5/25 アンケート6号の評価
アンケート6号(総数 143)の結果をお知らせします.「自分の意見が載っている,載っていない」「教員のコメントの内容」などは成績評価や回答内容の質には全く関係ありません.
複数の同一回答は,原則的に最初に目についたもののみを採用しました.
原文の一部を修正したものがあります.
男子・女子の区別は氏名に基づく判断です.もし間違っていたら遠慮なく申し出て下さい.
今回は非正統バラモン思想の代表として外道(六師外道)と仏教(釈尊伝)を扱いました.講義の終わりの方で触れたサンスカーラ sa.mskaara が仏教を理解するための重要なポイントになります.次回はこのサンスカーラを中心に,「釈尊の覚り」を探っていきます.
- 今日の講義は分かりやすかったと思います.釈尊という名前は初めて聞いたし,外道という言葉がもともとは現在の意味とは違った意味を持っていたということなど,新しく学んだことがたくさんありました(1年女子)(次回も新しく学ぶことがたくさん出てくるはずです)
- 高校のときは釈尊のことをガウタマ・シッダールタと何気に習いましたが確かではなかったのですね.それなのにこんなに深い意味があったとは本当に驚きました.少しずつ内容が複雑になってきましたが,何かワクワクします(1年女子)(ワクワクしてくれると,教えている私までワクワクしてきます)
- 私は外道の考え方は嫌いです.「運命論」というと何かロマンチックな感じもしますが,「運命」はロマンチックと無気力との二通りに解釈することができますから(1年女子)(私も嫌いです.釈尊は時間・運命に関し,正統バラモン思想にも六師外道の思想にも近寄らない独自の立場を示しました)
- 釈尊の一子ラーフラは釈尊と同じような一生を送ったのですか?(2年女子)(彼も出家して「十大弟子」の一人となりました.出家したのは彼だけではなく,釈尊の養母マハープラジャーパティー・ガウタミー,妻ヤショーダラー,その他釈迦族の有力者・有能者が数多く出家しました)
- 釈尊は35歳で仏陀になったということですが,仏陀になるとはどういうことですか? どのようになるのですか? 突然なれるのですか? (2年女子)(これは次回詳しくやります)
- 高校のとき「ゴーダマ・シッダールタ」と習ったのは一体何故なのでしょうか.教科書が嘘を書いているというのですか? (2年女子)(本当に「ゴーダマ」でしたか? 「ゴータマ」ではなかったですか? 何れにせよ「嘘」というより「正確ではない」ということです.これに限らず,教科書にだっていくらでも誤りはありますよ.所詮人間が作るものですから.問題は「誤りを誤りであると認めて,常に修正し続けていけるかどうか」です)
- sa.mskaara の「虚構」の意味は最初こそよく分からなかったが,プラモデルの例で意味がつかめた.例が分かりやすいと本当に助かる(1年女子)(これからも励みます)
- 暑くて頭がボーっとしました.でも話を聞くのは楽しかったです(1年女子)(山口はもっと,もっと暑くなるらしいので,ボーっとしない対策をして講義に臨んで下さい)
- 釈尊の生没年についてですが,どうしてそれを書いた文献がヨーロッパにあるのですか? (2年女子)(マウリヤ王朝のアショーカ王がギリシャに使節を送ったため,ギリシャ側の資料からアショーカ王の年代が分かります.また,インド側の資料で,アショーカ王が釈尊が入滅して何年経って登場したかが分かります(ただし諸説あり).そして釈尊の寿命が80年であったことも分かっています.これらを総合して釈尊の生没年を推定しているのです)
- 前回の講義で,輪廻 sa.msaara とあったのですが,それと今回のサンスカーラ sa.mskaara は似ている気がするのですが,何か関係があるのですか? (1年女子)(似ているだけで関係はありません.輪廻 sa.msaara は sa.m + saara で,サンスカーラ sa.mskaara は sa.m (+ s) + kaara です)
- ネパール側とインド側で,どちらが本当のカピラヴァストゥか決着がついていないという話は,これから先も決着がつきそうにないのでしょうか? (1年女子)(このままの状態が続く限り決着はつかないと思います.私としては「別にどっちでも構わないだろう」と思っていますが)
- 今日の講義より神さまについての講義の方が好きです(1年女子)(大学生なんですから頭を使おう!! でもちゃんと神さまの話も紙芝居風にやってみようと思っているので,それまではしっかり哲学しておいて下さい)
- 今まで全く勉強してこなかった分野なので,知らないことだらけ(汗).知っていることを学ぶより知らないことを学ぶ方が意味があるから,この講義は新鮮でいいです(2年女子)(前向きでよろしい!)
- 外道というのが仏教以外の教えを指すということは,彼らが自らを「外道」と称したのではなく,仏教側からの呼び名ということなのだろうか(2年男子)(その通りです.同時に,「小乗仏教」という呼び名も大乗仏教側からの蔑称に過ぎません.もっとも「外道」の側も仏教を「間違った教えを広めるもの」と評価しています)
- 宗教には自然発生型と創唱型などがあるわけですが,私はどちらも創唱なのではないかと思います.誰かが唱えないと何も始まらないのではないでしょうか? (2年男子)(ある民族や地域の共通の意識として,いつ誰がというわけではなくても存在してるのが前者で,明確に誰かが「これが真理だ!!」と言い始めたものが後者です.もちろん,人間が真理との間のメディアとして介在している点では両者は同じです)
- 釈迦というのが部族名であり,固有名詞として使うのは正しくないということを初めて知り,勉強になりました.この辺りの話は興味があって好きです.来週の内容も楽しみです(1年女子)(期待して下さい)
- 今日の講義が今までの中で一番楽しかった.高校時代,倫理が大好きだったので,また仏教関係の勉強ができて楽しい(1年女子)(どうも今日の講義は好き嫌いが割合はっきりと分かれました)
- キリスト教の土台にユダヤ教があり,さらにイスラームがその上にできたということに驚いた.知らないところで物事は繋がっているのだと思った.もっとこのようなつながりについて知りたい(1年女子)(エルサレムはこれらの三宗教共通の聖地なので,それをユダヤ側とムスリム側が取り合うことになったのが中東情勢の発端です)
- 私は仏教のことをすごく信じています.仏教についてもっと詳しいことを勉強したいんです(1年女子)(カリキュラムの関係上,この講義で仏教を扱うのはあと一回くらいしかありません.後期の「宗教文化研究(仏教文化)」を是非受講してください.こちらは全編仏教でいきます)
- カピラヴァストゥの場所に関して意見が二分されているのは,研究の食い違いによるものでしょうか.それとも自分の国にカピラヴァストゥがあった方がいいからでしょうか(1年女子)(後者でありましょう)
- ネパールとインドのカピラヴァストゥを巡る論争はイギリスのせいで起こっている.アフリカでの部族抗争とともに,やはり植民地時代のマイナスの遺産は残っていると感じた(2年男子)(カシミールを巡るパキスタンとインドの抗争も,もとを辿れば占領政策としてイギリスがムスリムとヒンドゥー教徒とを仲違いさせ,それがパキスタン・インド分離独立を招いたことに起因しています)
- この授業は少しでも気を抜くとすぐに分からなくなるので大変です(2年男子)(気を抜かないようにお願いします)
- 私はお寺の人に知り合いがあって,お釈迦さまのカルタ作りを手伝ったことがあります.釈尊の生涯について今日講義でふれて,懐かしく思いました(2年女子)(そのカルタ欲しいです)
- 世界史の教科書で習ったガウタマ=シッダールタが本名ではない,ということを聞いてすごく驚きました.日本の学生はみんなそうやって覚えていると思います(1年女子)(現代社会のように戸籍があったわけではないので,もともとどういう名前であったのかは分からないんです.全ての仏伝(釈尊に関する伝記)は,彼が仏陀になって以降にできたものですし,幼名がどうであったのかも,「仏陀の幼名」として語られるわけですから,それなりの脚色はあったはずです.しかも,彼の使用した言語はサンスクリット語でもパーリ語でもなく,マガダ語の一種であったと推定されています.したがってサンスクリット読みのガウタマ=シッダールタそのものではなかったことは確かでしょう.ただし,「釈尊の幼名は(サンスクリット読みで)ガウタマ=シッダールタである,と言われている」ということまで否定するものではありません)
- 源氏物語の冒頭,私も覚えさせられましたがすっかり忘れてしまいました(1年女子)(私が暗唱したのは『平家物語』の冒頭です...)
- 漠然としていて難しいが,何となく分かってきた.次回で sa.mskaara を極めたい(1年男子)(次回は具体例を挙げながら,できるだけ漠然としないように説明します.極めて下さい)
- 多民族・多言語から成るインドは,人口においても面積においてもヨーロッパに勝るとも劣らない.したがって Hindu は世界宗教と言えなくもない,ということはないのでしょうか(3年男子)(君は毎回鋭いね.確かにインドは多民族・多言語ではありますが,その大部分に「文化としての Hindu」「Hindu としての生き方」が染み込んでいます.そしてそれは「Hindu として生まれない限り,他所からは入れない」世界なのです.これではやはり世界宗教とは呼べません.また,もしもキリスト教がヨーロッパ民族だけの宗教だったらやはり世界宗教ではないと思います)
- 外道に少し興味を持った.なぜなら,今の僕らの世代の人たちは,そんな生き方をしているかも知れないと思ったから(3年男子)(君もそうなのですか?)
- 外道の考え方は,最近の一部の若い人たちが持っている考え方と似ていますよね.自由の定義がはっきりあるわけではないのですが,自由をはき違えているような気がします(1年男子)(人間には自由に生きる「権利」があります.それと同時に,他人の自由を侵害しない「義務」があります.権利と義務は常に表裏一体の概念で,権利のみを主張し義務を果たさない人のことをガキ(餓鬼)と申します.ちなみに「餓鬼」は仏教用語です)
- 女性名詞は語尾を伸ばすという特徴があるそうですが,男性名詞はどのような特徴があるのですか(2年女子)(サンスクリットの場合,主格の語尾が伸びていれば女性名詞の場合が多いですが,例外もたくさんあります.男性名詞の特徴ですか.うーん.ちょっと一言では言い尽くせません)
- バクティの説明のところで,カーリーにすがる男の人はとても怖かったです(1年女子)(ラーマクリシュナのことですね (^^;)
- 高校の授業で習ったところより,深いところまで知ることができて面白かったです.高校までは名称だけ頭に詰め込んでいたので少しも面白くなかったのですが,興味を持って勉強すると楽しいです(2年女子)(今までの知識を土台に,ようやく学問する立場に皆さんは立っているのです.大いに楽しみながら学問して下さい)
- 今日は高等学校までに習ってきたことが覆される内容がいくつもあったので,少し戸惑っています.大学の講義のレヴェルの高さを思い知った一時間でした(1年女子)(スクラップアンドビルド.それが人間の築いてきた知の営みです)
【総評】次回はサンスカーラの観念をしっかりと理解して下さい(鈴木隆泰)
suzuki AT ypu.jp