6/1 アンケート7号の評価
アンケート7号(総数 138)の結果をお知らせします.「自分の意見が載っている,載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や回答内容の質には全く関係ありません.
複数の同一回答は,原則的に最初に目についたもののみを採用しました.
原文の一部を修正したものがあります.
男子・女子の区別は氏名に基づく判断です.もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい.
今日は サンスカーラ sa.mskaara を軸に,仏教の様々な真理観やキーワードを短時間で学びました.もちろん 2,500年の歴史を持つ仏教は一,二回の授業で学びきれるものではありません.しかし,仏教思想の根本として機能する サンスカーラ sa.mskaara の概念を正しく理解してもらえれば,何かの機会に仏教に触れることがあっても,これまでとは違った姿で見えてくるはずです.
- ペースは速く,書く量が多かったが,イラスト(毒矢に射られた人,リンゴの木など)などで説明して下さったので,難しいことばも理解できたように思う.むしろ,いつもより分かりやすかったような気もする.サンスカーラは奥深い!! (1年女子)(後期の宗教文化研究(仏教文化)も期待して下さい.ちょっと宣伝でした)
- 今日ぐらい内容が詰まっていると充実感がある.至るところにサンスカーラが出てきて興味深い.この世はサンスカーラだらけだ.仏教の基礎が分かりやすく学べて,寺の説法より面白かった(1年男子)(ダルマバーナカ(説法師,dharmabhaa.naka)たることが私の目標です)
- 「明日は明日の風が吹く」ということばはおかしいということが分かりました.「今を生きろ!!」(2年男子)(いや,そうではないんです.「明日は明日の風が吹く.明日のことは明日のこと.だから,明日のことは思い煩うな.今を生きろ」という意味で,結局は同じことなのです.ですが,「今はつらいから今のことは忘れよう.明日はいいことあるかも知れない」という意味に使っているのであれば,その用法は誤りです.結論すると,ことばがおかしいのではなく,用法がおかしいのです)
- カースト制度に疑問を感じる人はいないのかと思っていた.カースト制度がある時代に生きていて,こういう考え方に至った釈尊は偉いと思った.今日の話は分かりやすかった(1年女子)(生まれは自分ではどうしても責任の取れないものであって,そこに優劣を見出すのはサンスカーラ以外の何ものでありません.釈尊のことばにこういうものがあります.「人は生まれによって卑しい人になるのでもなく,生まれによって高貴な人になるのでもない.自分の責任の取れる範圍の行為によって卑しくもなり高貴にもなるのである」)
- いつも絵が面白くて楽しいです(1年女子)(これからも名画の数々をご堪能下さい)
- この教室はどうしてもっと机を増やさないのかといつも思います.もっと増やしたら,より多くの人が座れて,その人たちも授業に集中できると思いました(1年女子)(机の件に関してはちょっと関係筋に当たってみます.でも,座ったからといってその人たち全てが授業に集中するかどうかは未知数ですね.聴く人はどういう環境でも聴きますし,逆に聴かない人はたとえ座っていても聴かないでしょうから.もちろん,今,座れないでいる人たちが「どうせ聴かない人だ」と言っているのではありません.為念)
- 今日の講義は進むのが速くて大変でしたが,今まで自分の中で断片的に覚えていたものが少しずつ繋がっていきました.絵を使った説明やりんごを使った例はとても分かりやすかったです.あと,HP を見ました.質問に対するコメントが面白いし,他の人の意見も聞けるのでとても参考になりました(1年女子)(このページを作るために結構時間をかけているのです.こういう感想を持ってもらえるとホッとしますしやり甲斐も出てきます.ありがとう)
- 絶対に分からないものを深く追求しないという態度によって,より深いものが得られていく過程に感動した(1年女子)(今を真剣に生きるためには,無益な論争に明け暮れている暇はないわけです.有益な議論なら OK です)
- 今日はスムースな話の中で,何個も仏教の真理観・キーワードを学びました.釈尊は釈尊なりに考え,悩み,真理を見出していったことは凄いです.今の生活と引き比べて,うなずけることが何度もありました.「苦」の説明も分かりやすかったです(1年女子)(いつもはスムースじゃないですか? (^^; )
- 1時間半があっという間でした(いつも楽しいですけれど.為念).今日は特に興味深く講義を受けさせていただきました.初めはサンスカーラの意味がよく分からなかったのですが,話を聞いているうちに,自分のすぐ側にあるものなのだと感じました(2年女子)(われわれはサンスカーラを発動しまくって生きています)
- この講義を受けている人の中でも,釈尊の考え方に対する意見は多様だろうと思う.自分はどう考えるか討論したら面白そうだ(2年女子)(確かに面白そうです.企画してくれますか?)
- 釈尊は全て自分で考えたのですか? 師匠や,考えの助けになる人物などは存在しなかったのですか? (2年女子)(彼は誰にも頼らず自分一人で真理に目覚めたと伝えられています.もちろん,その背景には正統バラモン思想や,それと対局にある外道の諸思想があったことは事実です)
- ノートをとるのがきつかったですが楽しかったです.釈尊の考え方は嫌いではありませんが,日本でやっている仏教になってしまうと釈尊の考え方とずれている部分もあるのではないでしょうか(1年女子)(ずれはすでに釈尊以降,インドの段階で起きています.そしてそれを修正し釈尊に立ち返ろうとする動きが起きます.「ずれ」「立ち返り」の歴史の中で仏教思想は発展してきました.付け加えておくと,教えは全て方便ですから,釈尊の教えと全く同じではないからと言って,それが釈尊の教えとずれているとは必ずしも言えません)
- 今日の講義の内容はとても難しく感じたが,先生が譬えを示して下さったのでいくらか分かりやすくなった.サンスカーラということばの意味がやっと分かった気がする.勝手に自分の中で「これは〜ということだ」と思いこむことだと理解した.しかし「知覚できないものを議論するのはやめよ」と釈尊は言ったらしいが,人間は考える動物,考えることによって自分でいろんなことを発見していくのだと思う.というか,考えないようにすることはまずできないと思う(1年女子)(ちょっと勘違いがあるようですね.釈尊は「考えるな」などとは一言も言っていませんよ.「正しく行動すべきとき,正しく考えるべきときに,答えの出ない問題(自分で責任の取れない問題)であれこれ悩んで先に進めないのは,毒矢に刺さったのにその矢を抜かない人と同じだ」と言ったのです)
- このアジア文化論という講義はけっこう難しいなと思いました(1年女子)(難しくて張り合いがあるでしょう?)
- たくさんのことばが一気に出てきて頭が混乱中です.テストのとき大変そう(1年女子)(混乱を解いて整理しておいて下さい.この講義ではテストは行わずレポートを提出してもらうと初回に言ったでしょう? あなたは初回にも出ていますよ.よく思い出して下さい.それから,何度も言っているように,細かい知識よりも大まかな流れを掴む方が大事です.重要語句はそれほど多くはありません.どれが重要語句かって? それは講義で私が強調している語句ですよ)
- インド(ネパール?)で発生したはずの仏教が,なぜインドには広まらなかったのでしょうか? (3年女子)(かつては広まりましたが滅びたのです)
- 今日の内容は1時間だけでは理解できないとは思うが,自分なりに納得しながら授業が受けられた.釈尊の本を読めばもっとよく分かってくると思う(1年男子)(ひろさちやさんの本が読みやすいです)
- 先生はゆっくり話すので余り速くは感じませんでしたが,今日は本当にいっぱい書いたな...という感じです.リンゴの木はこんな風に描いた方がそれっぽく見えると思いま〜す!!(1年女子)(絵付きの解説ありがとう.腕を磨いておきます)
- 中国でこういう説があります.今生,もしいいことをすれば,輪廻して来世はまた人間になれます.もし悪いことばかりやったら,輪廻して来世は動物になるそうです.先生はどう思われますか?(1年女子)(典型的な Hindu 的輪廻観で,仏教を通じて中国に入ってきたものです.仏教の方便の中には,このような輪廻観を説くものもあるのです.結構意外でしょう? この辺りが仏教の仏教たる所以の一つなのです)
- 今日はとても内容が濃くて,いつもと違った感じで面白かった(1年女子)(変化に富んだ人生の方が新鮮ですからね)
- 釈尊の言ったことが人々の間に広がったなら宗教は無くなっているはずだから,結局は認められなかったのだろうか(1年女子)(釈尊の教えは仏教という宗教です.サンスカーラの無常を自覚して,歩み続ける宗教です.ですから宗教がなくなることはありません.ただし,仏教がインドで生き残ることができなかったことは事実です)
- 分かったような分からないような,今日初めて知ったような,もうすでに知っていたような,そんな気がした(3年男子)(そんな感じが「文化」です)
- 「毒矢の譬喩」では,毒の矢なら抜いた方がよいと思うが,矢を抜くと出血多量で大変なことに至るおそれもあるのではないかと思った(3年女子)((^o^; 昔から「譬喩は一分(いちぶ)」と言って,譬喩の細部にこだわらずに主題そのものを見ることの重要性が説かれています.でもこの説明ではあなたは納得しないかもしれませんね.それなら私からあなた向けの解答を.「きちんと止血の用意をして抜けばよい」そもそも彼の命を助けるのが主眼ですから,矢を抜く行為に止血の行為は当然包含されていたと思います)
- ユダヤ教,キリスト教,イスラームが砂漠型なら,仏教は何型と言えますか? (1年女子)(森林型,渡河型,登山型などと呼べると思います)
- 仏教にはいろいろな派がありますが(浄土宗とか白蓮宗とか),全部の根本に今日習ったサンスカーラの概念があるのでしょうか(1年女子)(「白蓮宗」?? ひょっとして「日蓮宗」のことでしょうか.それは置くとして,仏教の根本概念の一つがサンスカーラですから,全ての基本になっていると考えていいです.ただし,全てのお坊さんたちがそのことを認識しているかどうかは別問題ですけれど...)
- 砂漠型の説明にとても納得できた.やはり土地柄が宗教に影響を与えていることが理解できた.釈尊の覚りを聞くまでは宗教はいい加減で怖いものと思っていたが,聞いてみて感動した(1年女子)(宗教を文化の一事象と捉えれば,地域性が影響してくることは理解しやすいでしょう)
- 私のまわりはサンスカーラ(こうであるはずだ)でいっぱいだ.「こうなっていない」ことを認めることは辛いこと.でも認めないことには前に進むことができないのだ.
ストーカーの例は分かりやすかったです.なんだかこういう人が増えることは怖いなと思います(2年女子)(サンスカーラに基づく虚構と,現実とのギャップに惑わされないことが肝要です)
- 釈尊の発言は誰が後世に伝えたのですか? (2年女子)(釈尊の弟子たちです)
- 「言われてみれば確かに...」と納得できた.こんなことに仏陀した釈尊はすごい!! (1年女子)(すごいでしょ (^^))
- 釈尊の「先に矢を抜け!」という考え方が一番心に残った.多くの人が共感したはずだ.日本人は何気無く仏に頼ったりするが,実は仏教の中身は深かった... (1年女子)(何気無く頼るのも仏教の一つのあり方です.この包摂力の大きさが仏教の特徴でもあります)
- 今日の毒矢の話はすごく共感しました.起こってしまって取り返しのつかないことで思い悩んでいるうちに前に進めなくなってしまう.それよりも,事を解決するべきだというのは,全くその通りだと思いました(1年女子)(「汝,煩悩の矢を抜け!」とは,けだし至言でありましょう)
- 「毒矢の譬喩」の射られた人は,なぜ質問ばっかりして先に矢を抜こうと考えなかったのか.とても疑問である(1年女子)(釈尊は,われわれがもがき苦しんでいるさまは,まさに毒矢が刺さっているのに抜かないでいる人と同じだと言ったのです.もしあなたが本当に(煩悩の)毒矢をすぐ抜ける人なら,あなたは仏陀に近づいておりますぞ)
- 昔の人はすごいことを考えていたのだと感心した.今でも確実にサンスカーラはあるし,「諸行は無常である.歩み続けなさい」には励まされた気分になった(1年女子)(彼のことばには,時代を超えて人々に働きかける力がありますね)
- 釈尊の遺言がとても気に入った.「歩み続けなさい」ということばに惹かれた.自分の目標に向かってがんばろうと思う(1年女子)(「良い加減」(not いい加減)でがんばって下さい)
- 輪廻の観念から解脱した釈尊はすごいし,また,サンスカーラがものごとを・・・(以下判読不能)(2年男子)(何かちゃんと言おうとしているんですが読めませんでした.次からもう少し丁寧に書こう)
- 多分みんなお互いに軽いサンスカーラを持っているんだろうなと思った.みんなが私に対して持っているサンスカーラがどんなものか知りたい(2年女子)(「知らぬが仏」ということばもあります...)
- 今回,sa.mskaara の意味がよく理解できました.しかし気になる点があります.「サンスカーラによって対象の本当の意味,姿が分からなくなる」とありましたが,ものごとに「本当の」という確固たるものはあるのですか? また,それを決めているものはなんですか? (2年女子)(それこそまさに「リンゴの味」です.対象は常に変わるので「確固たる」ものはありませんが,サンスカーラを通さずに「ありのままに」見た姿が本当の姿・意味です.現実とこちらが捉えた姿とのギャップがないので「苦」が生じることがありません)
- 今日の授業はかなり濃い内容だったので,今頭の中でいろいろなことばがごちゃごちゃになっている.次回までにノートを見て整理したい.「諸行は無常である.歩み続けなさい」という最後の一文には,とても意味深いものが感じられて私は好きである(1年女子)(整理は授業の直後にやる方が効果的かも知れません)
- あらためて仏教っていいなぁと思いました.「サンスカーラはサンスカーラを呼ぶ」ということに共感します.今もそうですが,中学時代に他人から見た自分を勝手に考えて悩むことがよくあったので,釈尊を本当に尊敬します(1年女子)(だから彼は仏陀(目覚めた人)なのです)
- 「時は,私が歩み続ける今のみ」ということばがとても心に染み入りました.これからのこのことばを心に留めて生きたいと思います(2年女子)(おおっ!! 先生は嬉しいぞ!!)
- 「諸行は無常である.歩み続けなさい」ということばに深く共感しました.ついつい過去を振り返ってくよくよしたり,未来なんてどうせ... と考えがちですが,常に「今」を精一杯生きないといけないなと思いました.今日は 6/1 と,とてもスタートにいい日なのでがんばろうと思います(1年女子)(がんばり始めるのも「今」です)
- 私はいつも失敗したことなどをいつまでも後悔しています.確かに,失敗によって学ぶことはありますが,いつまでも後悔していても前に進めないということを今日の授業で学んだ気がします.何か授業のたびに,一つずつ人生の教訓を与えられているような気がします(1年女子)(インドの精神文化は奧が深いでしょう?)
- 今日の講義を聴いても,やはり後悔や不安や不満は消えない.私は相当ひねくれ者なのかも知れないが... (1年女子)(そんなことはありません.よくきちんと自分と向き合えましたね.賢明だし,勇気のある行動だと思います.二つ下のコメントを参照して下さい)
- 今日習ったことはとても大切だと思いました.しかし,過去を悩んだり先のことを考えてしまうので,今だけを生きる生き方は自分にはできない(2年男子)(上の方と同様,下のコメントを参照して下さい)
- 釈尊が羨ましい.今の私はサンスカーラがサンスカーラを呼び,ものごとの本当の姿が見えなくなっている... この状況から解脱したいが,覚りを開くほどの時間もないし,きっと私には無理.誰か私に安らかなる涅槃の境地へ導いてくれる釈尊のような人が現れないかな... (1年女子)(「諸行は無常である.歩み続けなさい」と言われても,そのままではなかなか実行できるものではないし,もし実行できないのだとすれば,どんな素晴らしい教えでも「絵に描いた餅」に過ぎないでしょう.長い仏教の歴史において,そう思う人たちの存在は決して少数ではなかったのです.そこで,「覚ろうとしても覚れない自分はどうしたら救われるのか」という問いにも,仏教は多様な答えを出しています.後期の宗教文化研究(仏教文化)ではここも詳しくやります.くれぐれも変な宗教(=サンスカーラを増大させるだけの宗教)を求めたりしないで下さい)
【総評】「過去を悔いず,未来を憂えず,時は私が歩み続ける今のみ」「諸行は無常である.歩み続けなさい」私にとっても永遠のテーマです.次回はインドの神さまをやります(鈴木隆泰)
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