴを食べたことのない人にことばで正確に伝えることは不可能なのです．しかし釈尊は迷った末，「リンゴの味を伝えられなくても，リンゴを食べたいと思わせることはできる」と思い，ことばに託して教えを説いていったのです．密教はこのプロセスを踏襲せず，個人的体験を重視し，「ことばにならないことば」で真理を伝えようとしたわけです．それで果たして伝わったのかどうかは，密教を伝授された方しか分かりません．あなたの廻りに密教をやっていて，その人が仏陀であれば，その人は密教を伝授されたと言ってよいと思います）

天台本覚思想を聞いたとき、可笑しくなった。確かに「人はもともと如来蔵である」なら、修行する必要はないと考えてしまうかもしれない・・・それにしても極端である。シンボル操作の話については、ここまでくると「何でもアリだ！」という状況になってしまうなと思った。（2年女子）
（間違うと何でもありになってしまうところが怖いのです）

なにかの本で南伝仏教（小乗仏教）と書いてあったので、私は南伝仏教と小乗仏教は同じものだと思い込んでいました。今回の講義で南伝仏教と小乗仏教は同じものではないということを初めて知りました。（2年女子）
（誤解が解けて私としても嬉しいです）

今まで密教という言葉は聞いていたが、それがどんなものであるのかほとんど知らなかったので、今回、密教について勉強することがよかったと思う。（2年女子）
（よかったですね）

密教のシンボル操作の話しが心に残った。神社の参拝において行われる手をあわすという行為はなにげなくしていても意味があるのだなあと感じた。（2年女子）
（人間は知らず知らずのうちに何らかのシンボル操作を行っていると言えます）

トイレに行きたくなったとき、シンボル操作で解消できたらどんなに素晴らしいことだろうか、と思った。密教はすごい。（2年男子）
（いい譬えです．そこから，「全てのことに関してシンボル操作は可能なのか」ということに思いを巡らせてみて欲しいと思います）

密教ではシンボル操作によって実際の行為をしたものとみなすことが可能であると知って、宗教の怖さというものを実感した。これは個人的瞑想のなかでだけ、可能なものであって、その人の思い込みにすぎないといえる。このように、実際には行っていないことでも他の行為をすることによって行っていると思い込むようなことばかりがあふれる世界になると、混乱が引き起こりそうである。（2年女子）
（シンボル操作はあくまで個人的体験の中での話なんです．それを他者（外的世界）にまで適用しようとすると，必ず齟齬を起こします）

密教の『シンボル操作』は、とても興味深いものでした。実際の行為を代替可能と考えることが密教の本質的部分であると知り、驚いた。（2年女子）
（それが密教の本質です）

話の展開がとても早かったので、しっかりと内容を消化しきれていないような気がするのだが、シンボル操作についての部分は結構深く印象に残っている。シンボル操作というものはかなり極端であるというか、強引すぎるのではないかと思った。また、シンボル操作によって実際の行為を代替していると思えることもある意味すごいと思う。これが密教の本質的なものであるということは、一歩間違えれば非常に危険な宗教へとなり変わってしまう可能性を持ちあわせているということなのではないだろうか。（2年女子）
（オウムはこの辺りを完璧に悪用しました．誤解の上に誤解を重ね，教義の歪曲や独断的創作を織り交ぜながら，次々に殺人行為を行ったのです）

元々一つの宗教なのに様々な伝わり方があり、独自の考え方がうまれるのはおもしろいと思った。仏教にここまで広がりがあったのだと知って驚いた。（2年女子）
（「よい処方箋であれば仏陀の教えである」ということです）

同じ仏教でも伝わった後、国によって形がそれぞれ変わっていくのが面白いと思った。（2年女子）
（人や国が異れば処方箋も変わるのです）

たしかに人にとって体験というものは、大きな力を持つ。それゆえに得るものには、かなりの個人差が生じそうだが。他にどんなシンボル操作があるんだろう･･と興味がわきました。（3年女子）
（詳しく知りたければ密教関係の本を紹介しましょう．もっとも，密教を「ことば」だけで理解することはできませんし，「体験」で理解したものは他者に伝えられません．うーん，難しいですね）

密教のシンボル操作はおもしろいなと思う反面やはり怖いものだと感じました。実際にはしていないのにその行為があったとみなすという考え方は何か仮想現実のような不思議な違和感を感じました。（2年女子）
（一つ間違えると宗教の暗黒面に陥りかねない危険性を秘めています．だからこそ，誰にでも教えられるわけではないということで「密教」と呼ばれるのです）

呪文を言えば、誰でも仏陀になれるということに驚いた。（2年女子）
（密教経典である『金剛頂経』に従えば，五相成身観のマントラ mantra で私も仏陀になっているはず．どうです? 仏陀に見えますか?? (^^; ）

密教の「密」というのは、一般の人間に簡単に学ばせない、秘密である、という意味の「密」なんでしょうか。
顕教と逆の意味になるのでしょうか。
今日は話の進み方が早かったです。でも特に分かりにくいところもなく、不満なわけではありません。（3年男子）
（そうです．密教側から見て大乗仏教は顕教になります．でもそれはあくまで密教側から見た言い分で，大乗仏教側は「自分たちは顕教だ」とは言いません）

密教のシンボル操作は実際の行為とシンボルを結び付けてそのように思い込むということなのか？それは意識的にサンスカーラに陥るということなのだろうか？（2年男子）
（「サンスカーラの自己制御」という面はあるかも知れません）

シンボル操作によって､実際の行為を代替するとはどのような感覚なのだろうか？（2年男子）
（どうなんでしょ? 「思いこむ」ことが大切だとは感じますが．お寺やお宮での願掛けの感触を思い出してみるとよいかも知れません）

ダライ･ラマが観音菩薩の生まれ変わりだというのは､どのような根拠があるのでしょうか？それと授業の内容とは関係無いけど､この掲示板は補講期間も使用可能ですか？（2年女子）
（補講期間も使用可能です．
　ダライ・ラマが観音菩薩の生まれ変わりだというのは，客観的根拠に基づくものではなくチベット人の信仰に基づくものです．宗教とはそういうものです）

シンボル操作によって実際の行為を代替するという話を聞いて、中国へ行ったときの事を思い出しました。お寺に行ったときにマニグルマ（？）を一回まわすとお経を唱えたことになると聞きやってみたけれど、どうしてお経を唱えたことになるのか理解できませんでした。しかし、他の人では理解できないかもしれない事が前提だというのと例を聞いて少し納得できた気がします。（2年女子）
（マニ車がありましたか．それではそこはチベット寺院だったのですね）

話の展開がとても早かったような気がしますが理解はできました。シンボル操作の話はおもしろいなと思いました。シンボル操作は誰が決めるのですか？個人で勝手に決めてやっていいようなものなのでしょうか？（2年女子）
（シンボル操作は師匠から弟子への口承によって伝承されます）

“ＡとＢの合成語（合成語といっていいのでしょうか？）の場合「ＡとＢ」「ＡというＢ」「ＡのＢ」「ＡによってＢ」「ＡＢを持っている」等、色々と訳すことが出来る。そのため、意味が複雑化し、多義語化する”という話が興味深かった。今日の講義に出てきた“如来蔵”も合成語である。“如来蔵”の場合、上述のＢに当たる部分に「子宮」「胎児」「子供」という３つの意味があるので、“如来蔵”全体が表す意味は、更に複雑化しているに違いない。この講義には、合成語がたくさん出てくる。それぞれの意味（本質）を、しっかりと理解したいものである。（2年女子）
（サンスクリットの合成語 compound は難しいけれど面白いですよ）

中国の西域に旅行したとき敦煌の博物館で、鈴木先生が黒板に描かれたような絵や彫刻を見たことがあります。仏教だけにかぎらず宗教では情欲に惑わされずに清く澄んだ心を持つことが大切にされているものだと思っていたので、それとは反対に位置する男女の性行為が何故悟りの境地になるのか飲み込めませんでした。
しかしヨーガの性的体験を始めた人たちとてそれが本当によいことだと信じて始めたわけで決してやましい気持ちがあったわけではないと思います。それにしても釈尊が開いた仏教はごくシンプルで受け入れやすいもので会ったのに時代を経るなかでここまで変化していくとは全く驚きという他はありませんでした。またよかれと信じてやっているはずなのにそれが間違ったことである場合、救いようがないように思いました。（3年女子）
（“仏教だけにかぎらず宗教では情欲に惑わされずに清く澄んだ心を持つことが大切にされているものだ”　というのは正確ではありません．世の中にはいろいろな“宗教”がありますから．それから，正しい処方箋である限り，時代や地域によって教えが変わるのは一向に構いません．結局それが「無用なサンスカーラを抑え，リンゴを食べる方向に向っているかいないか」が正邪を分けるポイントになります）

【総評】密教のシンボル操作に興味を持った方が多かったようです．ただし密教教義を曲解するととんでもないことになってしまいます．日本の空海やチベット仏教は，文字だけで密教を理解しようとすることの危険さを知っていました．次回は日本に入り，平安仏教までやる予定です．（鈴木隆泰）

宗教文化研究（仏教文化）

アジア文化論研究室

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